韓国ミュージカル界を代表する俳優、チョン・ドンソク。2009 年に『ノートルダム・ド・パリ』のグランコワール役でミュージカルデビューし、その感受性豊かな演技と歌唱力で注目を集めた。その後も数々の作品で実力を発揮。ミュージカル『マリー・アントワネット』では、アクセル・フェルゼン伯爵役を熱演し、大盛況のうちに千秋楽を迎えた。作品の余韻が残る中、舞台を終えたばかりの彼に話を伺った。
― ミュージカル『マリー・アントワネット』の千秋楽を迎え、11月の初日から3カ月を振り返ってみて今の気持ちは?
気分がいいですね。とても清々しい気分です。公演をするたびに終わりを迎えると何か寂しい気持ちになるんですが、まだ地方公演もありますので今は一旦気が楽になったなという感じでしょうか。
― やはり千秋楽というのは特別な気持ちになりますか?
千秋楽の時は、それまでの公演を振り返る機会になると思います。公演中での演技などをもう一度見直す機会になると思いますね。
― 2009年に『ノートルダム・ド・パリ』のグランゴワール役でデビューしてから、休むことなく大作に出演されていらっしゃいますが、舞台に立つ時にいつも気をつけていることはありますか?
特に神経を使うことは、その公演やシーンごとに違いますね。ある時は歌にもっと集中し、またある時は演技により神経を使うという風に、作品ごとに特徴が違うので特別に(いつも決まって神経を使うようなこと)はないですね。
― 今回のフェルゼン役もトリプルキャストでしたが、同様に他の俳優さんと同じ役を演じることがあると思いますが、自分なりの役づくりのためにすることはありますか?(今回のフェルゼンもそれぞれ違うタイプのフェルゼン伯爵でしたね)
舞台で演技するということは疑似体験をするわけですから、たとえばミュージカル『マリー・アントワネット』であれば本を読み、「フェルゼンの日記」などを通してまず多くのことを感じるようにしました。そして、さらに舞台の上で別の表現をプラスすることによって、ミュージカル作品としてまた説得力が増すと思うので、僕なりの特色を加えて演じています。
― 他の俳優さんとの違いを出すためにすることはありますか?
そうですね、演技のスタイルが3人とも違うので、僕はセリフの言い回しを言いやすい形で演じましたし、できるだけ決まった線から外れない程度に(3人とも)各自違う面を生かして演じていたと思います。
― 大学では声楽を専攻しオペラを目指していたそうですが、ミュージカルに進むようになったきっかけは何?
兵役で軍隊にいた時、ミュージカルの道に進むことを決めていました。男なら誰でも親孝行したいと思うものなんですが、軍隊生活をして特に強く思うようになりました。声楽をより進んで学ぶには留学もしないといけないし、たくさんのお金がかかるのでどうしたら(親に迷惑をかけないようにするには)一番いいのかと考えていました。軍生活では1年間ほど歌を歌う機会がありませんでしたが、ある時に発声をしていたら、軍隊での発声がなぜかミュージカルの発声と似ているような気がしたんです。それで“これが僕の行く道なのかな?”と思いはじめて、除隊後オーディションを受けたんです。
― ミュージカル『ノートルダム・ド・パリ』のグランゴワール役で華々しくデビューされましたが、初めて舞台に立った時、その頃の意識と今とではミュージカルに対しての考え方など変わったことはありますか?
始めのころは当然“挑戦”だと思いましたが、今は“努力”です。
― 今後チャレンジしてみたい役はありますか? 具体的な役名があれば、その理由を教えてください。
両面性のある役をやってみたいです。韓国で上演されている作品では、『ジキルとハイド』が一番両面性のあるキャラクターではあると思いますが、今はそれに似た他の作品があまりないんですよね。似ているといえば『ジャック・ザ・リッパー』のダニエル役でしょうか。まだ皆が知らない新しい作品をやってみたいです。長い間公演されてきたものではなく初公演として韓国で上演される、キャラクター的に分離されるような役柄をたくさん演じてみたいですね。
― 新しい両面性のあるキャラクターいいですね。
そういう役柄は自分も演じることが楽しいし、傷みや悲しみを抱えているようなキャラクターが好きです。節制美と爆発する感性をすべてお見せできるようなキャラクターたちをやってみたいです。
― すでにミュージカルスターとして輝くドンソクさんですが、目標としているミュージカル俳優はいますか?
今『ジキルとハイド』に出演されているリュ・ジョンハン先輩をとても尊敬しています。僕がデビューしたばかりのころから僕にたくさんのことを教えてくださいました。とても感謝していますし、尊敬する先輩です。
― また、普段仲良くしている俳優さんは?
それも・・・リュ・ジョンハンさんです。普段仲良くしているのはリュ・ジョンハンさんとシン・ソンロクさんです。
よく会うんですが、男同士が会えばやはりお酒でしょう(笑)。あ、やっぱりコーヒーを飲んでいるって書いてください(笑)。言葉では「お酒を飲んで」といいますが、3人で会うといつも作品の話ばかりしています。僕がお二人を尊敬する理由のうちの一つが、僕とは年の差が開いた大先輩なのに、僕の話もよく聞いてくださることです。僕が「あ、これがいいんじゃないかと思うんですけど」というと、先輩の中には「いいや、それは違う」と否定される人もいると思いますが、お二人はすべて受け入れてくださるんです。本当に一流になるということは、こういうことなんだなと思いますね。耳をふさいでしまったら一流にはなれないということを本当に学びました。彼らの舞台を拝見しても勉強になることがたくさんあります。いつも先輩たちは僕に「初心を忘れないように」と言われますが、先輩から言われるとその言葉の意味を本当に実感させられます。
― 『ウェルテルの恋』で、韓国ミュージカルの素晴らしさを日本の方にも知らせることができたと同時に、ミュージカル俳優“チョン・ドンソク”の魅力に魅せられた日本のファンがたくさん韓国まで公演を見るようになりましたね。日本でCDデビューもされ大活躍ですが、日本のファンのみなさんの印象は?
本当に礼儀正しい感じを受けました。韓国と日本ではファンのみなさんの印象が違うなと思いました。韓国ファンはとても熱狂的なんですが、日本ファンのみなさんは大人しい印象でした。実際なら大きな拍手が起こるべき歌があったんですが、日本で披露した時、静かに拍手されてちょっとビックリしたんですが、日本人は礼儀正しいというお話を聞いて理解できました。周りの人の邪魔にならないようにしているんだなという姿がステキだなと思いました。いつもありがたく思っています。
― 以前には平方元基さんや、山崎育三郎さんなど、日本のミュージカル俳優とのジョイントコンサートも行われました。その時の印象は?
みなさんハンサムでしたね。本当にファンの方もそうですが、俳優のみなさんも本当に良い方が多いなと思いました。初めて日本のコンサート(『シアタークリエ 5th Anniversary ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL』2012年12月)に参加したときに、日本の俳優の方とご一緒させていただきましたが、その時も感動を受けました。同じミュージカル俳優だからということもあるので警戒されるかと思っていたんですが、「夜はよく眠れた?」とか声をかけてくださって、韓国から来た僕の面倒を色々みてくださいました。とても感謝しています。
平方さんや山崎さんはお二人とも、とにかく歌がとてもお上手ですし育三郎さんはとても声が綺麗でした。なかなか聞けない声の持ち主だと思ったし、発声をよく学ばれたんだなと思いました。
― いよいよ日本で待望の単独コンサートが2月22日(日)に開催されます。会場は、使用するためには審査が必要なほど、厳格なクラシックホールです。以前、日本公演で聞かせてくださったシューベルトの“魔王”も印象深いですね。クラシック出身のドンソクさん。どんなステージを見せてくれるのでしょうか?
クラッシックの曲をたくさん選びましたし、僕にとって意味のある曲と大衆的に聞きやすい曲を選びましたが、今回本当にとても選曲に悩みました。みなさんが退屈しないような選曲にしたんですが、気に入っていただけるかドキドキしています。日本のみなさんはクラッシックによく精通されていると聞いています。それを信じて頑張ろうと思っています。
― 好きな音楽ジャンルは?やはりクラシック音楽を聞くことが多いですか?特に好きな音楽家はいますか?
Piero, Cappuccilli ( ピエロ・カプッチルリ)が好きです。バリトンの方です。カプッチルリについては日本でも言及したことがあったんですが、テノールでいうならMario Del Monaco (マリオ・デル・モナコ)が好きです。
好きな音楽のジャンルですか? クラッシックを除いて? じゃあミュージカル音楽(笑)。
― ミュージカル以外にやってみたいことはありますか?
今はミュージカルがいいですね。
― 役に入るととてもストイックな生活になると思いますが、気分転換やストレス解消のためにすることは?
ストレス受けたらまず歩きますね、無条件に。歩いているうちに考えが整理されるようになります。たとえば今日このシーンの練習をしたけれども上手く整理ができないという時には、その日の夜歩くと頭の中がすっきり整理されるんです。たくさんのことを考えるので。でも道を歩いている人が僕を見たらおかしいんじゃないかな?って思われるかもしれません。だって、歩いていると自分でも知らないうちに台詞を叫んでいますからね(笑)。そういう時はこうして(電話をする真似をしてみせて)ごまかします。恥ずかしいので(笑)
(一同大爆笑)
― 何をしているときに一番幸せを感じますか?
人と会うのが好きですね。会って話をするのが好きです。大変だなと感じるときは実家の清州の友人たちと会います。とても気分がよくなります。
― 今後の活動予定は?
まだ決まった予定はありませんが、次回の作品を検討中です。
― 最後に日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援していただきありがとうございます。今回初めて単独でコンサートを行いますが、たくさんの準備をしています。失敗も多いかと思いますが僕なりの精一杯の準備をしていきますのでぜひ期待していてください。よろしくお願いします!
<チョン・ドンソク>プロフィール
1988年2月6日生まれ。韓国芸術総合学校の声楽科出身。初舞台は2009 年『ノートルダム・ド・パリ』のグランコワール役。その後、『ロミオ&ジュリエット』『モンテ・クリスト伯』『モーツアルト!』『エリザベート』『二都物語』と話題の大作に出演。2012年、韓国で『ウェルテルの恋』、翌年2013年には同作で日本の舞台に立つ。また、ミュージカル『太陽を抱いた月』では時代劇にも挑戦し、第19回韓国ミュージカル大賞男優新人賞を獲得。同年8月、キム・スンデとともに、アルバム「Two Of Us ~歌ある限り~」を日韓同時にリリース。2012年「シアタークリエ5th Anniversary ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL」スペシャルゲスト、2013年 「K-Musical Stars Concert 2013」他、日本のコンサートにも出演し、人々の心に感動を届けている。
なお、2015年2月22日(日)には、クラシックの殿堂、トッパンホールにて、マイクレス・ヴォーカル・コンサート「チョン・ドンソク The Greatest Vocalist」を開催する。
写真提供:EA&C
チョン・ドンソクJapan official web site http://jeon-dongsuk.jp/
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