SF映画の金字塔といわれるモノクロ・サイレント映画「メトロポリス」と、その原作小説を大胆にアレンジした「メトロポリス」が、松たか子、森山未來など、魅力あふれるキャストを得て舞台となったシアターコクーン・オンレパートリー2016「メトロポリス」。そのゲネプロが初日前日の11月6日に行われた。
ステージだけがくっきりと異空間…別世界であることをひしひしと感じる。まるで、そこだけ重力が違うように。
キャストは誰もが全身を使って見せる。誰もが主役に見える中、森山未來が躍動し、松たか子の美しい声が響く。その不思議な世界を別世界と思いながらも、懸命に生きる人々の姿に、いつしか肩入れして観てしまう。
一挙に見せる2時間。眼前にくりひろげられるSF世界を堪能したい。
[コメント]
演出・美術・出演 串田和美
この芝居に限らず、表現の幅を広げたいという思いが僕の根底に絶えずあります。そういう表現の元になる作品を、いつも探している。シアターコクーンから提示された『メトロポリス』は、そういう意味でも刺激的でした。演劇って、人によって見方が様々だから、「こんなの演劇じゃない」と言う人もいるかもしれません。
でも、今回の表現そのものを素直に見てもらいたいと思っています。カットアウトで時空がズレる感覚とか、ひとりの人物を何人かで演じることで人間の多様性を表現できないかとか、できるだけ幅広く表現の方法を探りたい。それはただの手段かもしれないけど、手段そのものにも意外と力がある。
原作の『メトロポリス』は、100年前に既に都市の崩壊を描いているけれども、崩壊や滅亡は絶えず起こっている。戦争や人災も含めた大きな自然の災害は、今も起こり続けています。それにたしての思いは常に考えていることで、この作品にも現れていて、感じてもらえることは、たくさんあると思っています。
松たか子
マリアは、自分のことを(森山演じる)フレーダーに少し語るくらいで、あとは謎に包まれた存在です。メトロポリスの人々にとって、拠り所になれば、と。人は感情を割り切り、効率のみで生きることもできるかもしれない。マリアが希望となって命をつなげればいいのですが、どうなるでしょうね。森山くんはアイディアマン。アイディアを構築し、かつ自らやってみせることができます。先輩たちも頼もしく、自分にないものを持つ方々と過ごす時間は、とても充実しています。串田さんが稽古始めに「勇気を持ってこのホンに取り組む」とおっしゃったんです。私も勇気を持ってこの世界に飛び込み、とことん生きて、漂っていたいと思います。
森山未來
フレーダーは決まったものを持たないまま、やっていいんじゃないかと思っています。世界観を構築する際に、ある程度見せ方やビジュアルをまとめる必要はあるでしょうけど、フレーダーだからということにこだわらず、たとえば松さんとやる時は、松さんと僕の関係性でないができるかを探したい。松さんはすごいと思うんですよ。稽古で立つとキャラクターうんぬん以前に、彼女の人間性がズンっと前に来ますから。田んぼに躊躇なく脚を踏み入れていけるような姿勢が素晴らしくて、僕は周りでチョロチョロしていれば大丈夫かな(笑)。僕自身、単純にここにある事象を楽しみたいし、楽しむ自分が観客に伝わったほうがいいような気がする。フィクションであるということを意識しすぎないほうがいいんじゃないかと思っています。
【公演名】 メトロポリス
【日 程】 11月7日(月)~30日(水)
【会 場】 Bunkamuraシアターコクーン
【原 作】 テア・フォン・ハルボウ『新訳 メトロポリス』(訳・酒寄進一、中公文庫)
【潤 色】 加藤直
【音 楽】 平田ナオキ
【振 付】 山田うん
【演出・美術】 串田和美
【出 演】 松たか子、森山未來、飴屋法水、佐野岳、大石継太、趣里、
さとうこうじ、内田紳一郎、真那胡敬二、大森博史、大方斐紗子、串田和美 他
【主催/企画・製作】 Bunkamura
【お問合せ】 《チケットに関するお問合せ》 Bunkamuraチケットセンター 03-3477-9999(10:00~17:30)
※チケット好評発売中
《公演に関するお問合せ》 Bunkamura 03-3477-3244(10:00~19:00) http://www.bunkamura.co.jp/