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舞台『群盗』新里宏太インタビュー「言葉のパワー、人間本来のエネルギーがぐっと集まった舞台」「得意の歌を封印し新たな挑戦」

2月18日(金)から2月27日(日)まで、富士見市民文化会館キラリ ふじみメインホールにて、後世に大きな影響を与えたシラーの処女戯曲を原作とした舞台『群盗』が上演される。日本でもオペラやストレートプレイ、宝塚歌劇団ではミュージカルとして数多く上演され、韓国ではハ・ジョンウとカン・ドンウォン出演で映画にもなった名作だ。(18日(金)~21日(月)までの上演休止。2/18追記)

今回の上演では、数々のショーの演出を手掛け、「ムーミンバレーパーク」のクリエイティブディレクターも務める小栗了が、初めて演劇作品の演出を手がける。
出演は6年ぶりの舞台出演となる小出恵介が主人公のカールを、オーディションで選ばれた池田朱那がヒロイン演じる。

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今回、Astageではカールの弟・フランツ役を演じる新里宏太にインタビューを行った。
歌手として、ミュージカル俳優として活躍してきた新里宏太にとって、この『群盗』がストレートプレイへの初出演。新たな挑戦への期待と意気込みを語ってもらった。

―製作発表では緊張しているとおっしゃっていましたが、公演まで2週間となった今はいかがですか?
稽古が始まってだいぶ経ったので、緊張はなくなりましたが、僕が演じるフランツという役が重要な役なので、そのプレッシャーは大きいです。でも、楽しむ余裕を持てているというのかな…楽しくやらせてもらっています。

―フランツ役が重要だというあたり、詳しく教えてもらえますか?策略をめぐらし兄を陥れる弟だとか。
当時は長男が大事にされる時代で、カールが長男で、フランツは次男。フランツにはフランツの正義があり思いがあり、それらを全部加味した上で出来上がった人物です。
研究者の間にもいろいろな見解があるようですが、フランツがこの物語を操っていく・動かしていくキーパーソンで、周りの人たちを振り回し操っていかなきゃいけない。僕が遠慮なく皆を振り回していかなくては、その場面が勿体ないですし、そこが楽しまなきゃいけないところですが、今はまだ、空間を支配しきれていない部分もあって、フランツ役を楽しめてないところも、まだちょっとあります。
というのも、台詞の量もかなり多いので、これまでの稽古期間では、演技を楽しむ以前の部分に重きを置いて時間をかけてきたので。
セットを組んでの稽古が始まったばかりなので、これからはフランツの人柄を見せていく点に重きを置いて稽古していきたいと思っています。良い人だとはなかなか思ってもらえそうにないフランツですけれど…。

―単純な悪役ではないようですね?
現代の人から見るとフランツは性格も悪い奴かもしれませんが、幕が開いてから閉じるまでに、お客様にフランツに対して「悪い奴だ」という以外の感情が芽生えたら…それは哀れみでもいいですし、同情でもいいので…「僕はフランツを演じられたんだ」と思えるのかなと思います。

―長男のカール役を演じる小出さんと兄弟役というのは?
兄弟ではありますジが、カールは盗賊団を作って、フランツは城にいる貴族で、直接ふたりがやり取りする場面がないのですが、稽古場で小出さんのお芝居を見ながら「ちょっとしぐさをまねてみようかな」「動きがシンクロするようなところがあったらおもしろいかな」と思ったので、余裕が出てきたら、そういうところを表現して、観ている方に兄弟だという感じが伝えられたら嬉しいなと思っています。

―シラー作だ、古典のストレートプレイだと聞くと、「難しいのでは?」と思ってしまうのですが…
僕はこれまでにあまり古典をやった経験がなかったので、古典への苦手意識はなかったのですが、初めてこのお話を頂いたときに「難しいのだろうな」という思いはあって、台本を読んでみても難しいところがたくさんありました。でも、稽古中に小栗さんを交えて、皆でたくさん話し合って、現代の人にもわかりやすいようにかみ砕いた表現へとどんどん変えていったので、最初に比べると、ぐっとわかりやすくなりました。なので、古典に馴染みのない方は、ぜひ、この『群盗』を古典に親しむ始まりにしてほしいと思いますし、古典が大好きな方も楽しめる脚本になってきていると思います。

―すごく安心しました。
ひとつの台詞の解釈で1~2時間話し合うことがよくありました。今思うと、そういう時間があったから、お客様にもわかって頂きやすくなり、僕の理解もより深まり、より良い表現にできると思うので、とても大事な時間だったと思います。

―古典であっても、今の私たちと遠くないお話でしょうか?
共感できます!時間がどう戻ろうが、進もうが、人間は人間なんだと思えますし、コロナでいろいろストレスを抱え、しがらみの中に生きる今、シラーの『群盗』に共感してもらえる部分は多いのではないかと思います

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―衣装を着ているお写真を拝見したのですが、衣装もかっこいいですね。
ありがとうございます。カール率いる盗賊団とフランツの貴族側と、衣装もはっきり違っていて、貴族の衣装もとてもかっこいいんですけれど、僕としては小出さんのカールを見て欲しいなぁ。かっこいい!とにかくかっこいいんです。

―では、小出さんについて教えて頂けますか。
会見の時に初めてお会いして、稽古場からいろいろお話させて頂くようになったのですが、「周りに影響されずに、自分のペースを保って、自分の歩幅で進んでいける方だな」「個性的な方だな」というのが率直な印象です。僕は諸先輩方のスピードを見て「追いつけない」と駆り立てられるような気持ちに陥ってしまうことも多いので、すごく勉強になりました。しかも小出さんは引っ張るというよりも背中を見せてくださる座長で、小出さんが稽古場に最後まで残って稽古している姿を見て「自分もやらなきゃ」とエンジンを掛けてもらいました。
小出さんは背中を見せて引っ張って行ける男性で、本当にかっこいい。僕はおしゃべりな方なので(笑)、僕にはないところだな…と。僕は20代半ばになったばかりですが、「これから30代に向けて、こういうかっこいい大人になれるといいな」と思いました。

―演出の小栗了さんからはアドバイスなどもらわれましたか?
小栗さんはとてもいっぱいお話をしてくださり、感謝しています。稽古を始めてからもたくさん褒めて頂いたことも励みになりました。もちろん稽古で「もっとこうしていこう」という指摘は頂きましたけれど「新里がフランツでよかったよ」と言ってくださるので「期待に答えなきゃ」と思っています。そしてフランツとして楽しんで、もっと余裕をもって空間を支配していきたいと思っています。

―会見では「本作をターニングポイントにしたい」ともおっしゃっていましたね。
本当にそう思って取り組んでいます。ストレートプレイが初めてというのもありますし、これまでにこんなに多くの先輩方がいる現場はなかったので、稽古始めから「ここでたくさん吸収しなきゃ、俳優としてのターニングポイントにはならない」と思っていたので、たくさんコミュニケーションをとりながら、アピールするところはアピールしつつ、一日一日がとても充実した濃い時間です。

―ファンの方も初めての見る新里さんの姿があるかもしれませんね。
僕が“ワル”をやるのを見るのは初めてだと思います。今まで応援してくださってきた方々には新たな一面を見せたいですし、この作品で初めて新里を知ってくださる方にも、何かひとつでも印象に残るような役者でいたいと稽古をしながら思いました。

―今回、新里さんの歌は無いのでしょうか?
僕の歌は無いです。(笑) 最初、小栗さんは「歌わせたい」とおっしゃってくださったのですが、今回は僕の得意なものを封印して挑ませて頂く、本当に成長の時間になっています。もし歌があったら「そこで頑張ろう」という気持ちに逃げてしまうかもしれないとも思うので、それが無い今の環境を幸せだと思っています。
歌を楽しみにしてくださっている方がいたら、また別の機会をお待ちいただいて、この『群盗』では演じる新里を楽しんで頂けたらと思います。

―観劇に来てくださる方、まだ迷っている方へメッセージをお願いします
簡単に「観に来てください」とは言えない時期で、観に来るのが正解なのか、来ない方が正しいのか、それはご自身が選んだ方が正解だと思います。
「僕らが演じるエネルギーが、ご覧になる方の活力になれば」と、舞台に立つ人間はよく言いますが、僕らもお客様からエネルギーをもらって次の公演へとつながっていくので、この大変な時期を一緒に乗り越えたいという思いが強くあります。
そして、『群盗』を観て頂けたら、『群盗』の時代に生まれてきた人たちの哀しさを感じるでしょうし、今この時期だからこそ、フランツに共感してくださる方が多いだろうと思うので、たくさんの方に観て頂きたい作品です。古典だから、難しそうだからということで躊躇されていましたら、そんな心配は要らない、楽しめる作品です。
言葉のパワー、人間本来のエネルギーがぐっと集まった舞台だと思うので、劇場に来ていただけたら、きっと心に何か届くもの、思うことがたくさんあると思います。観て頂けたら嬉しいです。

『群盗』
日程:2022年2月18日(金)~2月27日(日)(18日(金)~21日(月)までの上演休止。2/18追記)
会場:富士見市民文化会館キラリ ふじみメインホール
<スタッフ>
原作:フリードリヒ・フォン・シラー
演出・上演台本:小栗了
<出演>
小出恵介
池田朱那、新里宏太
鍛治直人、塚本幸男、山口翔悟、妹尾正文、伊藤武雄
久道成光、上杉潤、西村大樹、中島拓人、今村俊一
尾形存恆、鈴木康史、池原滉大、太田龍之丞、佐々木崚雅
制作:群盗実行委員会
主催:合同会社VOLTEX
後援:ドイツ連邦共和国大使館
舞台「群盗」公式ホームページ https://www.mizuhodai-warehouse.jp
舞台「群盗」公式インスタグラム「guntou2022」