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小泉今日子&風間杜夫『家庭内失踪』開幕!公開舞台稽古レポート

2016年3月11日(金)より本多劇場にて、M&Oplaysプロデュース「家庭内失踪」が開幕した。
2008年に岩松了の作・演出舞台「恋する妊婦」でも夫婦役を演じた小泉今日子&風間杜夫が、倦怠期の夫婦を演じ、日常に潜む狂気の中に、独特のユーモアとおかしみを漂わせなる岩松了の最新作だ。
                                                                                                                        【撮影:柴田和彦】

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岩松了の新作「家庭内失踪」が、3月11日に開幕。岩松に岸田國士戯曲賞をもたらした傑作「蒲団と達磨」の後日譚ともいえる、ある夫婦を取り巻くミステリアスな、だが妙に笑えもするホームドラマだ。近年の岩松作品に多数出演し、その世界観を体現してきた風間杜夫と小泉今日子が夫婦役を演じる。ほかに小野ゆり子、落合モトキ、坂本慶介、そして岩松自身の全6名のキャストにより、多層的な人間ドラマが緻密に作り出されている。

いきなり、寝室から幕を開けた。夫婦の蒲団が微妙な距離感で、二組並んでいる。先妻の死後、20歳も歳下の後妻・雪子(小泉)を迎えた野村(風間)。自身は定年退職する歳となり、妻相手にコトに及ぼうとするも上手くいかない。野村が身体的、心理的に抱える繋がれなさ、充たされなさが、登場人物各々が迷走するこの物語の通奏低音として響いている。
野村と先妻との間の娘・かすみ(小野)は、夫の石塚との婚姻関係を続けながらも、父と義理の母(=雪子)が暮らす実家に出戻ってきている。夫のもとに帰るよう説得するため、石塚から命を受けた部下・多田(落合)、石塚のクラシック音楽仲間・青木(坂本)も野村家に現れる。もう一人、野村の奇妙な友人の望月(岩松)。彼は、失踪したと妻に思わせて実は近所のアパートを借り、夫の帰りを待つ妻の姿を、ピザ屋や肉体労働者などの扮装などをしながら覗き見るという謎の生活を送っている。かすみは、美しい義母の中に、父に対する軽蔑の感情があることを感じ取っていた。父への親子愛か、はたまた雪子への同性としての嫉妬か、かすみの中に芽生えたかすかな感情が、一家をかき回していく端緒となる。

岩松が書く人物らしく一見淡白にも見える登場人物たちは内面に様々な感情を抱え、目に見えない人物相関図は、物語が進むにつれてどんどん複雑に。そして個々の感情はふと、ドライアイスの煙のように怒涛の勢いで、冷たく漏れ出す。その瞬間に客席で味わえる心のざわめきが岩松作品を観る醍醐味だが、本作ではそれが幾度もやって来る。「フフ……」という微笑みが印象的な小泉は、“妻”“母”“女”全ての要素をミステリアスに、だが現実的に体現してみせた。ムーディーな小泉とは対照的なのが、言葉数も多く開けっぴろげな風間。そのあっけらかんとして見えるキャラクターに、冒頭で記した“老い”にも絡む複雑な感情を忍ばせる。名優ならではのサラリとした仕事ぶりに圧倒された。
舞台はリビングと和室(兼寝室)のみで、本音と建前を行き交う登場人物の心理がごとく、左右に何度もスライド。そして最後の最後には、装置的な仕掛けが待つ。岩松の掌で、たゆたうようでいて実は緻密に踊らされる快感を、隅々まで堪能していただきたい。
(文・武田吏都)

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<公演概要>
M&Oplaysプロデュース 「家庭内失踪」
【作・演出】 岩松了
【出演】 小泉今日子、風間杜夫、小野ゆり子、落合モトキ、坂本慶介、岩松了

【東京公演】  2016年3月11日(金)~23日(水) @本多劇場
【大阪公演】  2016年3月27日(日) @梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
【名古屋公演】 2016年3月29日(火)~30日(水) @日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【岐阜公演】  2016年4月1日(金) @大垣市民会館 大ホール
【静岡公演】  2016年4月3日(日) @静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
【富山公演】  2016年4月6日(水) @富山県民会館ホール
【広島公演】  2016年4月8日(金) @JMSアステールプラザ大ホール
【福岡公演】  2016年4月10日(日) @そぴあしんぐう大ホール
【新潟公演】  2016年4月12日(火) @りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
【宮城公演】  2016年4月15日(金) @電力ホール