三島由紀夫の最後の戯曲『ライ王のテラス』が、3月4日より上演スタート。公開を控えた前日の3日、マスコミに向けて囲み取材と公開ゲネプロが行われた。囲み取材には、主演の鈴木亮平と演出を手がける宮本亜門が出席した。
本作は、カンボジア最強の王として現代にも語り継がれる、ジャヤ・ヴァルマン七世王がバイヨン寺院を建設していく雄大な愛とロマンを描いた物語。
初日を目前に迎え「やれるだけのことはやってきたので、あとは本番に臨むだけ。本番でしか出ないマジックみたいなものを信じて、さらにいいものになればなと思います。もう王様の気分です!」と意気込んだ鈴木。
一方の宮本も「鈴木さんは、毎朝ジムに行って(体を鍛え)、稽古場にも誰よりも早く来て、たくさんのセリフも覚えて・・・本当にやるだけのことはやったというそのもの。すごく面白い舞台になっていると思うし、三島さんに観せたいな!と思う『ライ王のテラス』になっていると思います」と自信を見せた。
「三島由紀夫の人生の想いや体験、自問自答などがギューギューに入っているので、それを舞台にするのは本当に難しい作品。俳優さんたちも、セリフの深みを自分の言葉として表現することは葛藤の日々」と、舞台に仕上げていく苦労を語ると、鈴木も「現代劇とは違う重厚な言葉回しに、どう感情を乗せて共感していくのかが一番難しかったですね」と、コメント。「長ゼリフが9個あります!」と明かすと、宮本が「数えたの?数えちゃダメなんだよ、長ゼリフは。プレッシャーになるから(笑)」とツッコミ、会見場の笑いを誘う場面も。
また、最強の王を演じるために肉体美にもこだわったという鈴木は「完璧な美しい体を持った王様という役なので、4カ月かけて作り上げました」と言いつつ、「まさかこの格好で記者会見することになるとは夢にも思わなかった」と苦笑い。「共演者が驚かないように稽古場から脱いで、慣れてもらうようにしました(笑)」と共演者を気遣った様子。
「三島由紀夫も、この筋肉には嫉妬してると思いますよ」と宮本も絶賛すると、「戦士である王。戦いから帰って来たばかりの肉体を目指しました」と胸を張った。
さらに「この王様は、カンボジアの歴史、王国を全部変えていこうとする凄い頭のいい人。体の筋肉だけでなく心の筋肉もつけてもらうように努力してもらった」と宮本。
鈴木にとって三島由紀夫は?と問われると、「三島さんは天才。とうてい敵わない人」と答えた。宮本は「三島さんは文学者なんだけれど、肉体を知っていて演劇が分かっていて、生の人間と頭の中を見事に両立して(表現できる)珍しい人。だから、今作は舞台であるけれど文学なんです。聞いていても面白いし、観ていても面白い。人間の本質の見たくないところまでもえぐり出す、三島さんの魅力の深さをぜひ楽しんでほしいです」と力強くアピールした。
続けて、鈴木が「劇場に入って、亜門さんの演出の照明や音楽が入ると、本当に中世カンボジアに来たような感じがして、それはびっくりしました」と、舞台の魅力を語り、「特に今回、実際に亜門さんがカンボジアでオーディションをして呼んだ、カンボジアのダンサーの方からサーカスの方まで、超一流のパフォーマンスには本当に感動します」と絶賛。さらに「自分が登場するところまでは客席で観たんですが興奮しました。王様が、つまり自分が、影絵で登場するんですけど、それを見て『うわー!王様!』ってなりましたね。僕なんですけど・・・(笑)」と、うれしそうに付け加えた。
追加公演まで決定し、大きな注目を集めている本公演。宮本氏が「これはスタート。世界中の人にも観てほしいと思っている」と話すと、鈴木は「(次は)世界へ行きましょう!」と意気揚々。「でも、まずは日本で成功させないとね」と晴れ晴れとした笑顔をみせる。
宮本は「シリーズ化するんじゃないのって変な噂が流れているけど、これは鈴木亮平の世界遺産第1作じゃありません!(笑)。三島由紀夫の文学がぐーっと入って、カンボジアの良さも日本の良さもギュウギュウ詰めに入っている作品です。ぜひ劇場に観に来て、体感してください。熱いです!」と、メッセージを伝え、会見を終了した。
囲み会見のあとに公開されたゲネプロでは、二人が語った通り、カンボジアの雰囲気たっぷりにスタートし、その世界へ誘っていく。伝統的なダンスやパフォーマンスが物語の要所に取り入れられ、ここが日本であることを忘れる。
強く美しい王様。そして、彼を取り巻く人々の葛藤にも注目。献身的に王を支える第二王妃、冷血で美しさにしか興味のない第一王妃にも苦悩があった。また、母親としての王太后の心とは・・・。病気が進行し、追い詰められていく王様。ラストで見せる精神と肉体の対話は感動なしでは見れないだろう。
舞台『ライ王のテラス』
2016年3月4日(金)~3月17日(木)
3月15日追加公演あり 全17回公演
会場:赤坂ACTシアター
チケット料金(税込)S席9,800円、A席7,800円、U‐25席5,500円
主催:TBS/ホリプロ
共催:国際交流基金アジアセンター
企画制作:ホリプロ
日カンボジア絆増進事業
公式HP:http://hpot.jp/stage/raiou