2018年公演写真©️岩田えり
2015 年、18 年と高い評価と人気を得た稲垣吾郎 主演舞台「No.9 ー不滅の旋律ー」が、2020年12月から再演される。 主演は初演から演じる稲垣吾郎が続投。ベートーヴェンを秘書として支えるマリア役は、18年から出演する剛力彩芽。
なお、 今回の再々演を企画するにあたり、 ベートーヴェンの生誕を祝う記念すべき公演として11月にウィーン・フォルクス劇場での開幕を予定していたが、 今なお世界中で猛威を振るう新型コロナウィルスの感染状況を考慮し、 ウィーン公演の中止を決断。 東京公演のみ細心の注意を払い上演する。
作曲家として人間として、劇的な人生を送ったベートーヴェンの波乱と苦悩の生涯を、 中島かずき(劇団☆新感線)による新たな視点からの脚本と、白井晃による意欲的な演出、三宅純の見事な音楽表現で描く。
2018年公演写真©️岩田えり
史実や実在の人物を基に、大胆な発想の飛躍を加え、一度聴けば脳裏に焼きつく心地よい台詞で劇世界を織り上げる 中島。
舞台上、俳優とと もにピアニストを配し、ベートーヴェンの楽曲が登場人物たち同様に、場面ごとに機能する演出プランを立案した白井。
それら生演奏と、ピアノ工房で採取した環境音のコラージュなどを有機的に繋ぎ、ベートーヴェンの楽曲に対する深い理解のもと、 作品世界を貫く「音」を生み出した三宅。
クライマックスは、コーラスによる合唱で劇場を満たす、「歓喜の歌」。生きる喜びを取り戻す契機となる、新たなクリエイションとなりそうだ。
『No,9ー不滅の旋律ー』2020 三度目の上演にあたって 稲垣吾郎
2020 年はベートーヴェン生誕 250 周年。その記念すべき年に、舞台『No.9—不滅の旋律—』を上演し、回を重ねてルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンという天才音楽家を演じられることを、非常に嬉しく思います。
2015 年の初演時は、これまで演じたどの役とも違う圧倒的な存在感や強烈な個性に戸惑い、悩ましい時間を過ごしました。けれど演出の白井晃さんをはじめ、共演の皆さんがしっかりと支えて下さる中、徐々にベートーヴェンと僕との距離は縮まっていったのです。結果、自分なりのベートーヴェン像が、回を追うごとに確かなものになっていったように思います。
俳優の仕事には、その時の自分が役に影響を及ぼすドキュメンタリー的な部分がある。自分の「今」をオリジナル作品で、しかも偉大な音楽家に託して表現する機会もくださった制作の方々には感謝しかありません。
実は今回、ベートーヴェンが活躍したオーストリアの首都ウィーンでの公演も予定していました。場所はベートーヴェン没後に建てられた、当時の栄華を残す「フォルクス劇場」です。けれど、その素晴らしい企画は世界を覆う新型ウイルスの脅威により、断念することになりました。加えて国内での創作・上演も、これまで以上に注意を払い、万全の 感染予防対策を行ったうえで進めねばなりません。
でも、この厳しい状況下だからこそ僕は『No.9』を、一人でも多くの方に届けたいと思うのです。劇中終盤の交響曲第九番、その中で力強く歌い上げられる「歓喜の歌」は作品の白眉であり、世界の平和と幸福を願い、自身の孤独をも昇華しようという作曲家の大いなる祈りが込められています。まさに現状に苦しむ人々に、届けるべき調べと言葉がそこにあるのです。
だからこそ迷いなく創作を深め、僕が愛してやまない人間ベートーヴェンを再び舞台で生きることは大きな使命。
その先には、再びの「夢」に手が届く日も来るはずです。さらなる未来へと続くこの上演を、多くの方に見届けていただきたいと思います。
生きることへの賛歌 演出 白井晃
この歓喜のドラマは、生きることへの讃歌です。苦しみの中からひと摑みの喜びを見出す物語です。
今、演劇は大変厳しい状況に直面しています。再再演の機会に恵まれ、11月にはベートーヴェンの活動拠点だったウィーンでの公演が決まっていました。日本で生まれたベートーヴェンの物語を本場で披露することを楽しみに
してきましたが、残念ながらこのチャンスは未来に持ち越されることになりました。
私たちの心は、今、見えない恐怖の前に萎縮してしまっています。しかし、本来、私たちの営みは、生きる意味を見出し、それぞれの喜びを得るためにあるはずです。ですから、私たちは立ち停まることなく前に向けて進む道を選びました。
この公演を実現することで皆さんと、この物語を共有するという喜びを、改めて分かち合いたいと思っています。
舞台「No.9 ー不滅の旋律ー」
[出 演] 稲垣吾郎 / 剛力彩芽
片桐 仁 村川絵梨 前山剛久
岡田義徳 深水元基 橋本 淳 広澤 草 小川ゲン 野坂 弘 柴崎楓雅
奥貫 薫 羽場裕一 長谷川初範
[演出] 白井 晃
[脚本] 中島かずき(劇団☆新感線)
[音楽監督] 三宅 純
2020 年 12 月 13 日(日)~2021 年 1月 7 日(木) TBS 赤坂 ACT シアター