11 月 3 日(木・祝)~ 11 月 20 日(日)に世田谷パブリックシアターにて舞台『夏の砂の上』が上演される。
1998年に初演された本作は、1999 年読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞した松田正隆の代表作の一つ。長崎を舞台に職を失い妻に去られた男と彼を取り巻く人たちとの会話が、一見淡々とした日々に漂うやるせなさや悲しみを描き出す作品だ。
今回、Astageにご登場いただくのは、映像作品で大活躍する山田杏奈。
今年だけでもドラマ『未来への10カウント』『17才の帝国』『新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~』『鵜頭川村事件』『早朝始発の殺風景』に出演する若手実力派だが、本作が舞台初出演となる。
演じるのは、主人公・小浦治(田中圭)の元に預けられ、同居生活を始める治の姪・優子役。
初舞台へ賭ける思いを聞いた。
山田杏奈 田中圭 西田尚美 撮影:若木信吾
―本作が初舞台だそうですね。
今回のお話が決まったのは2年位前で、それ以前からマネージャーさんと「ゆくゆくは舞台をやろう」と話はしていたので、このタイミングでやらせていただけるのは、とっても面白い巡り合わせで運がいいと思います。舞台をやったことがない私に、このタイミングでこの役を依頼してくださったのもすごくありがたいことだと思いました。
ただ、やはり舞台は怖いなという思いがあったので、出演が決まってからの2年間はずっと頭のどこかに「舞台がある」という緊張感があって、「来年だ」「春が過ぎて、夏が過ぎたら舞台だ」と思いながら過ごしていました。
―映像作品で大活躍しておられて、とてもお忙しい中、怖いとも思った舞台にあえて挑戦するのはなぜですか?
マネージャーさんから「舞台と映像では演技の表現方法が全く違うから、絶対にやった方がいいよ」とずっと以前から言われていました。私は「はい。いずれやるときにはがんばります」と返事はしていたのですが、最近になって、マネージャーさんのその言葉の意味が少しわかる気がしています。
今年は特に多くのドラマに出演させていただいていました。ドラマスの制作はスピード感があって、セリフを覚えて演じて、覚えて演じての繰り返しで、1日するっと終わってしまう日もあって、そこに慣れが出てきてしまったなと思う瞬間もありました。撮影がある程度進んでくると「この役でこういうシーンなら、 今までのこのやり方でいけばよいだろう」とスルスルと考えられるようになってしまっていて、1つ1つの芝居に対してちゃんと向き合うという感覚が麻痺してきているのではないかという気がすることもありました。
なので、今、このタイミングで舞台をやらせていただくことで、 1つの役に時間をかけて向き合えるのはとても大切だと感じています。自分がこういう方向で芝居をしようと思っているときに、その考え方の経路をぶち壊される経験もしておかなきゃいけないと思いましたし、今がその時期なのだと思っています。
舞台は映像作品とは役の作り方もまた違うでしょうし、喋り方さえもいつもとは変わるかもしれません。それが不安でもあり楽しみでもあります。このタイミングでそれができることはすごく幸せですし、一度違う方向性の舞台で演技をして、映像作品に戻ったら、また違った感覚で演技ができるのかなとも思っています。
―では本作の出演が決まってからは、舞台もたくさんご覧になりましたか?
栗山さんの舞台も、他の作品も今までより拝見しました。舞台出演が決まる前は、本当にただただ楽しく見て「舞台に立つ方は本当にすごいな」と思っていましたが、1年後・半年後に自分が本当に舞台に立つのだと思って観ると、どの作品でも観客がものすごい熱量を直接受け取って帰られるので、それを届ける側に立てるというのはちょっと楽しみだと、やっと最近思えるようになりました。
―楽しみになってよかったです。さて、この『夏の砂の上』という作品は、あらすじだけを見ると「難しいのかも?」と思う方もいると思いますが、山田さんは脚本を読まれていかがでしたか?
まだ稽古前で作品を読み切れていないのですが、とても静かなお話だと思いました。 「こういう話です」と簡単に言葉にできないと思いますが、台本を読んだだけで人物が生きている様やその空気感を感じました。色や乾燥度や温度感が大事な作品なのかなと思うので、舞台を見て、その空気の中に一緒に居ようと思ってもらえる作品だと思います。難しそうだからと敬遠しないでもらえたらと思います。
―映像とは違う、生の空気を味わえる作品なのですね。
それが私もすごく楽しみです。舞台セットも変わらない、ひとつの空間の中で進むお話です。
舞台出演は初めてですけれど、精一杯考えて、そこで起きることに素直に反応できるようにしていたいなと思います。
―演出が栗山民也さんということで、たくさんの方から「うらやましい」と言われたそうですね。
はい。本当に私は舞台のことについては何にもわからないので、(にっこりと笑って)栗山さんがいろいろと教えてくださる方だと聞いて、ちょっと安心しています。1つの役に時間をかけて向き合う経験がなくて、舞台や役、作品についてもわからないことが多いので、自分でもしっかり台本を読んでいきますが、まっさらな気持ちで飛び込んで、お話させさせてもらいながら作っていけたらいいなと思っています。
―ファンの方にとっては、生で山田さんの演技を見ることができる貴重な機会です。しかも地方公演もありますね。
確かにそうですね。私にとっては初舞台ですし、見届けてもらえたら嬉しいです。「この人の初舞台を見たんだよ」と言ってもえるように、がんばります!
撮影:若木信吾
『 夏 の 砂 の 上 』
【作】松田正隆 【演出】栗山民也
【出演】田中圭 西田尚美 山田杏奈
尾上寛之 松岡依都美 粕谷吉洋 深谷美歩 三村和敬
【日程】 2022 年 11 月 3 日(木・祝)~ 11 月 20 日(日)
【会場】世田谷パブリックシアター(*兵庫、宮崎、愛知、長野にてツアー公演あり)
【お問合せ】 世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515
【主催】 公益財団法人せたがや文化財団 【企画制作】 世田谷パブリックシアター
【後援】 世田谷区
公式HP:https://setagaya-pt.jp/performances/2202211natsunosunanoue.html
【ツアー情報】
●兵庫公演
[日程] 11 月 26 日(土) ~11 月 27 日(日)
[会場] 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
[主催] 兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
●宮崎公演
[日程] 12 月 3 日(土)~12 月 4 日(日)
[会場] メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場) 演劇ホール
[主催] 公益財団法人宮崎県立芸術劇場、公益社団法人全国公立文化施設協会
[共催] MRT 宮崎放送
●愛知公演
[日程] 12 月 10 日(土)~12 月 11 日(日)
[会場] 刈谷市総合文化センター 大ホール
[主催] メ~テレ、メ~テレ事業
[共催] 刈谷市、刈谷市教育委員会、刈谷市総合文化センター(KCSN 共同事業体)
●長野公演
[日程] 12 月 16 日(金)~12 月 17 日(土)
[会場] まつもと市民芸術館 主ホール
[主催] 一般財団法人松本市芸術文化振興財団
[後援] 松本市、松本市教育委員会