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舞台『室温~夜の音楽~』取材会 河原雅彦と古川雄輝と浜野謙太が参加

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6月25日(土)より上演される古川雄輝主演の舞台『室温~夜の音楽~』の合同取材会が、5月31日に行われた。
演出の河原雅彦、主演の古川雄輝と、本作の音楽・演奏を担当する在日ファンクのメインボーカルでもあり、さらに俳優としても出演する浜野謙太の三名が参加し見どころを語ってくれた。

2001 年にケラリーノ・サンドロヴィッチの作・演出で注目を集めた戯曲に、演出の河原雅彦がほれ込み上演が実現した今回の公演。
2001年の上演では たま の生演奏が注目されたが、今回は、“新しい時代のディープファンクバンド”在日ファンクが音楽と演奏を手掛け、古川雄輝、平野綾 坪倉由幸(我が家) 浜野謙太 長井短 堀部圭亮という個性ある俳優たちがそろう。

6月25日(土)より7月10日(日)まで世田谷パブリックシアターにて、7月22日(金)より24日(日)まで兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演される。

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河原雅彦 古川雄輝 浜野謙太

―作品の魅力と稽古の手ごたえについて
河原:本作を21年前に拝見しました。演出家という仕事柄、20年間面白い本を常に気にしていて、ケラさんの作品は見る機会も多くて、とても尊敬している面白い作家さんですが、演出する立場になるとなかなか感性というものがあずかるにはハードルが高い。ナンセンな部分もあるので。KERAさんの作品でやってみたいなと思った時に真っ先に浮かんだのがこの作品でした。
僕は音楽が好きなので、これまでもいろんなバンドやミュージシャンとお仕事させて頂いて、何年かに一回、ミュージシャンとコラボしないといいられなくて、ミュージシャンも探していて合致したのが本作でした。
本作はたまさんありきで作られた作品だったので、たまが解散して、KERAさんももう世に出ることはないと思っていた作品でした。たまの世界観は本作同様に唯一無二で、「室温」は音楽と共にある作品でしたから。
そこでこの作品と一緒にコラボできるバンドはないかと思った時に、音楽性は全く違っているのですが、土着感から考えて、パンクだと思って、在日ファンクさんだと。浜野さんのお芝居はよく拝見していましたが、お仕事は一緒にしたことがなく、まずは在日ファンクさんとお仕事させてもらえないかとお話ししました。組めなかったらやっていなかったです。おフォア―させてもらって受けて頂いて、こうしてお話できて幸せです。

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―どんな内容の作品ですか?
河原: KERAさんの作品をまとめてお話するのは簡単ではないのですが、実際にあったコンクリート殺人事件をモチーフにしています。物語の舞台は彼ら住む寂れた漁村です。美人の双子と父親が居たのですが、妹が事件で亡くなってしまった。妹の命日に変わった人たちが訪ねてきて、とんでもないことになる一日の物語です。ホラーコメディと銘打たれていますが、KERAさんの作品は世にあるものとは違って文学的で深遠で、居心地が悪くなる得体の知れない気味の悪さがベースになっていて、それをいろんなバランスの中でみせている。それをコメディで見せることの難しさを分かってはいたけど、稽古に入って改めて感じています。ホラーコメディは笑いに来てくださいと言うのとは違う。ブラックファンタジーの一面もあって、ジャンル分けできないカオスが魅力な作品です。

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― バンドとして参加するあり方は?
浜野:河原さんとイチから組み立てさせて頂き、共感する気持ちが強く、ともすれば演出にも口を出しそうになる。(河原が「黙って言うことをきいてしまいそうになる」と笑う)すごく乗ってきています。 このために書き下ろした新曲が入っていて、心広く、その場を提供してくれたことにとても感謝しています。
最初、バンドのメンバーは「芝居で演奏するの?」という疑心暗鬼な感じがあったのですが、やりはじめたらのっています。ライブだけでは表現できなかったことが、もしかしたら今の曲制作で引き出されている可能性があって、バンドはすごくのっています。新しい一歩を踏み出させて頂いて感謝しています。

河原:ゴージャスになると思います。たまさんから音楽を変える時点で、見た目も真逆に振っちゃえぐらいのつもりでしたので、これまでいろいろな舞台制作をしてきましたが、こんな編成でやったことはない。いまはまだ、役者もイメージしきれていないと思いますが、舞台上で演奏してくれると、KERAさんの作品との良いギャップになるのではないかなと思います。

―稽古が始まって2週間でしょうか?いかがですか?
古川:舞台出演が3年ぶりになるので、映像作品では稽古がないので、すごく新鮮さがあり、久しぶりにやるので楽しくと思いつつ、まだそこには至れていません。稽古始まって一週間ぐらいですが、稽古だけでなく、役を紐解く時間をとっていて、話し合いながら役の共通認識を作っている段階なので、もっと進むと楽しみながらできるのかなと思うのですが、まだ必死に役柄をやろうという状態です。
でも普段はそこまで時間がないので、今回は役柄と向き合う良い時間を過ごせているのかなと思います。

―稽古が始まって音楽との相性は?稽古の手ごたえは?
河原 稽古中ですが、良い芝居をつくらないとバンドにもっていかれちゃうと思うくらい、はまっていると思います。歌詞が観念的というか、具体的でなく想像力をかきたてられる歌詞なので、KERAさんの本と合うなと。おしゃれなKERAさんとおしゃれ同志で合うと思います。とてもいい感じだと思います。
最初にプレゼンとして在日ファンクさんに交渉するために、バントと演劇の融合がイメージが沸かないだろうと思って既存曲の中から、ここでこの曲と選んで仮はめしたものを作ってみたら、想像以上にはまって、正しい選択だったと思って提示しました。既存曲で行けると思っていたら、作品に寄り添った新曲を書いてくれることになって感謝しているし、音楽が良すぎて、芝居を音楽に近づけているところです。

浜野:メンバーは最初、懐疑的でしたが、在日ファンクの詩の部分が観念的だったりするところを広げてもらえるのではと思ってメンバーを説得したら、すごく深くかかわって頂いたので、音の雰囲気の注文もありますし、歌詞の世界観をすごくくみ取ってもらえたのもあります。
ライブだとノリのいい曲やらないと…ということもあり、「なんだ、この曲」と言われそうで、あまり表立ってだせなかった曲や、なんだかよくわからないけど不気味な曲とかをだせてうれしかったです。
KERAさんの台本には何重にもなっていて、裏があって裏があって意味があってというお話をされているのを聞いて、常日頃そういう曲を書きたいと思っているのがあって。最初にファンキーサウンドに乗せてバンと出しちゃう癖があるのですが、そこからダブルミーニングさせたりするところが、近いと思ってもらえたらいいなと。めくって裏があるとめちゃくちゃこわいじゃないですか、そういうところは僕らも大事にしていたりするところです。

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―演じる役については?
古川:今お答えできないです。稽古に入る前は「こうなんじゃないか」といろんな取材でも言っていましたが、いざ稽古が始まってみると、僕の本の読み方が深くなかったと。みんなで共通認識として、書かれていない部分も含めて話し合っている段階です。そうなってくると、そこまで思っていた人物像と違っていて、まさに今、その部分の稽古をしている段階で、「どういう役ですか?」と聞かれると、ちょっと難しくて答えられない。変わっていきます。河原さんのおしゃっていることをヒントに作り上げている段階です。

―河原さんから見て、古川雄輝どんな俳優ですか?
河原:声の大きくない俳優です。(笑) どういう俳優かは、どういう人かが重要で、古川さんはとても誠実だと思います。できた振りばかりする人が多い中で、できないことはできない、わからないことはわからないと(示してくれる)。現時点でわかることは、わからないなりにも先に進まなきゃいけないこともあるけれど、わからないなりにも要求したものに近いものを出してくれる。そこからなぜ、そうなのか、チューニングする時間があって互いに話し合ってということができるので、僕にとってはとても「その人の今」が良く見えてわかりやすいし、腑に落ちた時には古川君の魅力がそこにのびのびと加味されるので、オリジナリティのある間宮になるのではと思いながら見ています。止まっていることに対しても誠実に向き合うし、演出家にとってはとても信頼できる人だなと。
KERAさんの本は難しいので、できないのは当たり前で。「へぇ~」という台詞ひとつに周りが左右される。相槌一つで左右される。普通に読めば、さらりと読めてしまう脚本だけれど、稽古の最初はそういうところから入るので、2~3行やって止めて、と大変なんです。好きでやっていますが、大変だと思いながらやっています。僕も含め体力的にも奪われる本ですが、目指すところに到達できたら、とても素敵な作品になるとみんなでやっています。

― 3年ぶりの舞台への思いは?
古川:前回もそうでしたが、できない部分で壁にあたったりするんですが、3年経って他の現場も経験して、こうして舞台の現場に戻った時に、今はいけるかなと考えながら入るのですが、うまくいかない部分が当然たくさん出てくる。思っていたよりも何十倍も難しくて、だいぶ早い段階で壁にぶつかっちゃったなと。
さきほど河原さんがおっしゃっていた「へぇ~」の一言でということも、そこまで僕も読みこめていなかったので、難しいなと思いながらやっています。

―浜野さんは俳優として運転手の木村役でも出演されますね。
浜野:木村がメインキャストたちとは違う立ち位置なのも大きくて。昨日も河原さんとはファンタージー側の人間だと話をされていたので、そうかと。最初に河原さんが「大きなストーリーから逆算しないで作ってみよう」とおっしゃっていて、まさに木村は断片の連続で、何を考えているのかわからない状態で、僕も台本が手放せない。枕元に置いて寝る。サウナでも練習してました。「えっ」がたくさんあって、すべて違う。これから完成するのだと思っています。

河原:一口で楽しいとか悲しいと言うのは好きではなくて、いろんな感情を持って帰ってもらえるものが好きで、多面的なのが好きなので、この話はどこまでも狂っていて、どこまでも美しい。その裏表と、どこまでもがすごく大事で。
本を預かると、勝ち負けじゃないのはわかっているのに、いつも勝ちたいと思います。KERAさんの初演にないものを醸せるはずなので、僕らが集まったからの面白さがないと負けだと思ってやっています。
本をあずかるということは、ただ「やりたい」ということだけで始めることではなくて、KERAさんには大きなリスペクトを持ちながら、けんかするような。
やってみないとわからないことが多いですし、再現する場合はまた違いますけれど、まずベースがある上に我々なりの「室温」を作るところまで到達しないとKERAさんに申し訳ないという気持ちがあります。今ベースを作っている最中ですが勝てるようにがんばります。

舞台『室温~夜の音楽~』
作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出:河原雅彦
音楽・演奏:在日ファンク
出演:古川雄輝 平野綾 坪倉由幸(我が家) 浜野謙太 長井短 堀部圭亮  他
【東京公演】2022年6月25日(土)~7月10日(日) 世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】2022年7月22日(金)~24日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール