12月1日(土)から新橋演舞場にてシリーズ3作目の『喜劇 有頂天団地』が開幕。初日に先立ち11月30日(金)に囲み取材とゲネプロが行われた。囲み取材には渡辺えり、キムラ緑子が登壇。描かれた昭和への思いと本作の見どころを語った。
キムラ緑子 渡辺えり
『喜劇 有頂天団地』は『喜劇 有頂天旅館』『喜劇有頂天一座』に続く“有頂天シリーズ”第3弾。昭和53年に『隣人戦争』として初演された小幡欣治による喜劇作品で、物語の時代背景も昭和53年(1978年)。
高度成長の勢いを受けたバブル前、“一億総中流”ともいわれた意識が日本中にひろまった時代を背景に、郊外の6棟の建売住宅に越してきた“新住民”と、以前からこの土地に住んでいる“先住民”の対立、ご近所への見栄や嫁姑問題などをリアルに人間味豊かに描き出す。
新住民の主婦に渡辺えり、キムラ緑子をはじめ、西尾まり、久世星佳、明星真由美ら。渡辺の舅に笹野高史、キムラの姑に広岡由里子。先住民に鷲尾真知子と芸達者が揃った。
【囲み取材】
シリーズ3弾とはいえ、作家と演出家が変わり、新たなキャストが加わってこれまでとは違ったテイストになった本作。渡辺もキムラも口を揃えて「新鮮だ」と語る。2人の役柄は専業主婦。そのスタイルについて渡辺は「菊池桃子さんのイメージでフェミニンな感じ。 見栄を張って、団地の奥様たちに嘘ばかりついている役です」と笑う。真顔になると「昭和53年は自分が23歳の時。母親たちの考え方に真っ向から反対していた頃ですが、その母親役を演じています。私にとっては母親の嫌だと思っていた部分をやらなければならないので、気持ちとして闘いです」と複雑な思いを明かした。
対するキムラは「(演じている主婦は)長山藍子さんの若い頃のイメージ。(当時は)男尊女卑の考え方があった。子供を育てるために女の人は・・・という時代。台本はとても面白いのですが『女のクセに』という台詞にえりさんが異常に反応して」と明かしつつ「観客には懐かしいと思ってもらえると思います」
当時の70歳といえば老人のイメージだったが、現在では違う。70歳の現役バリバリの俳優・笹野高史が当時の70歳を演じる姿や、鷲尾真知子の先住民の演技も見どころとなりそうだ。
【ゲネプロ】
客席に足を踏み入れると当時のヒット曲…ピンクレディー、キャンディーズ、沢田研二、原田真二…が次々流れ、観客を昭和へと誘う。
幕が開くと、そこは6軒の戸建て団地。 その一軒に集まった新住民たち。
以前から住む先住民が苦情を言いに来ると心配しつつ待ち構える。
やってきた先住民からは、洗濯物の干し方からごみの出し方まで厳しく指摘される。
それはどこでもありがちな“ご近所あるある”。 今でもありがちなことには、ドキリ。
明治49年生まれの舅は、幼くして職人となったため、引退後小学校へ楽しく通う。
その姿に庶民の歴史を感じる。
キムラ演じるくに子の姑を演じるのは広岡由里子。
やはり嫁姑問題ははずせない!
今よりもずっとご近所付き合いは濃厚だった昭和という時代。そこにはつながりが密だった分、笑いも涙も喜びもたくさんあったのだろう。
そんな“昭和あるある”に笑いをふんだんまぶした『有頂天団地』。
さて、新旧住民の対立は如何に決着するのか? 嫁姑問題は? そして幸せに住民たちは暮らしていけるのか?
公演は12月22日(土)まで新橋演舞場、1月12日(土)~27日(日)は京都・南座にて上演。
(公演終了につき、舞台写真の掲載を終了しました)