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玉城裕規 インタビュー KAAT神奈川芸術劇場『湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。』「僕の役者人生にとっても、とても大切な作品になる。目に焼き付けてもらえたら」

神奈川・KAAT神奈川芸術劇場の2021年度メインシーズン「冒」の開幕を飾る『湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。』が、いよいよ8月27日から幕を開ける。

不思議な因縁と人間の欲に揺さぶられながらも懸命に生きる人々の姿を描いた歌舞伎「三人吉三」をモチーフに、野木萌葱が舞台を現代の横浜に置き換え書いた作品を、シライケイタが演出する注目作だ。

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今回登場いただくのは、玉城裕規さん。
「三人吉三」では和尚吉三にあたる柄沢純役を演じる。
どんなハードボイル現代劇が作られているのか? 稽古場で感じた思いも交えて、本作への熱い思いを語ってもらった。

―お稽古は、どんな感じでしょうか?
皆さんにお会いする前から感じていましたが、とても個性的でいい意味で化け物役者さんだらけで、稽古を見ているだけで刺激になります。

―“化け物“ですか?
役者として“化け物“と言われたら嬉しいじゃないですか。

―“化け物“の役者とは、具体的にどういう意味か教えてもらえますか?
芝居がとにかく素敵で、規格外の演技をされるので、“化け物“です。
最初の顔合わせの時は男性ばかりだったのですが「あれ、これは何かの組織の会合かな」と思うくらいの覇気が伝わってきて、森(優作)くんと二人で「僕らは場違いじゃない?大丈夫かな…」と話したくらい。(笑)

―その中で玉城さんも、もう場違いでなくなりました?
稽古の初めの頃からセットを組んで頂けたので、作品の空気感が漂っている中で稽古をずっととやっています。
コロナ対策のために、場面毎に分けて稽古をしているので、自分が登場しない場面はまったく見られなかったのですが、一度、出来上がったところまでをざっと通して稽古をしたときに、初めて見るシーンもあって「うぉ~!」と思いました。

―それは、「すごいぞ!」という感嘆ですか?
はい!ただ、それは「これから、芝居が盛り上がるぞ」というシーンの前で終わったのに、すでに凄いことになっていたので「おお!よし、がんばろう!」と心の中でつぶやきました。

―そのエネルギーを客席で体験できるのが楽しみです。
さて、本作は歌舞伎の人気演目「三人吉三」をモチーフにした作品とのことですが、玉城さんはそのあたりはどのように取り組まれたのですか?
見てしまうと影響されやすいので、歌舞伎は見てはいませんが、内容などは調べました。

―観客としては「三人吉三」について何も知らないで本作を観に行って大丈夫ですか?
大丈夫だと思います。「三人吉三」で描かれる人間模様をモチーフにしていますが、「三人吉三」の影がチラホラ見え隠れするかな…という感じなので、「三人吉三」の…と思って頂くよりも『湊横濱…』という作品を観に来て頂けたらと思います。

―歌舞伎がモチーフだからと構えなくても大丈夫だということですね。ハードボイルドだと聞くと「かっこいい?!」と想像が膨らむのですが…
あからさまに「かっこいいです!」というよりも、欲望や弱さという人間的な部分を隠さずに描いていくところが、かっこいいかな…と思います

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―「ビジュアル撮影のときに『グチャグチャにしてやる!』というシライさんの気合いが伝わってきた」そうですが、稽古場では、もうグチャグチャにされているのでしょうか?
台本がまだ最後まで出来上がっていないのです。たぶん出来上がったら、シライさんの中でグチャグチャにするのではないでしょうか。

―え?!それでは俳優陣は、最後まで大変ですね?
そうですね、ただそれも含めて、この作品にある刺激だと思います。

―刺激的な稽古場なのですね。お客様にもそこを感じて頂けるといいですね。
感じて頂けるのではと思います。観ていて「これから、どうなるの?」と引き込まれて、物語を追いたくなると思います。

―この作品は、縁や因縁が絡み合った物語とのこと。作品からは離れますが、玉城さんが縁や因縁を感じたことはありますか?
このお仕事は縁や出会いが大事だなと思います。シライさんの劇団で昔上演されていた『BIRTH』という作品に僕が出演したのを、シライさんが観てくださって、この作品に声をかけてくださったので、それも縁だと思います。
つながりはとても大事だし、このお仕事をやる上で縁は欠かせないものだと思います。

―縁を大切にするために、玉城さんが心掛けていることは?
笑うことですね。昔は「ホントに笑ってないだろう」とよく言われていましたが、そんなことは全然なくて。人と一緒にいるのが楽しいですし、笑っていることで心が晴れるので、笑うことを心掛けています。母親からも「笑顔が大事だからね」と言われていたので、それもあります。

―笑顔を大切にする玉城さんが、今回はどういう感じで稽古場にいらっしゃるのでしょうか?
今のところ僕が演じる役は 胸の中でいろいろな思いがグルグルしている役で、その思い全部をさらけ出すというよりにじみ出るという感じだと思っています。なので、稽古場では自然におとなしくなっているときがあります。(笑)

―役を演じている時と、素の玉城さん。その切り替えは?
切り替えを意識したことはありません。でも、プライベートで「いつもとはちょっと変わっているよ」と言われることはありますが、自分では意識してないですね。
稽古場や現場でスタッフさんや出演者の顔を見ると自然に「この作品だ」となって、稽古の始まる前に、ちょっと「よし!」と気合をいれて稽古が始まります。
でも休憩中はなるべくリラックスするようにしています。

―今回演じる柄沢純という役について、オファーを受けてから、稽古を重ねる過程で見方が変わったところはありますか?
最初は「ハードボイルで、荒狗挽歌(あらぶるいぬのさけび)」という題名でもあり、破天荒な役かと思って荒ぶっていこうかと思っていましたが、いざ蓋をあけてみたら、意外にもそういうタイプではなかったので、ちょっと驚きました。
柄沢純は、渡辺哲さんが演じる、とてもパンチのある男の息子です。どういう育ち方をして、どういう生き方をしているのだろうかと考えると…普通には育ってないでしょうね。だから胸の中が荒ぶっていて、普段はそれを抑えながら生きている。それが何かの拍子でぽんと出てしまったりして・・・。そこをにじみ出るようにできればと思っています。

―最後に観に来て下さる方、まだ迷っている方へ、ひとこと、お願いします。
物語の展開がとても気になる作品です。生きている中での辛さや苦しさがあっても、懸命に生きている人たちの人間模様が描かれているので、日々の活力になる作品だと思います。素晴らしいスタッフ・キャストが揃っているので、この機会を逃すと二度と見ることができない座組だと思います。
僕の役者人生にとっても、とても大切な作品になると思います。目に焼き付けてもらえたらと思います。

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KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。』
【作】野木萌葱
【演出】シライケイタ
【出演】
玉城裕規 岡本玲 森優作 / 渡辺哲 山本亨 ラサール石井
村岡希美 大久保鷹 筑波竜一 伊藤公一 那須凜 若杉宏二
【日程】2021年8月27日(金)~9月12日(日)
【劇場】KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
【公式ホームページ】 https://kaat.jp/d/minatoyokohama