2016年7月13日(水)~24日(日)まで渋谷・東急シアターオーブにて上演される『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』。
ミュージカル界の巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーの名作を、今、ブロードウェイで大活躍中の振付家アンディ・ブランケンビューラーが演出。夢のコラボレーションが叶った新演出版は初来日。一度聴いたら忘れられないメロディと迫力のダンスパフォーマンスの大人から子供まで楽しめる作品だ。
本作の応援サポーターには、25年にわたり日本のミュージカル界で活躍し、ロイド=ウェバーに造詣の深い石丸幹二が就任。
今回、アステージは石丸幹二に『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』の魅力と、舞台、映像、音楽と多彩に活躍する自身ついて聞かせていただいた。
――『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』の作曲家ロイド=ウェバーについて、「自分の俳優人生を左右した作曲家の一人」とおっしゃっておられますね。彼の作品のお好きなところは?
ロイド=ウェバーは『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』はもちろんのこと、どの作品も作曲技法として1つのキャラクターに1つのメロディを与えていることが多く、そういう書き方がとても好きです。
この手法はオペラのプッチーニやワーグナーなどが用いている技法で、ロイド=ウェバーもクラシックをしっかり踏まえた上で、この手法を使っているのだと思います。
そして、オーケストレーションがすごくゴージャスで、聴いている人が音に気持ちよく包まれます。その技を知っている人、音楽的にそういう魅力を持っている人ですね。
――『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』のお好きなところを会見でも教えて頂きましたが、更に皆さんに観ていただきたいところは?
最後に全員が出るメガ・ミックスのシーンがあるのですが、本当に楽しくて、まるでお祭りのようです。91年版もそれはもう圧巻でした。今回の新演出ではほぼ全員がホワイトの衣装で、歌い踊るということなので、私もとても楽しみにしています。
舞台は最初から最後までノンストップで楽しめます。そして最後、このメガ・ミックスで「観てよかった」と、興奮して締めくくれる!全編見どころのミュージカルです。
――タイトルにあるように「ヨセフ」と聞くと、日本人には馴染みの薄い舞台ではと思いがちですが?
旧約聖書の話ですが「人はどう試練と立ち向かって、幸せをつかんでいくか」という話ですから、まったく心配しなくても大丈夫ですよ。日本のテレビドラマなどでもあると思いますが、いじめの苦境の中で、主役がどう立ち上がっていくのかと同じで、ストーリーを追いながら観られる作品です。
――アンドリュー・ロイド=ウェバー作品のひとつ『キャッツ』にも出演されていますね。どんな思い出がありますか?
「メモリー」など、一度聴くと忘れない印象的なナンバーがとても多いですよね。私の演じたスキンブルシャンクス(鉄道猫)もワクワクするナンバーですが、歌う方にとっては「え!?」と思うような拍子の曲もあります。聴いている方はそう感じないかもしれませんが、非常に難しいものでした。
また、『キャッツ』は客席に下りて、パフォーマンスをします。お客様に一番近いところまで行きます。それはある意味、嘘をつけない真剣勝負。役者として磨かせてもらった場でもありました。声楽をしていた頃は、ステージとお客様との間に必ず1つのラインがありましたから、『キャッツ』で「こんな世界があるのだな」と知りました。こちらは猫の役ですから、猫の気質みたいなものをふんだんに使って、お客様の膝に手を置いたり、荷物を勝手に触ったりと、失礼にあたることもしながら、お客様の反応を楽しんだりしました。そうやって、役を通して「あぁ、楽しんで下さっているな」とか「興味を持って下さっているな」ということを探っていく面白さがありました。
――観る側になったときは、どんなところに注目していますか?
やる側の人間が観る側になった場合は、ただ観客として座っていることは不可能で、どんなパフォーマンスをみせてくれるのか、客席にどんなものを届けてくれるのか、というようなことを、もうほとんど盗み見るという感じです。
しかし、そんな厳しい目で観ていても、心から魂を揺さぶられて感動するシーンは何度もあります。ブロードウェイやウエストエンドで観劇すると、感動のシャワーを浴びるというのでしょうか。役者さんたちの層も厚くて、素晴らしい俳優さんの魂のこもった演技を観て「自分が今、いかに頑張らなければいけないところにいるのか」に気付き、またそれに気付くために行く場でもありました。お陰で数々のパフォーマンスをこの目で観ることができましたし、それがいつしか自分の中に貯まっていき、引き出しの中で自然発酵して、自分の血になってきているなと今は思っています。
――学生時代から演奏家の勉強から声楽家を目指し、声楽家からミュージカル俳優へ転身、そして、舞台や映像を自在に行き来する現在…と幾度も転機が訪れたと思いますが、ご自身の思いは?
若かった当時は川の流れに身を任せているような感じでした。身を任せていることで、自分が何か新しいチャンスを得られるのではないかと、自分の目の前に新しい川が流れて、道が見えたときにはその道に乗っていこうと思っていました。私の恩師が「振り返る時間があれば、前を見ろ。君の背中を押して、みんなが川の水を流してくれるから自分の力じゃないんだよ、人生は!」と言ってくれたことがありましたが、まさにその通りだと思いました。
ある程度の年齢になれば、自分で川を漕いで、門を開けなければならない、自ら自分を押し出していかなくてはならないこともあります。しかし、若い経験を積んでいる最中には、流れに任せ、勢いに乗ってみる。そして、ダメなら降りればいいのだと思っていました。これまでに失敗もありました。結果は失敗だったかもしれませんが、自分の身になっているという意味で、自分の来た道は間違ってなかったと思っています。
――近年は舞台だけでなく、映像の世界でも大活躍されておられます。ご自身の中で何か変化はありましたか?
はい、かなり変わってきました。舞台では外国の作品も多く、カタカナの名前を背負うことが多いのですが、映像の世界は大抵の場合、漢字の名前ですし、実年齢に近い役か、それ以上。あからさまに見た目でわかる役で、生き様として密着していないとできません。映像の世界で演じることで、舞台で誇張していた演技の中身、本当の部分は何なのかを、改めて勉強できました。
舞台では良いキャラクターが多かったですが、映像では良い部分と悪い部分がないまぜになったような、大人のキャラクターと向き合うことになりました。悪い部分がでることにも理由がある。そういうキャラクターと向き合えたことは、今回4年ぶりの再演となった舞台『ジキルとハイド』の役作りに生かすことができました。これまでやってきたことや経験が無駄になっていないなと感じました。
今、舞台や映像のどちらもやれるというのは、本当に幸せです。
――デビュー25周年を迎え、今後の活動についてお聞かせください。
5月にフルオーケストラでのコンサート「デビュー25周年記念 オーケストラコンサート ~My Musical Life~」を控えています。オーケストラと歌う機会はこれまでに何度かあり、こういうかたちで歌えたら幸せだなと思っていました。希望してもなかなか叶うものではありませんから、とても嬉しいです。
また、今年の10月にはミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』があります。新演出版となり、作曲家フランク・ワイルドホーンが自ら向き合っているので心強いし、どんなマジックが起こるのか、とても楽しみです。
――最後に、これからの希望や願いを聞かせてください。
舞台、映像と並行して、音楽の活動もしており、日本の昭和歌謡と言われている名曲の数々を、もう1回再認識して、自分が歌って残していきたい。これは、多分年を取っても出来ることなので、死ぬまでやっていけたらと思っています。
きっと観に来てくださる方、聴いて下さる方がよくご存知の曲だと思います。「石丸がこんな曲を歌っているよ」「あんなことを言っていたな」という風に思い起こしてもらえれば嬉しいです。
その第1号として、6月に武満徹さんのアルバム『武満徹のうた』が発売されます。映画音楽も多数書いている武満徹さんのポピュラー音楽、歌の世界を歌いましたので、是非聴いてください。
石丸幹二(いしまる・かんじ)
1990年、ミュージカル『オペラ座の怪人』(劇団四季)でデビュー、『アスペクツ オブ ラブ』『美女と野獣』『壁抜け男』などに主演し、17年間在団し、その後フリーに。現在は舞台、映像、音楽と多彩に活動する。
最近の出演作に、舞台:『ジキル&ハイド』『ライムライト』『エリザベート』等。
映像:ドラマ/大河ドラマ「花燃ゆ」(NHK)、「アルジャーノンに花束を」「半沢直樹」(TBS)、「スケープゴート」(WOWOW)等。
ドキュメンタリー/「時代を楽譜に刻んだ男 山田耕筰」「旅の力」「crossroad」等。
音楽番組/「みんなのうた」(歌「かいじん百面相」)「明日へつなげるライブ」「題名のない音楽会」等。
映画/「サウンド・オブ・ミュージック」(吹替)等。
CD:「My Musical Life」「兵士の物語」「Love Songs」「kanji ishimaru」等。
ナレーション:「ザ・ノンフィクション」(CX)、「目撃!日本列島」(共にNHK)、美術展音声ガイド「マグリット展」「アンドレアス・グルスキー展」「ラファエル前派展」。
5月14日、21日にデビュー25周年記念オーケストラ・コンサートを開催。
主演・石丸幹二 最新出演舞台
ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』
2016年10月東京・赤坂ACTシアター
11月大阪・梅田芸術劇場メインホール
東京凱旋・東京国際フォーラムC
ミュージカル『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』
http://www.joseph2016.jp/
●日 程: 2016年7月13日(水)~24日(日)
●会 場: 東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
●入場料 : S席 9,800円(税込)/A席 8,000円(税込)/B席 6,000円(税込)
※未就学児童入場不可
●作 曲: アンドリュー・ロイド=ウェバー
●作 詞: ティム・ライス
●演出・振付: アンディ・ブランケンビューラー
●出 演: アメリカ・カンパニー
※生演奏/英語上演/日本語字幕付
●問い合わせ:Bunkamura 03-3477-3244(10:00~19:00)
http://theatre-orb.com/lineup/16_joseph/top.html