2019年1月10日にサンシャイン劇場にて少年社中「トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~」が開幕。初日の幕開け前に公開ゲネプロと囲み取材が行われた。
『トゥーランドット』といえば、プッチーニのオペラが有名だ。トゥーランドット姫は絶世の美女で、その姫と結婚するには彼女が出す3つの謎を解くかねばならない。解けない男は斬首される。次に求婚者に名乗りをあげたのは、姫に一目ぼれしたカラフだった…という物語だが、本作では物語の舞台を未来の平和ではあるが、平和を脅かす思想を持つ者は即刻処刑される厳しく管理された社会に設定。不思議に妖しくきらめく世界観を生み出した。
遠い昔に禁じられた「演劇」で世界を変えようとする少年、カラフ(松田凌)
カラフは姫と出会い、2人は運命の恋に落ちる。
そして世界を変えるために「トゥーランドット」という芝居を上演しようとする。
美しくも危うい世界で、情熱をほとばしらせて演劇を作っていこうとする若者たちの姿が、ダンス・殺陣、そして謎めいたセリフを交えて描かれていく。
続々登場する個性的な人物。そして、その誰もが不思議な影を背負って、この世界を生きている。
彼らはこの世界を変えることができるのか。彼らの作る「トゥーランドット」とは?
囲み取材には本作の脚本・演出の毛利亘宏(少年社中主宰)、本作のW主演である生駒里奈、松田凌と、少年社中劇団員の井俣太良の4名が登壇した。
ー初日を迎える心境をお願いします。
生駒:ついに初日を迎えるんだなというワクワクを感じています。「演劇で世界を変える」というスローガンのもと、稽古からたくさんのことを考えて、たくさんのことを作ってきて、そのことについてみんなで一生懸命みんなでやってきました。それが見てくださった皆様に、思いとして形として伝わればいいなと思います。それがしっかりできたらいいなと思っています。
松田:生駒ちゃんも言ってくれたように「演劇で世界を変える」という大きなものを掲げて、今回はサンシャイン劇場という板の上に立つわけなのですが、ご来場していただいたお客様に、少しでもいいので、何か毎日に変化を与えられる芝居になればいいいかなと思います。そして、新年一発目の公演なので、世知辛い世の中ですけど、明るくドカンと、祭りのように、みんなに楽しんでもらって、みんなに涙してもらって、持ち帰ってもらえたらいいなと思います。そのために自分たちは舞台の上で全てをかけてお芝居しますので、ぜひとも一度ならず二度ならず、劇場にまずは足を運んでいただきたいなと思います。
井俣:20周年記念のファイナルという形でやらせていただいて、ずっとみんなと稽古をして、本当にすごいものが出来上がったんだなという強い手応えを感じています。「演劇で世界を変える」という、挑戦的かつでもシンプルなメッセージで、気付ける何かを感じて頂けたらと思います。本当に少年少女の彼ら2人(生駒と松田)が、感情をほとばしらせて走り回る姿がすごく愛おしくて、僕も本当に感無量の気持ちでおります。
毛利:本作は少年社中20周年記念のファイナルとして行いますが、私としてはこの作品を作るために20年やってきたんだなと、そう強い手応えを感じております。良いモチベーションで今日まで全員で稽古に臨みまして、質の高い作品に向けて研鑽を積み重ねてこれました。あとは演劇にとって一番大切な、お客様という最後のパーツをお迎えして、この作品が本当に爆発するのではないかと、すごい作品になるのではないかと、自信を今、確信に変えております。
ーご自身の役柄や稽古を踏まえて見どころ、注目のポイントを教えてください。
生駒:様々な見どころがあるんですけど、私自身が演じるトゥーランドットの気持ちの変化が見どころかなと思います。私の気持ちが変わるということも「演劇が世界を変える」ということになるのではないかなと思うので、そういうところも楽しみに見ていただけたらと思います。
松田:僕、今、「しっかりしなきゃ」と思っているのですが、お三方の話を聞いていると、すごく幸せな気持ちになってきて。演劇に対してもお芝居に対しても、幸せな思いを持った人たちが作り上げた舞台はめちゃくちゃいいなと、今思ってしまっています。こういう人たちがつくったお芝居、輝いたものがあると思ってもらえると思います。見どころしかないですね。強いていうなら、ダンスがあります! 生駒大先輩を筆頭に鍛錬を重ねました。今回は3名の振付け師の方に素晴らしい振りを付けていただいて、とても魅力的だと思うので、注目していただけたら嬉しいと思います。
井俣:お芝居の根幹はこの2人のほとばしる芝居なんですけど…少年社中が積み重ねてきた物語の一つひとつであったり、美術、衣装、ヘアメイクなど煌びやかな、ずっと僕たちの世界観を支えてくださっているスタッフさんたちのスタッフワークにも注目いただきたいです。今回、最高峰を作ってくださったなと思うので、見ていただきたいなとも思います。
ーー過去にも少年社中の作品に出られていますが、劇団の雰囲気はどういうものですか?
生駒:実家……そう言っていいですか?(笑)
毛利:言っていいですよ(笑)
生駒:ただいま~(笑)。いつも助けていただいています。前回出た時は教えて頂くことばかりで、今回は自分の何かを…と思ったのですが、まだまだ教えていただくことばかりでした。ゲネをやっていると沸々と沸き出る気持ちがあった。そういう気持ちにさせてもらえる素敵な場所だと思います。
松田:実家以上の言葉が出てこないです…。(笑) 本当に良いパートナーに出会ったと思いますが…僕にとっては人生の節目ですね。毛利さんをはじめ、少年社中はいつも節目を与えてくださっています。初主演作(『ミュージカル『薄桜鬼』〜斎藤一篇〜』)が毛利さんの演出で、このサンシャイン劇場だったので縁を感じつつ、前回もサンシャイン劇場で(少年社中『パラノイア★サーカス』)ご一緒させて頂いた。三度目の正直じゃないですが、今回をもっと大きな人生の節目にしたいなと思っています。この劇団に出会って、この作品に出会って、僕は確実に進化していると思います。かならず今回もそうです。
ーご自身にとって演劇とは、一言で表すと何ですか?
井俣:祭り…じゃないかと。今の僕の中ではみんなが集まって、楽しくやって、集まってくる人も楽しんでもらえる。
松田:命ですかね。軽々しいと思われてしまうかもしれないですけど、毎日いつどうなるかが分からない中で、唯一自分が本当に命を賭けられるものは何ですかと言われたらここしかない。
生駒:宇宙。例えば役について、その役をどういう気持ちでと考えると、なぜ宇宙に来たんだろうというところに行き着く。それくらい縦も横もないし、奥もないし、上も下もない。だけど見えるものだと思うので、宇宙かなと思います。
毛利:人間だと思います。作る側・見る側たくさんの人間が、人間を理解するために集まってくる。そういう場所なんだろうなと思います。
ー「演劇で世界を変える」という印象的言葉ですが、少年社中を始められてから、今、何%ぐらい世界を変えられていると思いますか?
毛利:それは話そうと思っていたことですけど、演劇で世界は変わらないと思います。それゆえにこのテーマを掲げたと言っても過言ではなくて…。変えられるのは、たった一人のお客さんの心。ここに来ていただいたお客様の気持ちが少しでも動いてくれたら、少しでも明日、その人が出会う人たちが幸せになってくれるかもしれない。そうしたらそれがまた広がっていくかもしれない。すごく大きなことを言っていますけれども、たった一人のあなたに何か感動してほしくてやっているという感じです。大言壮語を吐いてみましたが、やりたいことはものすごくミニマムで、あなたの明日を世界を変える。それが世界を変えるということにつながっていったらいいなと思います。
Ⓒ少年社中
少年社中「トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~」
脚本・演出:毛利亘宏
出演:
井俣太良 大竹えり 岩田有民 堀池直毅 加藤良子 廿浦裕介
長谷川太郎 杉山未央 山川ありそ 内山智絵 竹内尚文 川本裕之
生駒里奈 松田凌 / 有澤樟太郎 赤澤燈 ザンヨウコ
馬場良馬 鈴木勝吾 / 藤木孝
【東京公演】2019年1月10日(木)~20日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】2019年1月24日(木)~27日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【福岡公演】2019年1月30日(水)・31日(木) ももちパレス