7月11日よりKAAT神奈川芸術劇場で初日を迎えた「ペール・ギュント」のプレスコールと囲み取材が行われた。
ペーギュントは、1876年の初演より現在までに、名だたる演出家による斬新な上演が続けられている舞台。今回、実力派キャストとともに、白井晃構成・演出により、新たな白井版『ペール・ギュント』が上演される。
Endless Shockで競演経験のある内博貴と前田美波里が、ぴったりと息の合った親子を演じているのも見どころとなりそうだ。
ペールと恋に落ちるソールヴェイを演じるのは藤井美菜。無垢で一途な娘に相応しい瑞々しさが魅力的だ。
囲み取材
「いよいよ幕が開きます。盛り上がりはいかがですか?」という問に対して、開口一番「めっちゃ怖いです」と内。しかし、「散々稽古してきましたので、それを本番にぶつけることができたらなという風に思っています。今までやってきた舞台の経験の中でも一番難しいと言っていいくらい、僕にとってチャレンジになる作品なので、ある意味楽しみでもあります。」と続けた。
年齢的に幅がある役についても「最後には70代までになりますが、メイクだったり衣装だったり、舞台袖にひっこんで着替えて・・・とかではなく、今まで皆さんが見た事のない舞台になっているのではないかと思っています。それは白井さんのアイディアです」と意味深な答え。どうしても舞台が見たくなる気にさせられた。
「演出家・白井晃は怖くなかったのか?」という問に対して「いや、全然!丁寧に丁寧にやっていただきました」との内の答えを追うように白井から「怖くないですよ」と一言。会場が笑いに包まれた。
舞台経験豊富な前田からは「私はとても怖いんです。白井さんの演出が。〈演じてはいけない〉〈自分に役を引きつける〉〈その場を生きる〉ということがとても難しくて。今まではかっちりと決まったお稽古、役だったのですが、決めてくださらないんですよ。私がいちばん難しいです」と苦労を語った。
その前田の言葉を受け、白井は「どうしても本番が近づくと俳優の心理としては決めてかかりたいところが出てくるものですが、そういう状況になると『前田さんそれやめましょう、ゼロにしましょう』と『日々新鮮に毎回違ってもいいし、むしろ毎日変わってください。同じ事は許しません』とお願いしています」と、今回の作品の課題を語った。
舞台が久しぶりだという藤井は「一番舞台経験がないので、こんなに舞台って生きているんだなって感じていて、私も心配性なので決めてかかりたかったんですけど、それは許されないんだなと思っています」と、久々の舞台に求められるものの大きさを語った。
記者が藤井に内を指して「いい男でしょ?」と問いかけると、内が「なんでやねん!」と割って入り会場が和んだ。さらに前田からは、「今回、本当に最高の魅力が出ていると思いますよ。若い頃の本当に可愛らしいところから青年になって、本当にいい感じになっていますよ」と内の素晴らしさを語った。
Endless SHOCKで前田と内が競演しているという話題になると、白井より「カンパニーのみんなは今回、内くんとははじめての人ばかり。前田さんは本当にお母さんのようで、それが舞台にも生きています」と二人の関係が密であることを明かした。
「プレスコールで演じた台詞の『夜は狼男』は内にピッタリでは?」という問いかけに対して、内は「いやいや、それは違います。そらね!草食ではないですよ。オオカミ言うほどでも・・・プードルくらいじゃないですか?(劇中に)濃厚な大人のシーンもあります(笑)」と、茶目っ気たっぷりに答えた。
前田と白井から「膨大な台詞量にもかかわらず、飄々としていている」と言われた内。「そういう風に皆さんから言われるんですけど、めっちゃ焦っているんです!」と答えるも、すぐに白井から「いや、陰で努力していないです。台本を稽古場において行きますから!」と暴露され「バレてる!!!」と焦る表情に。
「それは日々頭を真っ白にして稽古場で集中するためだ」とフォローされたにもかかわらず「ホントすみません」と素直に反省していた。
内演じるペールが母親を担ぐシーンについて、前田が恐縮すると内は「全然重くないですよ。SHOCKの殺陣のシーンで付ける甲冑くらいの感じです」と答え笑いを誘った。
一方前田は「親子喧嘩のシーンで抱えられて嬉しいのでは?」という問に「そんなこと考えている暇はないです。怒り狂っているので。毎日生傷が絶えないです」と役に集中している様子が伺えた。
座長としての意気込みを求められた内は「本当に素晴らしい作品に仕上がったなと感じておりますし、手ごたえも感じております。みなさんが見たことのない舞台になったと思いますので、ぜひ劇場で楽しんでいただけたらなと思います」と締め、会見は終了。
だが会場を出る際に記者より「新聞の見出しは、夜はプードルだね」といわれた内。「プードル・・・チワワでもいいですよ」と笑顔で会場を後にした。
プレスコール
夢見がちな男ペール・ギュントは、純情な女ソールヴェイと恋に落ちるが、穢れのないソールヴェイにふさわしい自分自身を見つける事が出来るまで、彼女を待たせたまま放浪の旅に出る。砂漠から嵐の海まで世界各国を遍歴した後、老いて帰郷し、そこで死神の使者であるボタン職人と名乗る男と出会い、自分の人生の無意味さに気づかされてしまう。そして疲れ果てたペールはずっと待っていたソールヴェイのもとに辿り着く・・・・。
公演概要 『ペール・ギュント』
公演日 2015年7月11日(土)~20日(月・祝)
会場 KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
作 ヘンリック・イプセン
構成・演出 白井晃
翻訳・上演台本 谷賢一
音楽・演奏 スガダイロー
振付 小野寺修二
【出演】
内博貴
藤井美菜 加藤和樹 堀部圭亮 橋本淳 三上市朗
河内大和 小山萌子 桑原裕子 辰巳智秋 瑛蓮
宮菜穂子 皆本麻帆 荒木健太朗 青山郁代
益山寛司 高木健 チョウヨンホ 間瀬奈都美 大胡愛恵 薬丸翔 石森愛望
前田美波里
【演奏】
スガダイロー(Composer, Piano) 東保光(Bass) 服部マサツグ(Drums)
Tyme. /Tatsuya Yamada(dub mix, music effect)
☆アフタートーク出演者が決定!
開催日(各公演終演後)
■KAAT公演
7月17日(金)14:00 白井晃+加藤和樹+藤井美菜
7月19日(日)18:00 白井晃+加藤和樹+スガダイロー
■兵庫公演
7月25日(土)18:00 白井晃+加藤和樹+橋本淳