シェイクスピアの喜劇作品の中でも「一番幸福な物語」と言われ、日本でも繰り返し上演されてきた人気作品『お気に召すまま』が、1月4日からシアタークリエで絶賛公演中だ。
初日前日に行われた公開ゲネプロからレポートをお届けする。
ジェークイズ(橋本さとし) ロザリンド(柚希礼音) シーリア(マイコ)
『お気に召すまま』は舞台ではもちろん、映画やドラマに幾度もなってきた人気喜劇。
それを今回は、演出のブロードウェイの鬼才マイケル・メイヤーが、「アメリカが一番幸せだった時代」の1960年代後半のヒッピー文化に重ね合わせて描く。
キャストは…
主人公の令嬢、ロザリンド役は、2015年まで宝塚歌劇団星組トップスターだった柚希礼音。
相手役のオーランドには、「ブロードウェイの『春のめざめ』のオーディションでマイケル・メイヤーに出会った」というジュリアン。そして橋本さとし、横田栄司、伊礼彼方という芸達者たちが脇を固める。
シアタークリエに足を運ぶと、客席にはいつの間にかリズムをとってしまう…そんななんとなく懐かしい音楽が流れ、観客を60年代へと誘っていた。
オーランド(ジュリアン) オリヴァ―(横田栄司)
「These Boots Are Made for Walkin’(にくい貴方)」の音量が上って幕が開くと、舞台上には白い柱が並ぶ。ホワイトハウスのイーストウイングを彷彿とさせる宮廷は、今回はワシントンDCの設定だ。
長兄オリヴァ―(横田栄司)から、まるでシンデレラのような仕打ちを受けていると、オーランド(ジュリアン)が長年仕える老下僕のアダムに嘆き、やってきたオリヴァ―に思いをぶつける。スーツ姿が新鮮だ。
一方、公爵だった父(小野武彦)が宮廷を追われたロザリンド(柚希礼音)は、いとこのシーリア(マイコ)にわが身の不幸を嘆く。シーリアの父が、兄であるロザリンドの父を追い出したのだ。だがシーリアは、父がロザリンドをも追い出すなら、自分も一緒に屋敷を出ると言う。
春らしいパステルカラーのワンピース姿の柚希礼音が、とても新鮮だ。これが柚希礼音の女の子役としての初芝居とのこと。マイコとの仲良し女子トークがリアルで楽しい。
オーランドが力試しに出たレスリングの大会で、オーランドとロザリンドは出会い、恋に落ちる。恋に落ちる瞬間は、そのまま切り取りたくなる名場面だ。
やがてロザリンドはシーリアと宮廷を出る。身の安全のためロザリンドは男装しギャニミードと名乗る。
男装した柚希礼音を見るのは、やはり心地よい。その肩や腰の使い方のかっこよさ。だが、ロザリンドが男装しているのだから、男役とも違う。その微妙な違いを探すのも楽しい。
さらに女優が舞台に立てないシェイクスピアの時代に、オールメールで演じていたことを想像してみると、柚希礼音がロザリンドを演じ、男装していることがさらに面白く感じられた。
ロザリンドの父(小野武彦)と森の仲間たち(
物語とは話が前後してしまったが、ロザリンドが訪ねる先は、父が居るアーデンの森(ヒッピー発祥の地、ヘイト・アシュベリー)。舞台は一転。サイケな色に彩られ、音楽は「California Dreamin’」に。シルヴィアス(平野良)は最高にかわいい羊たち(!!)を連れて歩き、生バンドとアミアンズ(伊礼彼方)の歌が響く、ゴキゲンな場所だ。
これ以降の森での音楽には、『春のめざめ』や『ネクスト・トゥ・ノーマル』の音楽を手がけたトム・キットが8曲もの楽曲を提供。深い世界の広がりを感じさせてくれる音楽が心地いい。
アミアンズ(伊礼彼方)
この森でギャニミードは、やはり家を出たオーランドと出会うのだが、オーランドはギャニミードがロザリンドとは気付かない。そんなオーランドを、ロザリンドはギャニミードとしてからかう。観客は翻弄されるオーランドを憐み、笑いながらも、ロザリンドのキュートさに魅了され、そんなロザリンドの心を実はつかんでいるオーランドにもちょっぴり嫉妬してしまう。また、そこまで恋してもらえるロザリンドを羨んでもしまうだろう。そう、恋したことがある人にはキュンとする思いが思い出されるはず。「恋するって、こんなに楽しいのか」という思いが、ジリジリと近寄ってくる。
この森には、アミアンズ以外にも魅力的な登場人物たちが続々登場する。
おバカな従者としてロザリンドに連れてこられたタッチストーン(芋洗坂係長)は、達者に韻を踏んで流暢にうたう。
憂うつな皮肉屋のジェークイズ(橋本さとし)は、豊かな表情と表現で、会場を笑いに陥れる。
そしてオーランドを探しにサイケな森にやってきたオリヴァ―(横田栄司)の変貌ぶりといったら!父親役だった『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイアバイオハザード』から、今作ではすっかり若返ったようだ。役者とはスゴイ!
そして恋に落ちる若者達のキュートなこと。
オーランド(ジュリアン) シルヴィアス(平野良) フィービー(平田薫) ギャニミード(柚希礼音)
心地よい音楽にものせられて、エンディングを迎える頃には、観ているこちらも恋の気分に伝染し、すっかりイケイケ気分の恋の応援団になっている。
「恋はできない」と思っているあなたも(?!)、恋する幸せを、是非、新春のシアタークリエで感じてみて下さい!
東京公演は、・日比谷 シアタークリエにて2月4日(土)まで。
2月7日(火)~12日(日)大阪 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2月15日(水) 香川 レグザムホール
2月24日(金)~26日(日) 福岡 キャナルシティ劇場
公式HP http://www.tohostage.com/asyoulikeit/