山口祐一郎、浦井健治、保坂知寿 の三人がNHK大河ドラマ「篤姫」「江~姫たちの戦国~」など多数の脚本を手掛ける田淵久美子書き下ろしのオリジナル脚本によるエンターテイメント・コメディ『オトコ・フタリ』に出演する。(12月12日(土)~30日(水)日比谷シアタークリエで、その後、大阪・愛知で上演)
今作は、なんとミュージカルではなくストレートプレイ。しかも、「台本を読むと、ずっと笑える」コメディであることが、11月12日(木)に行われた3人そろっての会見で明かされた。
その後、さらに深い話を聞くための取材が叶った。
すでに稽古は始まっているとのこと。個性と才能あふれる3人が集った稽古場とは? どんな思いで稽古に臨んでいるのか?
三人のちょっと深いいい話を、お楽しみください。
保坂知寿 山口祐一郎 浦井健治
コメディ作品らしい、楽しいショットを頂きました!
―山口さんは、9月に帝国劇場で開催された初めての本格的なトークショウ『My Story -素敵な仲間たち-』で、浦井さんと&保坂さんをゲストに迎えた際に、本作について「ミュージカルでできない楽しいトライをする」とおっしゃっておられました。その時に考えていた「トライ」とは何か?また、稽古が始まってからはどうなっているかを教えて頂けますか?
山口:演劇はチームプレイで作りますが、メンバーが多くなればなるほど一人ひとりの自己主張は減って、全体の作戦と皆が向いている方法へ向かうことになります。そういう一体感を持ってやるのも心地いいのですが、今回は出演者が3人しかいない。しかもストレートプレイなので、それぞれが思いのままにふくらませることができるという、また少し違った心地いいやり方ができそうだな…と、稽古の前に思っていました。
稽古が始まってみてどうかといえば、会見で健ちゃんからは「ミュージカルでは歌唱指導、振付といくつかのセクションがある(が、ストレートではひたすら芝居というセクションだけという贅沢な時間を過ごしています)」という話と、保坂さんからは「ミュージカルでは歌や振付というやるべきことがたくさんあるので、その大変さはありますが、自分の役を表現する手段がたくさんある。(ストレートプレイでは、俳優として自家発電しないといけない。芝居の空間が繊細なので、ひとつずつ紡ぐ難しさがあり、それがまた魅力)」という発言がありましたね。そういうことに加えて、音楽的な制約が無いので、まずは3人それぞれが限りなくふくらむだけふくらませて、それを見てから、また3人でふくらみ直す…というんでしょうか(笑)…そういう新しいこともして、楽しい時間を過ごしています。
―そのトライについて、浦井さんと保坂さんはいかがでしょうか?
浦井:今回は、演出の山田和也さんが「言葉を大切にしている」「言葉で勝負している」という感じもしています。もちろん雰囲気やニュアンスで察してもらえるような部分もあると思いますが、「きちんと伝え合う」という人間のコミュニケーションの嘘のないところを目指しているように感じています。「3人がふくらむだけふくらませる」ということについては、特に僕はいけるところまでいってしまうこともあるのですが(笑)、そういう時には『オトコ・フタリ』の・(点)の方(保坂知寿)が、すべてお芝居に集約してくださっています。小道具のスタッフさんを含めても、・の方が誰よりも動いて(笑)、ものすごく高いスキルでおしゃれな楽しいことをやってくださいます。自分は先輩おふたりの様子を見て、自然と触発されているような稽古場です。
山口:今の話を聞いて思い出しました。稽古初日に、山田さんからも田淵さんからも「浦井さんと山口さんのふたりだと、どこまでいくか分からないので、ふたりをきちんとニュートラルなところに引き戻す方が必要だと思い、保坂さんにお願いした」という話がありました。(笑) なので、僕たちはふたりは、安心してどこまでもいける、そういう状況です。(笑)
保坂:この作品で描くのは、世代も生きてきた人生や考え方も違う二人の男性、互いに自分に無いものをもった男性ふたりです。そして、ある程度年齢を重ねた人と、そこでお手伝いしている私の二人のところに、若い人が異物として入ってきたことで、それまでのバランスが崩れていろいろなことが起きてしまう…ということなので、稽古中の今は、おふたりには羽ばたいて頂くのが一番です。(笑) 私は本来、しっかりしている方ではありませんが、今回は救いになるようなことにトライしようと思っています。
山口:僕たちふたりは、なるべく迷惑のかからないように頑張りたいと思います!(笑)
―会見で「コメディを通して観客に元気を届けたい」という田淵さんの思いをお三方が実現するという公演だということを伺いました。そのためには三人が元気でなければと思いますが、今の元気の源をお聞かせください。
保坂:自粛期間というやるべきことがない、長い時間がありましたが、稽古場で台本を頂いてからは取り組むべき課題がある。いろんな人の顔を見て、言葉を交わすことができる。もう、それが嬉しくて元気になります。
浦井:保坂さんについては、ある先輩から「あの人の芝居は究極の引き算で成りたっている」と聞いたことがあります。保坂さんが台詞として言い直す場面がありますが、あまりにも自然で、本当にセリフを間違えて言い直したように聞こえるんです。すばらしい演技で、この場にいられることが幸せだと思っています。
そして、大スターの山口さんが毎日、スタッフ一人ひとりに「おはよう!」と挨拶したり、元気かどうか、皆がどう考え感じて過ごしているのかを、座長として自分よりも他人のことを優先してみてくださったりしている姿を見ると、その背中の大きさと背負ってきたものの大きさを感じます。自分はこの背中にどう恩返しをし、どうくらいついていけるのかを考えながらいます。ただ、くらいつこうとすると「大丈夫だよ」「やってみな」と「また新しい化学反応をみせてくれ」といわれて、さらに緊張もするのですが、幸せなことだなぁと思いながらやっています。
稽古場に行くと、ほんとうに元気になります。マネージャーに「稽古、終わりました」と連絡すると「早い!」と言われます。健康な稽古場です!(笑)
山口:普段の稽古場では自然体で演技できるまで、スタッフが時間を使って俳優をほどいていくのですが、今回は初日に会った瞬間に全員がほどけていました。(笑) それで山田さんが「いつもとはちょっと違う稽古をしてみよう」と考え、「稽古場のモットーはがんばらない」にしたことにつながっているのかなと思います。稽古場では和気藹々とやっていています。稽古が早く終わるということは、その後の時間は心や体のメンテナンスをして、準備をする時間であり、信頼関係があるから持てる時間だと思います。そうしてどんどん良い方向に回っていて、エネルギーにつながっている、そんな稽古場です。
「どれだけ仲が良いの?!」と思わせてくれた三人からは、互いを尊敬し尊重し合っていることと、舞台を愛するエネルギーがビシビシ伝わってきました。
今作はミュージカルではないけれど、“歌“の場面もあるとのこと。コメディへの期待が高まる『オトコ・フタリ』は、2020年12月12日(土)、シアタークリエで初日を迎えます。
「オトコ・フタリ」
2020年12月12日(土)~30日(水) 日比谷シアタークリエ
脚本:田渕久美子
演出:山田和也
出演:山口祐一郎、浦井健治、保坂知寿
【チケット】料金:11,000円 (全席指定・税込)
公式HP : https://www.tohostage.com/otokofutari/
1月15日(金)~17(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
1月23日(土)~24(日) 刈谷市総合文化センターアイリス