作・飯島早苗、演出・鈴木裕美により、1993年に「自転車キンクリート」で初演されて以来、これまで、さまざまな演出家、キャストによって上演されてきた名作『絢爛とか爛漫とか』。8月20日(火)から9月13日(金)まで、21年ぶりに鈴木裕美による演出でDDD青山クロスシアターで上演される。
演じるのは、演出を担当する鈴木裕美が“がっつり芝居ができる”と見込んだ安西慎太郎・鈴木勝大・川原一馬・加治将樹という4人。
物語は昭和初期、春・夏・秋・冬という四季折々の風情を背景に、夢と才能、理想と現実に葛藤する若き文士たちの姿を描く。
8月上旬に、その稽古場を訪ねた。
稽古開始前のウォーミングアップは、お絵かきゲーム。鈴木裕美が選んだ言葉を、2人1組で一人が絵を描き、1人が当てるゲーム。
「コンビニ」「オタク」、はたまた「ナイーブ」という抽象的な言葉も選ばれる。「絵で描くのは無理では?」という問題にも、果敢にチャレンジする皆さん。
例えば… この時の答えは「哲学」! 真剣勝負です。
正解が出る度に大いに盛り上がり、頭も身体も柔軟になったところで稽古が始まりました。
この日、稽古していたのは春・夏・秋・冬の秋の一幕。起承転結という流れでいうならば、転に当たる部分でしょうか。
初めに鈴木裕美から示されたこの日のポイントは「前半は気持ちをつなげていくこと。そして、今日は幕の最後まで通すので、『今はこの人は何がしたくて、今日は何をするつもりで、他人のことばを聞くとどうなっちゃうか』というところを「何が起こるか」の方にデリケートに注意を払ってやってもらえるといいなと思います」。
冒頭、(左から)非凡な才能を持ち自由に生きる諸岡(加治将)、自称耽美小説家・加藤(川原一馬)、そして2作目が書けず悩む新人小説家・古賀(安西慎太郎)に拍手喝采で迎えられたのは・・・
モダンボーイ・泉(鈴木勝大)のヴァイオリン演奏。
生演奏です!!
その演奏への意見をきっかけに、4人はに大いに飲み、大いに語り合います。文学について・女性について…。
気の合う男子4人のおしゃべりは、率直で自由。かっこをつけてみるものの、互いを知り過ぎている4人だから、ツッコミは容赦なし。
ちょっとHな話題に大いに盛り上がるあたりは、「いつの時代も男子って…」と、こっちがつっこみたくなるほど。
文学論では硬い言葉使いもあるのに、笑いもいっぱいあり、たくさんの台詞が、なぜだかスルスルと入ってくる。「文士の会話劇って小難しい?」という不安を吹っ飛ばしてくれました。
そんな4人も酔うほどに、心の奥底に秘めた部分を語り始めます。
やがて、カメラのシャッターの音を響かせるのもためらわれるほどの熱い討論が始まりました。
幼き頃から今なお抱え続けている葛藤、不安、嫉妬、そして人生への決意。4人4様の胸をかきむしるような切なさ、苦しさ…。1人が打ち明けた思いに3人が全力で飛びかかり、格闘する。
芝居を見ているのに、本当にその部屋をのぞき見ている気になってくる。
4人の口からほとばしるように出てくる言葉に思いに、こちらもググッと引き込まれ、胸が熱くなってしまいました。
この幕の後までいっきょに通し稽古をし、休憩をはさんで振り返りが行われました。
本番まで2週間以上ある稽古でしたが、鈴木裕美の第一声は「大きな構成としては大丈夫です」。その上で「重要なところとそう重要でもないところも同列に挙げるので、それぞれで判断してもらえると有難いです」と前置きして、細かなポイントを流れにそって幾つか拾い上げていきます。
ひと言の台詞についても、そこに込められた感情のニュアンスを、その前後の会話から丁寧に読み解いていきます。たとえば、褒められた時の反応は「いやいや」と謙遜気味なのか「おお」「そういうこともあったよね」くらいなのか。
言葉には出なくても、飲み食いに忙しい場面でも「こう思っていてほしい」。
「雰囲気を伝えたい」から「台詞だけでなく身体の動きと共に表現したい」と、鈴木裕美自ら動いてみることも。座った姿勢からどう立ち上がるとその雰囲気をつたえられるのか…を探る場面。
文学と芸術家の話では、鈴木裕美の身近な例え話に笑顔がこぼれます。
さて、物語は冬で結末を迎えます。
4人の葛藤は、どういう結末を迎えるのでしょうか?
個性の違うキャラクター4人が、四季折々にどういう姿をみせてくれるのか。衣装をまとって、舞台の上で変わっていく姿も楽しみです。
そして、秋にはすすきが飾られ、虫の声が響いていた部屋の変化も気になります。
公演は8月20日(火)から9月13日(金)までDDD青山クロスシアターで上演。
生々しい若き文士たちの生きざまを、間近に感じながら観ることができそうです。
【公演情報】
舞台『絢爛とか爛漫とか』
作◇飯島早苗
演出◇鈴木裕美
出演◇安西慎太郎 鈴木勝大 川原一馬 加治将樹
●8/20~9/13◎DDD青山クロスシアター
〈料金〉7,800円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉ワタナベエンターテインメント03-5410-1885(平日11:00~18:00)
〈公式ホームページ〉http://kenran.westage.jp