2014年にトライアウト公演を行い、2015年秋には「The LIVE」を開催。とても丁寧に作ってきた『JAM TOWN』が、ついに公開となる。
錦織一清演出のオリジナルのミュージカルとして話題となった本作に、今や若手俳優としてひっぱりだこの水田航生が出演…と聞いて、稽古場を訪ねた。
―稽古が始まって約1月。どんな様子ですか?
まだまだこれからなんですよ。今日もだいぶ変わりました。錦織さん曰く「1月12日(初日前日)まで変わる!」と冗談でおっしゃっているのかと思っていましたけれど、最近は本気なんじゃないかと思い始めています。(笑)
錦織さん自身が、その場その場…瞬間瞬間を大切にされる印象が強くて、稽古場で感じたことを、すぐその場で変えたり、深めていったりされたいのかな…と感じています。
――オリジナルミュージカルということで、もちろん脚本はあるでしょうけれども、初めて演じるキャスト…オリジナルキャストに負う部分も大きいと思いますが。
正直言いますと、やっている俳優たちも分からない部分は、まだまったく分かっていないんですよ。そこが1から新しいものを作る時の稽古中の感覚だと思います。何が正解なのか、本番開くまで分からないので、やっていることを信じてやっていくしかない。その面白さはあると思います。僕のシーンではありませんが、今日も松浦雅さん演じるあゆみと、筧利夫さんと東風万智子さん演じる家族の深みが厚くなり、毎回毎回更新されています。本番が開くまで、どこまで変わっていくのだろう…と思っています。
―水田さんの役はホテルの御曹司ですね。若いけれど、深いいわくのありそうな人物ですね。
そうなのです。実は元の台本から半分…、3分の…、4分の3ぐらい変わっています。(笑) 3分の…では足りないくらい変わりました。
―それは生の舞台であり、水田さんの個性により設定が変わった?
それはあると思います。僕を見て設定が変わり、徐々にシフトチェンジしている部分もあると思います。自分でも、クールな役でもステレオタイプの人物にはならないようになってきているかな…と思います。人は相手によって、すこし話し方や対応がちがってきたりしますよね。あゆみが相手の時には「クールで悪い男のJJ」というよりも「人間くささを大事にしたい」と思いながらやっています。
―あゆみとは、いい雰囲気のシーンもありそうですね?
はい、最初の台本以上に…。
―そ、そうですか?!
松浦さんがその場その場で心を動かす演技をされる女優さんなので、毎回楽しいですね。ただやればやるほど…なのか、その場その場…なのか、迷うところではありますが、やり過ぎると慣れてしまって、最初のいい空気感が崩れてしまいそうな時もあるので、そのバランスを上手くとりながらですね。そのあたりは錦織さんも分かっていらして、ふたりのシーンは根を詰めてやらないようにしておられますね。僕は稽古をしっかりやりたいタイプなので不安もありますが、1回1回の稽古に集中できる感じも新鮮で面白いです。あまりプランを練り過ぎずに行こうかな…とも思っています。
―松浦さんからも役者として刺激を受けておられます?
そうですね。松浦さんはとても芯が強い方です。本番に入ると、またギアが1つ入りそうな「まだ本気出してないな」みたいなところもあるので「俺も負けないからな」という、ぶつかり合いが本番ではできるかな…と思います。お互いに引っ張り、引っ張られながらやれるのではないかな…と思っています。
―お芝居ともに、ミュージカルということで、The LIVEではラップを披露されて新鮮でした。
これまでラップを通らずに生きてきたので、新たなチャレンジです。ヒップホップが主体のミュージカルなので、集まっている方々もヒップホップ系の方が多くいらっしゃるのです。新たな物が生まれると皆さんが「ウォ~!」「イェ~イ!」と弾けて「ここは日本か?!」と思ってしまうようなノリの稽古場です。そんな皆さんを見ながら聞きながら盗みながら勉強しています。
―それはアメリカ帰りのプリンスという役には、とてもいい環境ですね。
そうなんですよ!内側からあふれ出るものを表現する…というのが、より『JAM TOWN』らしいですし、勉強しながら稽古しています。
―それが横浜で上演されるのも、面白いところですね。
すべてがマッチしてきているというのは、毎日感じてきています。
―では、ダンスもヒップホップですね?
はい、ダンスは昔からやってきたジャンルに近かったので、わりとすんなり振りは入ってきました。でも少しでもかっこよくするために…今回はスーパーダンサーの皆さんが揃っているんですよ。その真ん中で引っぱっていけるくらいにならなくては・・・と。
―それは楽しみです!最近はダンスされている姿をお見かけしなかったので…。
そうですね、地球ゴージャスのGala Concert以来、全く踊っていないので、こんなにがっつり踊るのは久々です。稽古を始めた時には「こんなに俺って体が動かないのか?」と思って、ちょっとビクビクしていましたが、徐々にいい感じになってきたと思います。
―わぁ~、それはダンスもラップも期待できますね。
はい、楽しみにしていて下さい!
―そういえば、製作発表の時には筧さんが「芝居付きのライブコンサートだと思って下さって結構です」とおっしゃっていましたよね。
それはあると思います。盛り上がると思います。
―普通のミュージカルだと、上演中に観客は立ってはいけなかったりしますが…。
盛り上がるナンバー、場面がありますから、立ちたければ立って欲しいですね。僕たちも今はまだ手探りで作っていますが、みんなが「良い作品にしたい」との思いで時には意見をぶつけながら、いい稽古ができていると思います。それを徐々に積み重ねて幕が開くときには、自分も自信をもって舞台に立ちたいですし、エンターティメントがたくさん盛り込まれていますので、お客さんを巻き込んで盛り上がって楽しんで頂ければ嬉しいです。
―さて、12月20日で「25歳のお誕生日、おめでとうございます!」ということもあり、デビューして10年を振り返って頂けたら…と思います。
10年経ったんですよね…。ただ高校時代は学業専念でしたので、上京してからは、まだ6年7年ですが、この業界に入った時から数えると10年ですね。最初は25歳で区切りをつけるつもりでした。「それぐらいの覚悟がないと失礼な仕事だ」と思ってもいたし、「10年をこの仕事に賭けてみよう」と思っていました。
―それはご自分だけで考えておられた?
自分の中だけですね。そう思ってやってきてよかったと思いますし、そう思ってここまでやってこられたことで「まだ続けたい…」と思っている自分になれました。今「死ぬまで役者やっていきたい!」と思えるのは、この10年の経験や出会った人たちのお蔭です。「全員が良い人」ではきれいごとになってしまうので、そうは言いませんが、その時には「この人とは合わない」と思った人でも、今はすごく感謝しています。「この人がいなかったら、今の自分はいないな」とか「この人が、こういう嫌なことを言ってくれなければ、この1つの要素がないだけで辞めていたかもしれない」と思えたことに感謝しています。それはけっして自分ひとりの力ではないし、そう思える役者生活を続けていけることに、すごく喜びを感じています。
今は他には興味がないです。「俺の興味」は全部、役者に持っていかれています…つながっています。
―役者に没頭しているってことですよね?
ということなんだなぁ…と気付きました。役者が趣味のすべてで、仕事のすべてで、そこにパワーを全部賭けていることが自分の生きがいですね。だからくだらないことをしたくないし、イエスマンになりたくないし、自分の人生だからこそ合っていようが、間違っていようが、自分の思っていることを発言できる、発信できる人になりたい…と思えた25歳の誕生日でした。
―貴重なお話を伺えました。そして2015年も振り返って頂けたらと思います。
年明けの『マーキュリー・ファー Mercury Fur』という作品は、本当によかったのです。演出家・白井晃さんが好きです!!(笑) KAATだから言うわけじゃないですよ!(笑)(白井さんは『JAM TOWN』を上演するKAAT神奈川芸術劇場のアーティスティック・スーパーバイザー)自分のスイッチ…ひっかかりをくださった方ですね。あの時に白井さんとご一緒出来た…ちょうどタイミングも合っていたとも思います。
―具体的にどんなことですか?
比喩ではなくて、吐きながら稽古していました。そんな経験は初めてでした。追い込まれて、吐きながら稽古する毎日でした。
―でも、結局それがよかったと?
そうなのです!白井さんの演出で、稽古では舞台上で一歩踏み出すことすらできなくなってしまったのですよ。一歩歩くだけで「違う!」と言われて「出て行け!」とも言われましたね。「何を考えて、君はここに来ているのですか?」とも。
でもそう言うにはパワーが必要ですよね。こんな僕に、それだけパワーを使って演出してくださった白井さんに、本当に感謝しています。先日、白井さんが「水田が踊っているのを見たことがないから」と『JAM TOWN』の稽古を見にいらしたのですが「冷や汗って、あるものだなぁ」と思いました。ほんとうに頭が上がらないです。(笑)
『サンセット大通り』演出の鈴木裕美さんとも何度も飲みに行かせてもらって(笑)、すごく面白い方で、頭の中がすごい…。そういう方の演出を受けることができたのが有難かったです。「また、今度がっつりお芝居でからみたいわ」とおっしゃって下さったのも嬉しかったですし、また是非、やらせて頂きたいですね。
そして『道玄坂綺譚』マキノノゾミさん。すごく面白かった作品ですが、これほど舞台に立つのが怖かった作品はないです。
―では、最後に2016年の抱負を一言お願いします。
2016年はお仕事をこんなにたくさん頂けて…、未知の世界です!まだ自分のスキルが足りていない部分もあるので、自分で伸ばしながら本番では自信を持ってできるようにしっかりと準備していきたいと思っています。夏が終わったころには、色々成長出来ているよう頑張りますので、楽しみにしていてください!
水田航生(みずた こうき)
1990年12月20日生まれ。大阪府出身。
俳優としてドラマや舞台で活躍。近年の主な舞台出演作に『VAMP~魔性のダンサー ローラ・モンテス~』(岸谷五朗演出)、『金閣寺』(宮本亜門演出)、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『オーシャンズ11』(共に小池修一郎演出)、『マーキュリー・ファー』(白井晃演出)、ミュージカル『サンセット大通り』(鈴木裕美演出)などがある。映像作品に韓国ドラマ『となりの美男〈イケメン〉』、映画『カノジョは嘘を愛し過ぎてる』など。映画『太陽』が2016年4月23日に公開予定。また、2016年は舞台『エドウィン・ドルードの謎』、『マイ・フェア・レディ』の出演が控えている。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
A New Musical「JAM TOWN」
■スタッフ
原案・演出:錦織一清
作詞・作曲・編曲:西寺郷太 振付:YOSHIE 作詞:金房実加
■出演
筧 利夫 松浦 雅 水田航生 東風万智子/藤井隆 ほか
■会場:KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
■日程:2016年1月13日(水)~30日(土)
■料金:全席指定・税込み プレミアムシート14,000円 SS席10,000円 S席8,000円 A席6,000円 B席4,000円
各種割引チケット 高校生以下:1,000円(S・A・B席)
U24チケット(24歳以下)4,000円(S席)
シルバー割引(65歳以上)7,500円(S席)
*各種割引チケットは、チケットかながわのみでの取扱い。シルバー割引は電話窓口のみ。
*車いすでご来場の方は、事前にチケットかながわにお問い合わせください。
■チケットかながわ http://www.kaat.jp/ 0570-015-415 (10:00~18:00)
■公式HP http://www.jamtown.jp/#top
A New Musical 「JAM TOWN」
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