9月15日(木)からBunkamuraシアターコクーンで上演中のスペインの伝説的劇作家、フェデリコ・ガルシーア・ロルカによる官能的な名作 舞台『血の婚礼』を観劇した。舞台写真撮影:宮川舞子 サギサカユウマ Astage
本作は、今、最も多忙といわれる演出家のひとり・杉原邦生が演出。古典を多く手掛けながら、歌舞伎にラップを取り入れるなど、その演出手法は高い評価を得て、活躍の場をどんどん広げている演出家だ。台本は田尻陽一が新たに翻訳。木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭けい 他が出演する。
描かれるのは南スペインのある村を舞台に、若い男女が結婚式を迎えようとするとき、花嫁の昔の恋人が現れ、すべてを変えてしまう…という物語。
演出と舞台セット、生演奏の音楽がどれも斬新で、俳優陣の熱く丁寧な演技と対を成しているようにも思える。鑑賞後には演劇を観たというだけではない、不思議な満足感を感じさせてくれる作品となっていた。
まず驚いたのは、斬新な舞台セット。舞台は白い板で囲まれ、舞台袖がない。基本的にメインキャストは客席側から舞台に上がる。舞台の床は板ならぬ土。照明がむき出しで、白い板に影が投影されている。こんな舞台セットは、見たことがない。
開演は“花婿”(須賀健太)を母親(安蘭けい)が、客席を通って舞台にあがってから、二人がスタンバイした後に暗転。大きな衝撃音と共に明かりがともり芝居がはじまる。
スタンバイする姿を見せるのも新鮮だ。
演出については、初日前の質疑応答で演出の杉原邦生が語っているので、そちらの動画をご覧頂くとしよう。(動画の開始後、11分頃から杉原の解説がはじまる) 終演まで、斬新な演出は続きますよ。
キャストたちの演技は、とても緻密で丁寧。
花嫁の昔の恋人を演じる木村達成は、登場シーンは多くはないものの、最初から心の奥の鬱屈したエネルギーを今にも爆発させんばかり。そして、そのエネルギーが絶えることがない。
花嫁の早見あかりは、複雑な心の葛藤を台詞だけに頼らず表現しようする。
その冒頭から仇への激しい憎しみと息子への愛を表す母の安蘭けいと、そんな母をなだめる息子の須賀健太。ふたりの心のテンションの変化にも引き付けられる。
見どころは本番中だけではなく、幕間にもあり。大まかな筋がわかっていても、わかっているからこそ面白い演劇の醍醐味を味わってほしい。
東京公演は10月2日(日)まで、Bunkamuraシアターコクーンにて。その後、大阪公演が10月15日(土)~16日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。お見逃しなく。
舞台『血の婚礼』
<スタッフ>
原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
翻訳:田尻陽一
演出:杉原邦生
音楽:角銅真実、古川麦
<キャスト>
木村達成
須賀健太
早見あかり
南沢奈央
吉見一豊
内田淳子
大西多摩恵
出口稚子
皆藤空良
安蘭けい
<東京公演>
期間:2022年9月15日(木)~10月2日(日)
会場:Bunkamuraシアターコクーン
主催・企画制作:ホリプロ
<大阪公演>
期間:2022年10月15日(土)~16日(日)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
<演奏>
古川麦
HAMA
巌裕美子
公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/chinokonrei2022/
公式Twitter:https://twitter.com/chinokonrei #舞台血の婚礼