2011年の初演から再演を重ねてきた人気のミュージカル『スリル・ ミー』が、4月1日(木)、東京芸術劇場シアターウエストにて開幕した。
初演から10年となる2021年版では、レジェンド、続投、初参加という個性の異なる3組6名のキャストを迎え、新たな伝説を積み上げはじめた。
(東京芸術劇場シアターウエストにて5月2日(日)まで上演。その後、群馬、愛知、大阪にて上演)(撮影:田中亜紀)
9年ぶりの復活となる 田代万里生(私役)×新納慎也(彼役)ペア
2018年公演からの続投となる成河(私役)×福士誠治(彼役)ペア
初参加の松岡広大(私役)×山崎大輝(彼役)ペア
ミュージカル『スリル・ ミー』は、“私”と“彼”、2人の俳優と一台のピアノだけで繰り広げられる、実際の少年誘拐事件を基にした100分のミュージカル。
上演時間を貫く緊迫感、舞台から押し寄せるエネルギーに、観客は巻き込まれ、翻弄され、圧倒される、他に類をみない作品といえる。
心理劇としてのみならず、サスペンスでもあり激しいラブストーリーともいえる物語は、何度も見たくなる魅力を秘め、多くのファンから絶大なる支持を獲得。
2011年の初演から重ねてきた上演で、多くのスターを生み育て、またスターたち自身も魅了されてきた作品といえよう。
魅力あふれる3組のキャストの中から、Astageがゲネプロを観劇したのは、松岡広大(私役)×山崎大輝(彼役)ペア。
幕開けは、仮釈放審議会にて、30年以上前に起こした犯罪について“私”が語るところから。暗転すると30年をタイムスリップし、“私”は十代の身綺麗だが、どこかおどおどとした青年へ一瞬で変わる。そして“私”にとっての特別な“彼”との物語が始まる。
”私”の不安定さは、“彼”が登場した瞬間に消え去る。“彼”が空気を塗り替え、制圧。“私”が“彼”によっていびつに安定し、観客はその二人の起こす磁力に吸い寄せられ、やがて引きずりまわされることとなる。
だがその磁力の色は、どうしてこうもペアによって違うのだろう。劇場を覆う気圧も、2人の力の向きも違う。 そして、何度見ても、きっと公演毎に違うのだ。
“彼”を演じる山崎の登場には、ナイフを投げ込まれたような衝撃を受けた。このペアならではの“彼”と“私”の〇〇差が、磁力に大きな歪みを与え、このペアの磁力を増幅する。
“彼”の主導で、“私”は抗えず罪を犯す。2人が起こした、世にもおぞましい、許しがたい犯罪。
だが観客はそれを糾弾する気持ちを感じながらも、“私”の気持ちを追いかけ、そして、幾度も反芻してしまうことだろう。
その愛に秘められた深く暗い…いや、あまりにも純粋な秘密を、最後まで見届けてほしい。そして、ひとつの愛を見たならば、別(ペア)の愛への興味を抑えられないことだろう。
東京公演当日券は各公演、開演時間までホリプロステージ(https://bit.ly/3tOyCrg WEB/要会員登録)にて販売中。 劇場窓口での当日券の販売はなし。
開幕にあたり届いた 演出家&キャストコメントをご紹介する。
演出 栗山民也
あぁ、10年続いたんだ
老朽化で取り壊しになる寸前の麻布にあった「アトリエ・フォンテーヌ」、その100席ほどの何もない空間が、私たちの初演の劇場でした。ピアノが一台、とにかく二人の俳優とピアノを弾く音楽家だけで、とても豊かでとても危険な世界が創れると勇んではじめた作品です。あっという間に10年が経ちました。
そして本日、3組それぞれの公演の初日が無事開きました。3組といっても、どこか違った3様のドラマですが。
舞台ってライブだから何が起こるかわからないね、とはよく言われることですが、その時その場所に居合わせたことの奇跡だけを信じるしかありません。それがなんと心躍ることか。人と人が出会い、ぶつかることで起こるその時だけのスリルを、全身で体験してください。このコロナでの荒涼とした状況が続く中、人間であることを忘れないために、私たちの中に住む無数の感情だけはしっかりと動かしましょう。
栗山民也
田代万里生
個人的には10年前の初演から、劇中の台詞「5度目の正直」ならぬ「5度目の出演」となります。作品のモチーフは今から97年前の1924年にシカゴで起きた事件。終身刑プラス99年の懲役と判決された2人ですが、もうすぐ本当に99年を迎えるということもあり、演じていて今回はよりリアルに感じています。再び「私」として舞台に立てること、そして栗山民也さんの演出のもと、超人・新納慎也さんと再びペアを組める奇跡に感謝して、皆様に最高の『スリル・ミー』をお届けします。
新納慎也
9年ぶりの僕と万里生のペア、そして日本初演10周年を迎える記念すべき『スリル・ミー』がとうとう開幕しました!まさか4回目の『スリル・ミー』が出来るなんて思っていなかったので本当にありがたく思っています。しかも相手役が初演と変わらずに万里生で、あの時を再現するかのように、そしてあの時を超えるかのように二人で日々切磋琢磨して頑張っています。
僕ら二人が『スリル・ミー』を演じていることを感慨深く思って観てくださるお客様も多いと思いますが、純度100%、最初に出来た純正ver.1.0.0 が僕らの『スリル・ミー』です。その後色々な方が『スリル・ミー』を演じ、ペアによって見え方違ったり、別作品に見えたりすることもこの作品の魅力ではあるのですが、これが純正品だと誇りを持っています。10年前、稽古の始めに演出 栗山民也さんが開口一番でおっしゃった「これは壮大なる愛の物語だ」という言葉を大切に、10年経っても追及し続けています。この作品ほど劇場で観られて良かったと思える作品はないと思いますので、ぜひ劇場でしか体験出来ない緊迫感を味わいに来てください。
成河
待ちに待ったこの日、とうとう開幕しました。2年前に演じた時とは情勢も違いますが、お客様とどのような時間が共有できるのだろうとすごく前向きにわくわくしています。劇場内しっかり対策しているので感染症対策的には安全ですが、演劇的にはとても危険な場所を用意しましたので、人間が危険に身を置く、ということをお客様も一緒に体験していきましょう。
福士誠治
2年前演じた『スリル・ミー』。今回また新しい『スリル・ミー』が出来上がったと感じております。成河くんという「戦友」とまた出会えたことはとても嬉しく財産です。3組の色々な『スリル・ミー』が繰り広げられますが、まずは自分たちの世界を作って、演劇の楽しさやお客様との一体感、『スリル・ミー』ならではの緊張感を味わっていただけたら嬉しいなと思います。
松岡広大
初日、無事に開幕しました。「私」役の松岡広大です。個人的には本当に色々とまだまだだな、と思うこともありますが、本日出来る限りのことをお客様に向けて、そして「彼」に向けて存分に演じられたと思います。これからも慢心せず、邁進していきたいと思いますので、どうかどのペアも愛していただけたらと思います。
山崎大輝
無事初日を終えることが出来まして、今までで一番緊張する作品でした。今回、やれる限りのことは出来ましたが、もっと詰めていくことはたくさんあるので、今作ったものをさらに突き詰めていきたいと思います。ここから約1ヶ月以上ありますが、どのような風に僕たちのペアが進んでいくのか、ぜひ皆さま気にしてくださると嬉しいなと思います。
ミュージカル『スリル・ ミー』
<東京公演>
期間:2021年4月1日(木)~5月2日(日)
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
<群馬公演>
期間:2021年5月4日(火)・5日(水)
ー5月4日(火)16:30(田代×新納)
ー5月5日(水)12:30(成河×福士)/16:30(松岡×山崎)
会場:高崎芸術劇場 スタジオシアター
主催:高崎芸術劇場
お問い合わせ:高崎芸術劇場チケットセンター
TEL:027-321-3900(10:00~18:00【年中無休】)
http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/index.php
<愛知公演>
期間:2021年5月15日(土)・16日(日)
ー5月15日(土)15:00(成河×福士)/18:30(成河×福士)
ー5月16日(日)12:30(松岡×山崎)/16:30(田代×新納)
会場: ウインクあいち大ホール
主催:メ~テレ/メ~テレ事業
お問い合せ:メ~テレ事業
TEL:052-331-9966(祝日を除く月-金10:00~18:00)
https://www.nagoyatv.com/event/
<大阪公演>
期間:2021年5月19日(水)~23日(日)
ー5月19日(水)13:30(松岡×山崎)/18:30(成河×福士)
ー5月20日(木)13:30(成河×福士)/18:30(松岡×山崎)
ー5月21日(金)18:30(田代×新納)
ー5月22日(土)13:30(成河×福士)/18:30(田代×新納)
ー5月23日(日)13:30(田代×新納)
会場:サンケイホールブリーゼ
主催:サンケイホールブリーゼ
お問い合わせ:ブリーゼチケットセンター
TEL:06-6341-8888(11:00~15:00)
http://www.sankeihallbreeze.com/
<出演>
田代万里生(私役)×新納慎也(彼役)/
成河(私役)×福士誠治(彼役)/
松岡広大(私役)×山崎大輝(彼役)
ピアニスト:朴勝哲、落合崇史、 篠塚祐伴
<スタッフ>
原作・脚本・音楽:Stephen Dolginoff
翻訳・訳詞:松田直行
演出:栗山民也
音楽監督:落合崇史
美術:伊藤雅子
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
衣裳:前田文子
ヘアメイク:鎌田直樹
振付:田井中智子
歌唱指導:伊藤和美
演出助手:坪井彰弘
舞台監督:田中伸幸/松井啓悟
主催・企画制作:ホリプロ