7月1日(月)《現地時間》、女優の米倉涼子がアメリカ・ニューヨークに帰ってきた。ミュージカル『CHICAGO』にロキシー役で3度目となるブロードウェイの舞台に立った。さらに今回、劇中の名曲「ロキシー」の録音にも挑み7月26日、世界デビューを果たす。また同曲は来日ツアーに合わせて再発売される日本盤CDのボーナス・トラックとしても収録されることが発表された。ブロードウェイで新たな境地を開いた日本人女優にアメリカ演劇界が沸いた。
ミュージカル『CHICAGO』は、禁酒法が施行されていた1920年代の米シカゴが舞台。愛人を殺した悪女ロキシーは獄中生活の最中、一世を風靡したヴェルマと出会い意気投合する。そして出会った悪徳弁護士のビリーとマスコミの力を借りて裁判に挑む物語。
同作品は1997年に米演劇界で最高の権威を誇るトニー賞で最優秀リバイバル・ミュージカル作品賞を含む6部門を獲得しブロードウェイでロングラン記録を持つ作品となった。
劇場の入り口には“米倉涼子、ブロードウェイに舞い戻る”と英語で書かれたビルボードが観客の目を引きつける。さらには劇場で配布されるプログラムには「世界中で成功を収めた『CHICAGO』は日本のスーパースターのリョウコ・ヨネクラを歓迎する。観客を魅了するんだリョウコ!」と激励のメッセージが添えられている。
今年はミュージカル『CHICAGO』がアメリカ内でも注目されている。同作品の生みの親である巨匠ボブ・フォッシーとブロードウェイ初演のロキシー役を演じた妻グエン・ヴァ―ドンとの歩みや、『CHICAGO』誕生までの葛藤が丁寧に描かれた連続ドラマ『フォッシー/ヴァ―ドン』がテレビ放送されたからだ。多くの視聴者から舞台を観たいという声が起こっている。
この日、世界中から来た観光客や、目の肥えたニューヨーカーで埋め尽くされた。主演ロキシー(米倉涼子)が登場すると観客から拍手が沸き起こる。笑いなどの反応も同作品が通常上演されるのと同じタイミング。同じステージに立ってきた他のロキシー役の大女優が出演する場合と一切変わらないステージとなった。
劇場を訪れた観客は米倉涼子演じるロキシーに、“アメージング”、“エクセレント”、“グレート”、そして“ワンダフル”という称賛の言葉で口を揃える。オーストラリアから来たという女性は、「リョウコが特段目立って素晴らしかった」と。カナダから来たという女性二人組は「カーテンコールで紹介されるまで日本人だと気が付かなかったが、とにかく素晴らしかった」と言う。またアリゾナ州からの学生たちは「リョウコが役にピッタリで、役を自分の物にして完璧にこなしていたので、また彼女が観たい」と興奮気味に語った。
初日を終えた米倉涼子は、「キャストがウェルカムで迎えてくださり、いつでも力になるからと言ってくれて、本当に素敵なカンパニー」と、ブロードウェイに帰ってきたことを実感した。「2012年、2017年の時とは違う緊張感があって、色々な想いが今回はあった。『CHICAGO』とずっと関わっていたい。(同役を演じるようになって)気がついたら10年以上が経っているが、それだけの歳月を使って役を深く知ることができ、演じることが楽しくなってきている。私にとって『CHICAGO』はミュージカルの中で一番好きな作品であり、夢でもあり、今日は舞台に立てて本当に嬉しい」と初日の感想を述べた。音楽配信での世界デビューについて聞かれると「なぜ私がという感じだったが、ありがたい経験だった」と大先輩を前に控えめに答えた。
コンビを組むヴェルマ役のアムラ=フェイ・ライトは米倉涼子について「CHICAGOは人生を映し出す鏡のようなもの。毎回彼女が来るたびに良い意味で変わっていっている。自分の個性を反映させた役作りをしていて、面白くて、我慢強く、そしてにじみ出る優しさが生かされている。年齢を重ね、人生経験を積み、それも活かされて“進化”している。」とコメントした。
ブロードウェイの舞台に立つには実力だけでは叶わない狭き門。
ここで3度にわたり主演を務めた米倉涼子がアメリカ演劇界に残した功績は大きい。
NYブロードウェイでの出演は7月14日まで続く。その後、8月から日本公演が開幕する。
2019年8月1日~8月4日 [大阪]オリックス劇場
2019年8月7日~8月18日[東京]東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
公式ホームページ www.chicago2019.jp
写真:© MASAHIRO NOGUCHI