6月にCBGKシブゲキ!!で再演されるミュージカル『いつか~one fine day』の制作発表が、4月15日に行われた。制作発表の模様は、conSept YouTubeチャンネルより無料配信され、またアーカイブとしても公開される。
ここではその後に行われたプレス向けの質疑応答の模様を中心にお伝えしたい。
2019年の初演では第27回読売演劇大賞上半期スタッフ賞にノミネートされ、注目をあつめた日本発のミュージカルが、新たなキャストを得て、どう変わるのか?見どころはどこなのか?
原作は韓国映画「ワン・デイ 悲しみが消えるまで」だが、板垣による脚本は原作とは違うところもあるもの。
制作発表では、プロデューサーの宋元燮の司会のもと、出演する藤岡正明、 皆本麻帆、松原凜子、西川大貴、大薮丘、浜崎香帆、土居裕子と脚本・作詞・演出の板垣恭一が登壇した。
あらすじ
保険調査員のテル(藤岡正明)は後輩・タマキ(大薮丘)の担当だった仕事を引き継ぐよう新任の上司・クサナギ(藤重政孝)から命じられる。それは交通事故で植物状態の女性・エミ(皆本麻帆)の事故の原因を調べるというもの。しかし、エミの代理人・マドカ(松原凜子)と友人・トモヒコ(西川大貴)は調査に非協力的で敵対。仕事が進まないなか、病死した妻・マキ(浜崎香帆)のことをまだ整理できずにいるテルに声をかけてきたのは、意識がないはずのエミだった。俄かには信じがたいと思いながらも自分にしか見えないエミと交流を重ねるうちに、事故の陰に幼い頃にエミを捨てた消息不明の母親・サオリ(土居裕子)の存在が浮かび上がってくる。
脚本・作詞・演出 板垣恭一
―今回の再演キャスティングについて教えてください。
板垣:キャスティングはプロデューサーの宋さんにお任せしたので、宋さんの聞くのがいいでしょう。
宋:再演にあたってキャスティングでは、主演の藤岡さんと皆本さんの二人はそのままで雰囲気を変えてみたい、「ちょっと大人っぽい作品にできたら」と思って、最初にサオリ役の土居さんにお声をかけさせて頂きました。キャスティングの仕方としては、おひとりが決まったら、全体のバランスを見て、また次の方にお願いするというやり方をしています。 なので、もし土居さんに断られていたら、この座組が全部変わっていた可能性もありました。
全員:うぉ~!
藤岡:やっぱり怖い話だ!
板垣:僕はその途中経過をワクワクしながら聞いていました。
ーキャストのみなさんが、出演を決めた理由は?
大藪:僕はマネージャーから話を聞いて初演の配信を拝見して、心から「ミュージカル?」と思ったほどナチュラルで素敵な作品だと思いました。僕は本格的なミュージカルはほぼ初めてです。ちゃんと人前で歌うことをしてこなかったので、チャンスを頂いて有難いですし、活かしたいと思っています。すごいキャストの皆さんなので、必死に食らいついていきたいと思っています。
松原:初演を拝見していたので、お話を頂いた瞬間に「やりたいです!」という感じでした。板垣さんとはコンサートと、板垣さんのワークショップでご一緒したことがあります。作品で板垣さんの演出を受けてみたいという思いがずっとあったので、作品の良さと板垣さんへの思い、2つが重なって即答しました。
西川:日本オリジナルミュージカルが必要だと思うからこそ感じていることですが、日本人ということを表現しようとしてギクシャクしたり、違和感があったりする作品が少なくない…と思っていたのですが、この作品は繊細なテーマでありながら違和感ない作品。「ミュージカルなのか?」「ミュージカルだ」という思いが行ったり来たりしながら見終えた記憶があります。なので、0.1秒くらいで「やりたいです!」と言いました。
浜崎:私もスタッフから「すごく素敵な作品だから、ぜひ出させてもらいなさい」と聞いて、初演を映像で拝見ました。そして心を打たれて「こんな素晴らしい作品に出演させて頂けるなら光栄だ」と思いました。個人的にはグループ活動を中心にしてきたので、これから一俳優としてもっともっとステップしていくために、歌もお芝居もすべてが素晴らしいキャストの皆さんをみて育っていけたらと思っております。
土居:日本のオリジナルミュージカルに参加できるものがあれば、参加しようという思いはずっと心の中にありましたので、迷わず出演を決めました。ただ初演の和田清香さんの歌がすばらしくよくて、楽屋に正(藤岡)を訪ねた時に出てきた清香ちゃんに「よかったよ!」と言った記憶があります。「その歌を私が歌えるか?」という不安もありましたが、「土居さんなりにやったらいいのでは」というコメントを頂いたので、お受けさせて頂きました。
―初演をご覧になった方へ、再演の楽しみを教えてください。
皆本:キャストがガラッと変わりましたので、雰囲気は全く変わるのではと楽しみにしています。「一から新しいものを」という気持ちで、皆さんと一緒に作品にもう一度、ぶつかっていけたらと思います。劇場もシアタートラムからシブゲキ!!と変わりますので、全然違いますよね。板さんがあの劇場をどう変えていくのか、私も楽しみにしています。
藤岡:以前ご一緒したことがある英国の演出家フィリップ・ブリーンが「その作品をやる意義と、この場所でやる意義が見いだせなければ、その作品をやるべきではない」と話していました。2019年の初演では板垣さんが「この社会での生きづらさを表現したい」「社会派エンターテイメント」とおっしゃっていましたが、2021年の本作はその時とは全く違った意味で試される公演になるかなと思います。僕自身も一俳優として、東京渋谷シブゲキ!!でこの公演をやる意味を強く見い出して、全く新しい『いつか』を届けるのが使命だと思っています。
―浜崎さんにとってシブゲキ!!は大事な場所と思います。思いをお聞かせ下さい。
浜崎:デビュー前からシブゲキ!!に立たせてもらって、拠点でもあったので、新たな作品で立たせていただけるのはとても感慨深いです。新しいスタートラインになるのではと思うので、全力でがんばりたいと思います。初舞台がシブゲキ!!だったので、上京してから9年でどれだけ成長できたのか、再確認できると思うので楽しみです。
―楽曲についての思いをお聞かせください。
西川:歌稽古はこれからですが、歌と芝居のバランスが素敵な作品なので、歌をいかにナチュラルに歌っていけるかが大事なポイントだと思っています。ただ芝居ぽく歌えばいいのでもないと思うので、そのバランスを考えながら稽古に挑むことになりそうで、楽しみです。
松原:話すように歌うことを、いつもよりもトライできる作品だと思っています。普段は芝居を大切に歌いたいと思っていても、音域や声を張ることが先で芝居に到達できないという思うこともありましたが、今回は曲の助けもあって、そこに届きそうな気がしています。話しながら歌うことがやりやすい曲だと思うので、そこが楽しみです。
土居:一曲の中で娘のエミとなぜ離れて暮らしているのかをつたえなくてはいけないので、美しいメロディに歌詞が詰め込まれています。ともすると流れてしまって伝えきれないのでは…という不安もあります。情報を伝えることと、楽曲の美しさを大切に歌うことの両方で、かなり大変な一曲になる気がしています。
大藪:演じるタマキというのは流されて生きている人物ですが、♪「天文学者になりたかった」という曲を唐突に歌います。彼にも心の中に思うことがあって、この曲を歌う意味がきっとあると思うので、どんな感じになるのか、それもすごく楽しみです。
浜崎:(桑原)まこさんに歌稽古をしていただいたときに「話し言葉のように音をつけている」と聞いたのがとても印象的で「だから歌詞がすっと入ってくる。情景が浮かんでくるんだろうな」「歌っていても気持ちいいし、聞いても気持ちいい」と思いました。
皆本:初演ではお芝居に入り込んで歌っていたので、気持ちが高ぶりすぎていた部分があったので、今回はしっかり音楽をお届けできるように丁寧にコントロールしてお届けしたいと思っています。
藤岡:だいたいミュージカルで歌稽古をすると、作品によってはできませんが、俳優に合わせたキーで曲を作ったり微調整したりすることがあります。この作品については、役に合ったキーというのが存在していて、違和感のない声色、感情が伝わるキーやフレーズという点が秀逸だったと思います。初演ではまこちゃんとキーについて、ずいぶん話しをした記憶があります。そして、この作品は音楽の美しさもそうですが、照明もとても美しいんです。そういうところも、ぜひ見て頂きたい。全部が相まって、心のデトックスになってくれるような作品でもあり、その中に痛烈なメッセージを受け取ってもらえたらと思います。
ミュージカル『いつか~one fine day』
■日程:2021年6月9日(水)~20日(日)
■会場:CBGKシブゲキ!!
■主なスタッフ
原作:映画『One Day』
脚本・作詞・演出:板垣恭一
作曲・音楽監督:桑原まこ
■出演
藤岡正明 / 皆本麻帆 / 松原凜子 / 西川大貴 / 藤重政孝 / 大薮丘 / 浜崎香帆 / 土居裕子
原作: 映画『One Day』
脚本・作詞・演出: 板垣恭一
作曲・音楽監督:桑原まこ
演奏: 桑原まこ(Key)、 荒井桃子(Vn)、 石貝梨華(Vc)、 成尾憲治(Gt)
■チケット料金
一般:10,500円
平日ソワレ割:9,500円
(全席指定・税込)
公式ホームページ :htps://www.consept-s.com/itsuka2021/