6月7日(金)初日の東京・Bunkamuraシアターコクーンを皮切りに、兵庫、愛知、長崎、久留米で上演される青木豪脚本書き下ろし、河原雅彦演出による新作舞台『黒白珠』の稽古を5月半ばに訪ねた。
舞台『黒白珠』は1990年代の長崎を舞台に、双子の兄弟を中心に、運命にもがきながら紡がれてゆく家族の愛と葛藤のドラマを描く。
兄弟役には兄・信谷勇を松下優也、弟・信谷光を平間壮一、2人の父親を風間杜夫が演じる他、清水くるみ、植本純米、村井國夫、高橋惠子という魅力あふれるキャストが集まった。
左から)青谷優衣 松下優也 村井國夫 平間壮一 風間杜夫 清水くるみ 平田敦子
取材したのは、この日の稽古の終盤。公演まで3週間近くあるというのに、一幕の通し稽古をするとの知らせに驚いていると、河原から「精一杯やってくれたらいい。怪しいところは本を持ってやってくれたらいいから」と優しい声がかかり、稽古がスタートした。
(以下では、あらすじなどネタバレを含みます)
冒頭は高校卒業後、職を転々とする勇(松下優也)と恋人の松原花苗(清水くるみ)が、 昨夜見た夢を話す場面。驚いたのは、台詞が長崎弁!(この日の稽古も方言指導の方がつきっきりで見守っていた)
長いシーンではないのだが、このワンシーンからだけでも花苗の勇への優しさや、勇の内面の純粋さが伝わってくる。会話劇の上手さに定評のある青木豪の作ならでは…と思っていると、若いふたりの情熱を感じさせるシーンもあってドキドキ!!
そこに真珠の加工・販売会社を経営する勇の父・信谷大地(風間杜夫)が、東京の一流大学に進学した双子の弟光(平間壮一)と共に帰宅してくる。
勇の恋人を見た父・大地の喜びようとは対照的に、兄弟に流れる微妙な空気感が、一瞬でわけありそうな家族関係を感じさせ、目が離せなくなる。
花苗が働く伯母・吾妻久仁子(平田敦子)のレストランでの勇との3人のシーンでは、久仁子と花苗の掛け合いが気の置けない伯母と姪のリアルさにあふれ、稽古場中が笑いに包まれた。と同時に、花苗の将来を心配する久仁子の内心の吐露には、現実を突きつけられる。
仕事を引退した須崎英光(村井國夫)と頑張り屋の娘の須崎沙耶(青谷優衣)も、短い会話から人物像がくっきり。信谷家との関わりも分かりやすく描かれる。
光と須崎たちが一緒の場面に突然、薮木三郎(植本純米/写真右)という男が、母・純子(高橋惠子)についての知らせを携えて現れる。
母について何も知らなかった光。
秘密の香りを漂わせる母(高橋惠子)。
信谷家の過去とは?緊張感が一挙に高まって…
これまで触れないできた母親について、初めて話し合う兄弟。
性格も生き方も違う2人が向き合う瞬間にほとばしる熱量!! 是非、生で感じて欲しい。
どこにでもいそうな人たちの、誰でも「ある!ある!」と思えるような日常の風景に笑いを散りばめて描きつつ、見え隠れする危険な香り。
2幕からどういう展開が待っているのか…。公演が待ち遠しい。
一幕最後まで稽古を黙って見守り続けていた河原。
通し稽古が終わって間もなくは、こちらの表情。
河原は俳優ひとりひとりと丁寧に確認を繰り返しつつ話をしていく。
「上手くやろうとしないで。イキイキとリラックスした言葉が“日常の言葉”なのだから」という言葉が印象的だった。
これまでの舞台ではミュージカルでの印象が強い松下優也、平間壮一、清水くるみが、丁寧に人物像をつくり、微妙な心の動きを繊細に表現するストレートプレイに体当たりで挑んでいた。等身大のキャラクターが、演技であることを忘れさせるリアルさで迫ってきた。
そして村井國夫、高橋惠子、風間杜夫というベテラン俳優たちが彼らを包んで、軽快に物語をすすめていく。
家族という普遍的なテーマと、その影にひそむドラマを描く公演は、6月7日(金)Bunkamuraシアターコクーンを皮切りに、全国5か所で上演される。
『黒白珠』 KOKU BYAKU JU
脚本:青木豪
演出:河原雅彦
<出演>
松下優也
平間壮一
清水くるみ
平田敦子
植本純米
青谷優衣
村井國夫
高橋惠子
風間杜夫
<公演日程>
東京公演 2019年6月7日(金)~23日(日) Bunkamura シアターコクーン
チケット料金(東京公演)
S席¥10,000円 A席¥8,500 コクーンシート¥5,500(全て全席指定、税込)
※ コクーンシートは、特にご覧になりにくいお席です。ご了承のうえ、ご購入ください
シニア割ペアチケット(2名1組) ¥15,000円(当日座席引き換え、税込)
※ ぴあ、イープラス、ローソンチケットにて販売
※シニア割ペアチケットは1枚につき、来場者の1名以上が60歳以上のペアに限り、
開演の60分前よりシニア割ペアチケット引き換え受付にて、隣同士のS席2枚の座席指定席券とお引換します。座席の指定はできません。引換時に年齢確認ができる身分証明書を必ず提示ください。
兵庫公演:6月28日(金)~30日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
愛知公演:7月6日(土)~7日(日) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
長崎公演:7月10日(水) 長崎ブリックホール 大ホール
久留米公演:7月13日(土)~14日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
企画・製作:キューブ サンライズプロモーション東京
キューブHP https://kokubyakuju2019.wixsite.com/official