日本でも2006年に東京にて初演され、今回韓国にて新たにリニューアルされたミュージカル『マリー・アントワネット』のプレスコールが10月31日、ソウルのシャルロッテシアターにて開かれた。
ミュージカル『マリー・アントワネット』は、高貴な身分の王妃でありながらも18世紀のフランス革命で断頭台にて命を絶ったマリー・アントワネットのドラマチックな人生と、彼女との偶然の出会いを契機に社会の不条理に気づかされるマルグリット・アルノーの人生を対照的に描きながら真実と正義の本当の意味を深く描いた作品。今回の韓国公演では原作とは違い、台本、音楽の面でも新しく創作され、特に世界公演ではマルグリット・アルノーを中心とした物語を描いているが、韓国版ではマリー・アントワネットのドラマチックな人生と愛に焦点を当てて物語を拡張させた。また、マルグリットとの出会いから始まる多様な歴史的事件を現代的に描きながら観客に正義や真実を根本的疑問を投げかける内容となっているとのこと。韓国・日本・アメリカの多国的なスタッフと共に原作とはまた違った魅力を見せてくれると話題の作品である。
この日のプレスコールでは出演者たちによるミュージカルのハイライト場面が試演された。華やかな宮殿の様子を見事に再現し、豪華な衣装を身にまとったマリー・アントワネットと対照的なマルグリットが初めて出会う場面などを印象的に演じて見せた。
その後行われた会見には演出家のロバート・ヨハンソン、『エリザベート』、『モーツァルト!』、『レベッカ』などを成功させたヨーロッパミュージカルの巨匠作曲家シルベスター・ルベイ、劇作家のミハエル・クンチェ、キム・ウンジョン音楽監督の他にマリー・アントワネット役のオク・ジュヒョンとキム・ソヒョン、マルグリット・アルノー役のユン・コンジュとチャ・ジヨン、マリーの恋人アクセル・フォン・フェルゼン伯爵役のKAI(カイ)、ユン・ヒョンリョル、チョン・ドンソク、オルレアン公爵役のミン・ヨンギ、キム・ジュンヒョンらが参加し、インタビューに答えた。
演出家のロバート・ヨハンソンは今回の韓国公演において、マリー・アントワネットの歴史的事実にまず重点を置きつつも、マリーがどのように悲劇的な人生を迎え、さらにフェルジェン伯爵とのプラトニックな愛の世界を伝える上で苦労したと話し、そのために必要な登場人物たちを集めて描いたと伝えた。またマリーとマルグリット、二人の女性の人生がどのように位置が変わっていくのか、二人がこの世に対する見つめ方がどのように変わっていくかにも注目してほしいと伝えた。そして「全ての登場人物たちと観客自身を同化することができ、理解できるかを重要視し、単に歴史の本に登場する人物たちではなく、私たちのように愛に喜び、悲しみ、愛を感じる人物たちであることを見せたかった」と韓国公演に対する意図を伝えた。
今回マリー・アントワネットを演じるオク・ジュヒョンは近年実在する人物や原作のある作品に出演していたが、今回演じる上で特に何を準備したかについて「いつも準備しますが、特に実在の人物を演じるだけにとても注意深く準備しています。演出家の方から推薦していただいたベルサイユの本があるんですが、とても分厚くて・・なかなか読めなかったんですが(笑)以前実際にフランスのベルサイユを訪問して実際に目にしてきたことが役に立っていると思います」と伝えた。同じくマリー・アントワネットにダブルキャストとなったキム・ソヒョンは、ステージでは斜面が傾斜状態でヒールで舞台にあがり演じるのが大変であると話ながらオク・ジュヒョンと足をマッサージしあったという裏話も伝え、一生懸命練習していると話した。
マルグリット役を演じるユン・コンジュは女性がミュージカルの主人公となることについて「女性観客が多いので男性の主人公が多いと思うのですが、マリー・アントワネットは女性が引っ張っていく作品で、その作品に参加できるということに感謝しているし、演じるごとにその面白さを実感しているので女性観客の方々も共感していただけると思います」と話した。また「マルグリットが実在の人物ではないので私たちが創造しながら役作りできるので面白かったし、台本の中からヒントをもらって役作りをしました」と演じることへの情熱を伝えた。
同じくダブルキャストのチャ・ジヨンは体力管理に関して「家から歩いて会場に来ます。殻果類を食べて管理し、道端に暮らす貧しい役柄なのでいつもお腹をすかせるようにしています(笑)」と話し、『マリー・アントワネット』は2014年年末最も悲しく熱く強力な作品であるとその魅力をアピールしていた。
フェルゼン公爵役の3人にも質問が続いた。まずユン・ヒョンリョルは「前作では試験的な現代劇に挑戦したのですが、今回は時代劇に出演することになり、どちらも魅力があるし学ぶことも多いと思います。今回は大衆の皆さんがよくご存知の作品に出演することでお見せできるものがあると思ったし、俳優としても多くのことを学べると思いました」と今回の作品に出演することになった動機を話した。
役柄の衣装を全て事前に準備したというKAIは「最高のミュージカル会社に、最高の演出家、作曲家の方々、そして最高の俳優たちと是非ご一緒したいという気持ちが強かったので、衣装を準備してオーディションに向かいました(笑)。あとから聞いた話ですが、衣装のために選ばれたのでは?といわれているようです(笑)」と会場を沸かせた。また「大劇場での公演は数少なくてこれが3度目の作品になりますが、新人の気持ちで挑んでいます。練習の段階で沢山修正されて変更されるものも多いですが、それがむしろキャラクターの分析に役立ち、フェルゼンを詳細に演じるにきっかけになっていると思い、感謝しています」と伝えた。また演じるにあたっては池田理代子の漫画『ベルサイユのバラ』9巻までを手に入れて読みながら役作りしているという裏話を伝えた。
そしてチョン・ドンソクは「5ヶ月ぶりの作品ですが、どの作品に対しても演技も歌も一生懸命演じますが、今回はロバート・ヨハンソン演出家の全体的なドラマのラインから外れないように、そのラインを理解しようと努力しました」と伝えていた。
韓国バージョンで今回その存在感が注目されるオルレアン公爵を演じるミン・ヨンギは「オルレアンは悪いやつです(笑)フランスでは一番の富豪ですが、ルイ16世が王としては不足であるために自身が王になろうとするそういった面を重点的に演技しています」と意気込みを話した。ダブルキャストのキム・ジュンヒョンも「音楽の多様性もあり、韓国の情緒にも合う曲が多いと思います」と伝えながら、音楽と演出が合わさったときに大きな効果を得るだろうと述べた。
大衆に知られている作品でありながらも、創作作品を演じるかのように演出家たちや俳優陣たちの多くの努力が感じられる作品といえるミュージカル『マリー・アントワネット』。マリー・アントワネットとマルグリッド・アルノーという身分の違う女性二人の主人公の人生を通して、ミュージカルの主題となっている「正義とは何か?真実とは何か?」という問いを見出し、現代にも起こりうる内容として受け取って欲しいと伝えたロバート・ヨハンソンの言葉のごとく、観客にもそのメッセージが伝わるか注目される。見ごたえのある壮大なステージとマリー・アントワネットの衣装なども見逃せないミュージカル『マリー・アントワネット』は2014年11月1日から2015年2月1日までソウルのシャルロッテシアターにて公演される。