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CS衛星劇場にて、9月15日(日)午後6:00~8:30 テレビ初放送!舞台「黒白珠」松下優也インタビュー

多くの先輩方や同年代の俳優さんたちと
共演できたことは大きな財産になっています

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母を知らずに育った双子の兄弟、勇と光。舞台『黒白珠』は、自身の境遇や過去に悩みながらも、自分たちの未来を見つけようと模索する家族の物語です。今回はプライベートでも仲のいい平間壮一さんと双子の役でしたが、稽古場では作品について、どのようなお話をされていったのでしょう?

「壮ちゃんから相談されて、ときどき一緒に考えることはありましたが、具体的に2人だけで演技を決めていくということはなかったですね。というのも、僕自身が普段から、演技について誰かに相談するタイプではないんです。それに、壮ちゃんとの関係って少し不思議で。普通、久々に友人に会うとテンションが上がるものだと思うのですが、そうならない(笑)。常に、お互いフラットな感じでいられるんです」

まさに兄弟みたいですね。

「そうですね(笑)。それもあって、稽古場でもいつもと変わらない関係のままでした。そこがとてもラクでしたね。役に関しては、演出の河原雅彦さんから、“(平間壮一演じる)光は勉強ができるけど、勇のほうが人付き合いは上手い”という説明を受けましたので、そこがにじみ出るように演じました。また、稽古の序盤で言われてすごく覚えているのが、作品全体のトーンが沈みがちにならないように、勇のテンションの高さを強調したいということでした。ですから、最初に台本を読んだときは、あそこまで激しさのある役になるとは思ってなかったですね」

脚本の話が出ましたが、初めて物語に触れたときはどのような印象を持たれましたか?

「風間杜夫さん演じる父親(大地)のセリフに、《みんな、生きてたら、それでよか!》というのがあるのですが、まさにこの作品を象徴しているなと感じました。生き続けることが何よりも大事だし、生きていればいろんなことがある。それに、理想だけでは生きていけないし、“こうありたい”“こうでなくてはいけない”というきれい事だけでも物事は進んでいかない。僕はまだ29年間しか生きていませんが、そのことを改めて強く考えさせられました。また、この作品に登場する人物たちは、自分を含め、みんなが幸せになることを考えているんです。でも、人によって人生が違うように、幸せの形も異なるんですよね。その意味では、見る人によって感情移入する役や場所が違うでしょうし、そこに青木豪さんが書く戯曲の深さを感じましたね」

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そうしたヒューマンドラマを描いた作品だけに、やはり風間杜夫さんをはじめとするベテランの皆さんの存在感には圧倒されました。

「風間さんとは初めて共演させていただきました。親子という役柄だったこともあり、近い距離で一緒にお芝居ができたことで、影響されることがたくさんありました。すごく安心感をくださる方ですので、緊張感もなかったですし、お酒を飲むとさらに気さくなお人柄なんだということもよくわかりました(笑)。それに、風間さんや村井(國夫)さん、(高橋)惠子さんは僕なんかが到底およばない経験や技術を持っていらっしゃいますが、29歳の“今”の僕にしか出せない表現や演技というものが必ずあると思うんですね。それを出していけばいいんだと思ったんです。お芝居って勝ち負けじゃないですから。ですから、気負うことなく、自分にできることを精一杯やるだけでしたね」

なるほど。ちなみに、松下さんがお芝居をするときに、とくに気をつけているのはどんなことでしょう?

「なるべく普段の僕自身とはかけ離れた演技をしたいなと思ってます。とはいえ、当然、自分の中にあるものからしか表現は出せないわけで。ですから、ある意味で他力本願ではありますが、自分ではまだ気づいていない潜在的に持っている引き出しを開けてもらえるのが、お芝居の面白いところだなと思っていますね。今回の舞台でも、共演者の皆さんにいつも以上の自分を引き出していただいたような気がします。」

また、演出の河原さんとは2013年に『THE ALUCARDSHOW』で一緒に舞台を作られていますが、ストレートプレイでは初めてになります。改めて演出を受けてみていかがでしたか?

「河原さんがいつも大事にされるのは、“しっかりと状態を作る”ということです。例えば、場面や環境を理解した上で、役の気持ちがどうあるべきかを考える。それさえできていれば、相手役がどんな演技をしてきても、役がブレることなく芝居ができる。すごく基本的なことではあるんですが、今回もそこを大切にしていきたいと最初の段階からおっしゃっていました。また、笑いの部分に関しては、たまに2人で遊びすぎて、“結局このシーン、何が伝えたいのかわからなくなってきたぞ”ということもありましたが(笑)、面白かったのが、『ここではお客さんの20人ぐらいが笑ってくれる感じで言ってみて』という演出をされるんです(笑)。その絶妙なところが僕はすごく好きでしたね(笑)」

すごく難しそうですが(笑)。

「たまに、稽古場で誰も笑ってないのに、河原さんだけが大笑いしていることもあって(笑)。大丈夫なのかなという不安もありましが、河原さんが狙っているのはこういうことなのかなとも思いました」

では最後に、放送をご覧になる方にメッセージをお願いします。

「今回は、主演という形で出させていただき、多くの先輩方や同世代の俳優さんたちとお芝居をすることができました。このことが、僕にとっての大きな財産になったのは間違いないです。そうした作品を、多くの方に舞台を見ていただけるのは、本当に幸せなことです。それに、舞台って思い立ってすぐに見に行けるものでもないですし、普段ご覧にならない方にとってはハードルの高さも感じてしまうと思うんです。ですから、これをきっかけに舞台に触れていただき、次は劇場に足を運んでみたいなと思っていただけたら嬉しいですね。また、すでにご覧になった方も、映像を通して見ることで、また違った見え方ができるかも知れませんので、ぜひ楽しみにしていただければと思います」

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▼プロフィール
Yuya Matsushita
1990年5月24日生まれ。兵庫県出身。歌手、俳優、音楽グループX4として活躍。2009年に俳優デビュー。16年、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』で脚光を浴びる。今年12月から始まる音楽劇『ロード・エルメロイII世の事件簿 -case.剥離城アドラ-』にも出演。

取材・文:倉田モトキ
撮影:宮田浩史
スタイリング:Hideaki Tatematsu
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【作品情報】
黒白珠

2019年
[演出]河原雅彦
[脚本]青木豪
[出演]松下優也、平間壮一、清水くるみ、平田敦子、植本純米、青谷優衣、村井國夫、高橋惠子、風間杜夫

1990年代の長崎を舞台に、同じ刻(とき)に生を受けた双子の兄弟とその家族が、逃れられない運命をもがきながらも紡いでゆく、愛と葛藤の家族のドラマ。本作は『エデンの東』をモチーフとし、人間群像を繊細に深く描くことに定評のある青木豪が、長崎に取材し、普遍的且つまだ見ぬ新しい物語を創り出す書き下ろし作品となる。華やかさと毒を含み、心情に刺さるエンターテインメントを生み出す河原雅彦の演出がどのように物語世界を立ち昇らせるのか。2人の精鋭クリエイターの化学変化と実力派キャストたちが新たなドラマを生み出した。

【あらすじ】
1994年、長崎。信谷大地(風間杜夫)は、真珠の加工・販売会社を経営していた。長男の勇(松下優也)は高校卒業後、職を転々とし、大地を心配させていた。勇には花苗(清水くるみ)という恋人がいる。勇の双子の弟・光(平間壮一)は、大学に進学するために東京に出ていた。光に大地は期待を寄せていた。勇は、周囲から、叔父に似ていると度々言われることから、いつの頃からか、自分の出自にある疑念を抱き始める。勇と光は、母・純子(高橋惠子)のことをほとんど知らない。まだ二人が幼い頃、母は、叔父と不倫の末、駆け落ちし信谷家を出て行ったらしいが、その後の消息は聞かされていなかった。出自へ 疑念を抱えた勇。そして、ある出来事から母と再会することになった光…。封印された家族の物語が、不協和音を立てながら動き出し、衝撃の真実を解き明かすパンドラの箱が、今開かれる。
(2019年6月7日~6月23日 Bunkamuraシアターコクーン)

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【放送情報】
CS衛星劇場にて、9月15日(日)午後6:00~8:30 テレビ初放送!
9月15日(日)は「どっぷりステージDAY」!話題の舞台を一挙放送!

午前8:00~ 花組芝居「黒蜥蜴 黒夫人組」
午前10:45~ 世田谷パブリックシアター「マクベス」
午後0:30~ M&Oplaysプロデュース「鎌塚氏、腹におさめる」
午後2:30~ ゲキ×シネ『乱鶯』
午後6:00~ 黒白珠
午後8:30~ M&Oplaysプロデュース「クラッシャー女中」

https://www.eigeki.com/special/doppri_stageday