2008年赤坂ACTシアターのこけら落とし公演として中村勘三郎が第1回を行ってから7年。
今年4回目を迎える『赤坂大歌舞伎』の演目は、中村勘九郎の『操り三番叟』と中村七之助が七変化する『お染の七役』。
歌舞伎の通から初心者まで楽しめる公演が行われる。
華やかなパネルの前に登壇したのは、左から八木康夫(株式会社TBSテレビ 執行役員)と中村七之助、中村勘九郎、安孫子正(松竹株式会社 取締役副社長)。
八木から『赤坂大歌舞伎』の歴史を、安孫子から『劇場ごとの歌舞伎』についての話の後、中村勘九郎が挨拶に立った。
勘九郎:父が残してくれた財産のひとつである『赤坂大歌舞伎』を今年もできるという喜びで、今、いっぱいです。この七年間、いろいろなことがありましたが、非常に早かったです。赤坂ACTシアターを歌舞伎座でやっている歌舞伎を演出を変えずにできる貴重な劇場です。今回『操り三番叟』と『お染の七役』の2つを選びましたが、歌舞伎の初心者から良く観て頂いているお客さままで楽しめる演目になっておりますので、どうぞよろしくお願い致します。本日はまことにありがとうございました。
七之助:今回また赤坂の地に戻ってこられたこと、本当に嬉しく思っております。今回はある意味、挑戦だと思っております。これまで1~3回は『狐狸狐狸ばなし』があったり、(山田洋次監督補綴の)『文七元結』があったり、早変わりと分かりやすくて面白いものがあったのですが、今回は古典です。この公演が何を持って成功かはわからないのですが、ご好評をいただけたら『ACTシアターではこんな演目もできるんだ』という可能性が広がる9月の公演だと思っています。一生懸命、千秋楽まで気を引き締めてやらせて頂きます。
「この演目を選んだ理由は?」という質問について
勘九郎が「赤坂という土地もあって、歌舞伎を初めてご覧になるお客さまが大変多いのです。初めて観るのは、とても大事だと思います。最初につまらないものを見たら、それから嫌になってお芝居に来なくなるということもあるので、分かりやすいもの、そして古典を大切にしたいと言う気持ちは父から受け継いでいるので、その中でも分かりやすいものは何かないかと『操り三番叟』です。三番叟というのは、とてもおめでたい舞踊のひとつです。五穀豊穣を祈った踊りで、それに操りがついているので、ちょっとコミカルになっています。肩の力を抜いて観られる、『お染の七役』の前菜のような、そうなるといいなと思っています」と笑いを誘うと
七之助は「今回は演目でとても悩みました。『お染の七役』は『怪談乳房榎』よりも早変わりとしては早くありません。何を観るかというと、七役演じ分けるのが最大の見どころだと思っております。ストーリーもそこまでありませんが、役を自分の中でどう演じ分けるというよりもその役になっているか…ということがミソだと思っています。今回、これをやることで花道を付けられるということも分かりましたし、可能性のふくらむ公演になると思います」と生真面目な回答。
七之助にとって『お染の七役』は、坂東玉三郎から「毎日稽古をして、台詞の出し方から1から教わった」思い入れのある演目。「玉三郎さまに習ったとおり、自信を持ってやろうと思います」と表情を引き締めた。
一方の勘九郎は「三番叟の額の赤坂の文字」について尋ねられると「操り三番叟の隈は結構自由なんです。こないだやらさせて頂いたのは12月だったのですが、クリスマスツリーを描いたり、いろいろしました」と思いがけない歌舞伎の自由さを教えてくれた。
赤坂芸妓から花束を贈られた二人は『赤坂大歌舞伎』への意欲を新たにしたようだった。
公演概要 『赤坂大歌舞伎』
日程 :2015年9月7日(月)~9月25日(金)
会場 :赤坂ACTシアター
チケット:S席11,500円 A席8,000円 B席4,000円(全席指定・税込)
※未就学児童入場不可 (A席:2階中通路より後方、B席:最後方2列)
チケットに関するお問い合わせ サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)
演目
一、操り三番叟 長唄囃子連中
能楽の儀式舞踊である「三番叟」を基に、数多くの三番叟物と言われる作品が誕生しました。
『操り三番叟』はそのひとつで、糸繰りの人形が三番叟を踊るというユーモア溢れる趣向で楽しい舞踊となっています。
前半は翁の荘重さと千歳のしとやかさで品格ある厳かな踊りが主眼となります。
そして後見が人形箱から三番叟を取出すと、あたかも糸で操られているかのように踊り出します。
次第に糸が絡まり、切れ、動かなくなった三番叟を後見が糸をつなぐと、魂が宿ったかのように、
ますます鮮やかに、手ぶり足ぶりも面白く舞い続け、五穀豊穣を祈ってめでたく舞い納めとなります。
三番叟 ・・・・・ 中村 勘九郎
千歳 ・・・・・・ 坂東 新 悟
後見 ・・・・・・ 中村 国 生
翁 ・・・・・・・ 坂東 彌十郎
四世鶴屋南北 作 渥美清太郎 改訂 於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)
ニ、お染の七役 三幕七場
浄瑠璃「心中翌の噂」常磐津連中
「お染の七役」は、宝永年間に大坂で実際に起きたお染と久松の心中事件を題材に、
物語の舞台を大坂から江戸に置き換えた作品です。
質屋油屋の娘のお染と山家屋清兵衛の縁談が進められている中、お染には久松という言い交した相手がいます。久松にもお光という許嫁があり、元は武家の子息で紛失した御家の短刀と折紙を捜しています。姉の竹川も久松の身を案じ、短刀の探索の金の工面を土手のお六に頼みます。お六と亭主の鬼門の喜兵衛は油屋で金を騙し取ろうとしますが…。
お染、久松、小糸、貞昌、土手のお六、お光、竹川という七役の早替りや、南北特有の世話場、
また常磐津による所作事と、見どころに溢れた南北の名作をお楽しみください。
油屋娘お染 ┐
丁稚久松 │
許嫁お光 │
後家貞昌 ├ ・・・・ 中村 七之助
奥女中竹川 │
芸者小糸 │
土手のお六 ┘
鬼門の喜兵衛 ・・・・・ 中村 勘九郎
油屋多三郎 ・・・・・・ 坂東 新 悟
船頭長吉 ・・・・・・・ 中村 国 生
腰元お勝 ┐
女猿廻しお作 ┴ ・・・ 中村 鶴 松
庵崎久作 ・・・・・・・ 片岡 亀 蔵
山家屋清兵衛 ・・・・・ 坂東 彌十郎