藤原竜也と鈴木亮平がダブル主演する新作舞台『渦が森団地の眠れない子たち』が今秋10月、東京・新国立劇場中劇場を皮切りに佐賀・大阪・名古屋・広島・宮城で上演される。
『まほろば』『木の上の軍隊』『母と惑星について、および自転する女たちの記録』『消えていくなら朝』など、注目作を次々に発表し続けている蓬莱竜太が作・演出を担い、藤原竜也と鈴木亮平が小学生を演じるという注目作だ。
藤原竜也と鈴木亮平が、本作のビジュアル撮影に臨んだ後に話を聞いた。
―同学年のお二人が、今回は10年ぶりの共演ですね。
藤原:そんなに経ったのか…と。久々にがっつり組んでやらせてもらえて、僕としては亮平の存在が頼もしいです。みんなで苦労しながら良い稽古期間になるといいなと思っています。
鈴木:十年前、僕はまだ俳優を始めて数年で、竜也くんを見て勉強する立場でしたが、今回は並んでやらせて頂けるということで自分の成長も見せたいです。竜也くんが投げてくる剛速球、時には暴投もバシッと受け止めて投げ返していくキャッチャー的な存在でいい仕事ができればと思っています。でも気が付いたら、入れ替わっているかもしれません。(笑)
―本作誕生のきっかけについて、教えて頂けますか?
藤原:井上ひさしさんが大まかなストーリー書かれたものを元にして、蓬莱さんに『木の上の軍隊』(2013年 藤原竜也主演)を書いて頂きました。この作品をきっかけに、蓬莱さんとはとても仲良くしていただき、数年後、そして蓬莱さんから「新作はどうだろうか?」とお話があって、今回の作品になりました。
―お二人は蓬莱さんと一緒に食事会に行かれたそうですね?
藤原:蓬莱さんが3月から通しで脚本を書いておきたいとのことで、2月後半にお会いすることになりました。
鈴木:僕は初めて蓬莱さんにお会いしました。「団地エピソードを頂戴!」っておっしゃって。
藤原:イメージをつくりたかったのかなと思います。
鈴木:蓬莱さんは神戸、僕が西宮と出身地が近く、年も大きく違わないので、同じ時代・同じ世界で育ってきたんだなと思いました。この作品は蓬莱さんの子供時代をベースに書かれているのではないかと思っています。
―今回は新作ですから、お二人に当て書きもされているんですね?
鈴木:そのための食事会だったと思います。
―作品とは少し離れますが、お二人はどんな小学生だったのですか?
藤原:僕は秩父の山奥、埼玉の荒川の上流付近だったので、田んぼでザリガニを捕って、川で鮎を釣って…という絵に描いたような子供でした。
鈴木:そんな昭和初期みたいな?!(笑)
藤原:そうだったんだって!
鈴木:育った場所が全然違うので、同じ年なのにジェネレーションギャップを感じます。
藤原:「イナゴを捕ったらお金になる」という話を聞いて、夕方から田んぼでイナゴを200匹くらい捕って帰ったら、お母さんから「そういうことじゃないんだ」と言われて、団地の窓からイナゴを放ちました。夜の闇にイナゴ200匹が飛んでいく…、「大人になりたくないな」って思いました。(爆笑)
鈴木:説明すると、珍味売りっていう仕事があると聞いて、イナゴを捕ったら佃煮にできるんじゃないかと思ったらしいのですが、イナゴではなかったらしいです。蓬莱さんとの食事会で、竜也くんがこんな面白いエピソードを話すので、僕は話すことがなくなっちゃって。(笑)
藤原:そんな話をしていたら、仕舞いには亮平が「よく育ってくれた」って僕のことを抱きしめてくれて。食事会の後半は涙なしではいられませんでした。(笑)
―鈴木さんはどんな小学生でしたか?
鈴木:僕は工業地帯の住宅地で育った、普通の小学生でした。学校が終わると学童に行って家の近所の公園で暗くなるまで近所の友達と草野球をしていました。全然話が面白くない!(笑)
―ガキ大将タイプでしたか?それとも…
鈴木:関西なので面白くなきゃという雰囲気もあって、僕は賑やかし役でしたね。僕自身はまったく面白い子供ではなかったですが、とにかくにぎやかな“ザ・次男”でした。小学校1年生の時は裸で学校の机の上で踊っていたのですが、2年になって急に自意識が芽生えて恥ずかしくなってやめました。僕の小1は黒歴史です。(笑)
―さて、蓬莱さんの作品の魅力についてお話しいただけますか?
藤原:物語のつくり方が素晴らしいです。観客に対して変化球だけれど強く訴えかけるメッセージをくれます。まだお若いのに上手い、貴重な作家さんだと思います。
鈴木:台詞もセンスだけでなく考えられているなと思います。伝えたいことをはっきりと分かりやすく見せるのではなくて、その一歩手前で想像の余地を残しつつ、でもしっかり伝えようとしている。そのバランス感覚がすごいです。切り口もとても上手くて、心から「素晴らしかった」と言える作品ばかりでした。僕(の出演作)も観客にそう感じてもらいたいと思います。
―切り口が面白い…といえば本作の切り口は抜群ですね。初めて聞いた時には?
鈴木:みなさんが本作について「小学生、小学生」と言われるのですが、僕の中では「(軽く)ああ、小学生か」とストンと(違和感なく)落ちました。老人の方が自分に経験がないので困ります。小学生は経験しているので、あの頃を思い出せばいけるんじゃないかなと。観客は体の大きさが気になるでしょうが、僕からは自分の体や顔は見えていないので、心がパッと小学生に戻れば、自分では違和感はないです。(笑)
―先ほどのビジュアル撮影で、藤原さんは鈴木さんに「こういう小学生っていたよね」とおっしゃっていましたね。
藤原:いたよね!(笑)僕も蓬莱さんがなぜ僕と亮平で小学生というイメージが沸いたのか?なぜ団地なのか?書きたいテーマも、早く知りたいです。 今回は脚本も演出も蓬莱さんなので、稽古中にも台本が変わってくるかもしれませんね。
鈴木:僕は竜也くんを見て小学生だと思いついたと思いますね。こんなに童心を持ち続けている人はなかなかいない。しかもちょっと王様気質で。(笑)
―本作ではお二人で団地での王座を争うのですか?
藤原:まだつかめてないところが多いですが…。
鈴木:まだ詳しくはわからないですが、小学生を描くということでコメディを想像されているかと思いますが、そうとはかぎらないです。プロットを拝見したかぎりでは権力闘争。イメージとしては今はまっている『ゲーム・オブ・スローンズ』の感じです。裏切り、パワーバランス…。
藤原:木場(勝己)さんや奥貫(薫)さんは別にして、蓬莱さんは僕に「この芝居には有名な俳優は要らない、実力者だけを揃えるから」とおっしゃっていました。「力のある俳優に直接声をかけて集める。彼らにとってもビックチャンスになるだろうし、その土台をつくる」と周りの方にはおっしゃっていたので、いい化学反応が起こるでしょうし、とても面白い企画だと思います。
―では、最後に意気込みをお願い致します。
藤原:10年ぶりの亮平との共演なので、丁寧に稽古していけたらと思っています。
鈴木:竜也くんとやる以上は、僕と竜也くんが全力でぶつかる団地大河ドラマです。合戦をお見せしなければと思います。子供というフィルターを通して、人間の良いところも悪いところもぶつけ合う火花散る様を見て頂ければと思います。
『渦が森団地の眠れない子たち』
作・演出 蓬莱竜太
出演
藤原竜也 鈴木亮平
奥貫 薫 木場勝己
岩瀬 亮 蒲野紳之助 辰巳智秋 林 大貴 宮崎敏行
青山美郷 伊東沙保 太田緑ロランス 田原靖子 傳田うに
2019年
10月4日(金)~20日(日) 東京・新国立劇場 中劇場
10月26日(土)27日(火)佐賀・鳥栖市民文化会館 大ホール
10月29日(火)30日(水)大阪・森ノ宮ピロティホール
11月1日(金)~4日(月祝)名古屋・御園座
11月7日(木)~8日(金)広島・JMSアステールプラザ大ホール
11月16日(土)~17日(日)宮城・多賀城市民会館大ホール
公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/uzugamori2019/