2023年1月15日(日)より東京・大阪・福岡にて、第二次世界大戦直前に”上海の薔薇”と呼ばれた実在の日本人ダンサー・マヌエラの愛と激動の半生を描いた舞台『マヌエラ』が上演される。この舞台は1999年に上演され、好評を博した作品だ。
24年ぶりの今回の上演で美貌のスターダンサー”マヌエラ”を演じる珠城りょうと、彼女と上海で出会う日本海軍中尉・和田を演じる渡辺大が本作への思いを語ってくれた。
―本作は珠城さんの2021年8月の宝塚歌劇団退団後初主演舞台ですね。出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
珠城:主演ということも驚きましたが、作品内容についてはファンタジーの世界を描いたものではないと伺ったので、身の引き締まる思いでお受けしました。
―渡辺さんは『魔界転生』(2021年)が初舞台で、今回は2度目の舞台出演ですね?
渡辺:ここ20年間はずっと映像の仕事をやってきて、生のお客様を目の前にして芝居をすることがなかったのですが、昨年、やっと舞台への思いがかなったという感じです。ただ『魔界転生』は55公演だったので、ちょっとドキドキはしたんですけれども、なかなか映像ではできないような皆さんとじっくりと作品作りをして、長い稽古・公演期間をご一緒できて、本当に楽しくて「近いうちにまた舞台をやれたらいいな」と思っていました。こうして、また皆さんの前で芝居することができるのは楽しみです。
―脚本をご覧になった印象はいかがでしたか? 見どころになりそうなところも教えてください。
渡辺:会話の端々に感情の動きが繊細に描かれています。台本の中だけでは、マヌエラの魅力やダンサーとしての表現がどんなものなのか、彼女に魅了されていく僕や他の人たちの人間らしさもわからないので、そこがどう表現されていくのか、とても見たいという思いでした。いろんな人が渦巻く上海が舞台なので、その世界観が舞台でどう広がっていくのかも楽しみだと思いました。
珠城:第二次世界大戦直前という時代を取り上げるので、重い作品ではないかと思われるかもしれませんが、その中にも様々な人間模様が描かれていて、会話の中でクスッと笑っていただけるようなところもあります。マヌエラ自身もかなり強い女性だと受け取られがちですが、芯はあれど女性らしいチャーミングな部分もたくさん描かれているので「ひとりの女性として可愛らしい部分もあるんだな」と思っていただけたらと思います。
マヌエラの心情を表現するにあたって、ダンスの部分がどうなるのかは、お稽古の中で私自身もわかっていくところだと思うので、そこも楽しみにしています。
―お好きなシーンは?
珠城:好きなシーンはたくさんありますけれど、最後の方で(渡辺)大さん演じる和田海軍中尉と二人のシーンが、そこまでに溜めていた感情が一気に流れていくようなドラマチックな場面で、そこからラストにかけてが幕が閉まる時にお客様の心にどういったものが残るかという大切な場面になると思うので、情熱的に大切に演じたいと思います。そこにいたるまでに自分がどういう感情になるのかも非常に楽しみです。
―相手役が男性になるという点はいかがでしょうか?
珠城:宝塚を退団してからそういった質問をよくいただくのですが、演じる上では相手役が男性でも女性でも変わりないと思いますね。ただ大さんの持っていらっしゃる包容力や、男性だからこその力強さがあると思うので、たくさんリードしていただけるのではと思っています。
―渡辺さんのお好きなシーンは?
渡辺:珠ちゃん演じるマヌエラが上海を自在に生きる、その世界観も面白いと思いますし、ダイナミックに描いていただけると思うので、舞台になった時に、どれぐらい大きく見えてくるんだろうというのも、すごく楽しみです。大日本帝国の終焉が始まるところで本作は終わります。それによって始まることもあって「この後どうなるんだろうな?」とお客様に思って頂けるような話になります。
―珠城さんご自身がマヌエラに共感する部分はありますか?
珠城:マヌエラは劇中でも「私は踊るために生まれてきたのだ」「私は国を捨てた」と言っています。上海租界という場所で、日本人女性が1人で生きていくためには、自分で自分の居場所を見つけるしかなく、何にも縛られず己の感情を表現することができるダンスに喜びや幸せを見出してのめり込んでいったんだと思います。感情や魂をステージ上で開放して表現するというのは、自分にも非常に共感できるところです。自分ではないような感覚になったり、普段の自分だったらそこまで出来ないのに、ステージで誰かの人生を生きている時は、普段の自分とは違うエネルギーが生まれてきたりすることもあるので、それはマヌエラが何かを表現する時のエネルギーと共通するかもしれません。
でも彼女にとってはダンスが居場所みたいなところがあったので、そういった部分は、今の私とは異なるのかなとは思います。でも、なぜ彼女が頑なに踊りにしがみつくのか、なぜ日本の軍人を嫌悪していているのかについては、言葉にしている部分もあるので、そのあたりは丁寧に演じていきたいと思いますし、ダンスを通して彼女の心情を表現していきたいと思っています。
―珠城さんは先月終えられたばかりのライブツアーで「こんなドレスは初めてで」とおっしゃっておられましたが、本作で衣装のリクエストはされましたか?
珠城:いいえ。たぶんチラシビジュアルでも着ているようなドレスになると思うので、着こなせるように身も心も引き締めたいと思います。
渡辺:僕も今回のライブを拝見させてもらって、珠ちゃんの立ち姿を改めて認識できました。
珠城:ライブではかなり高いヒールを履いていたので、本作では踊るのでもう少し低いヒールになると思いますが、ダンサーらしく立ち姿や所作は美しくしたいと思っています。ダンスをやっている方は痩せているというよりも、筋肉がついて引き締まっているという印象があるので、そういう身体作りが出来たらいいなと思っています。筋トレで作る身体とダンスでできる身体は違うと思うので、ダンスを練習しながら必要な筋肉をつけていきたいと思います。
―男役の頃とはフォルムも変わって…
珠城:ライブでもドレスは着ましたが、ダンサーさんは肩甲骨辺りもとても美しいので、今回は背中も意識したいと思います。
―渡辺さんは海軍中尉役ですね。
渡辺:これまでも軍人を演じることが多かったので、精神性などについては勉強してきたつもりですが、今回は今まで僕の演じてきた“国のため家族のため”というものから恋愛へ揺らいでいくという、僕にとっては初めての役どころです。ベーシックな所作などはしっかり押さえつつも、軍服を着ている時と脱いだ時の違いがはっきり描き分けられている人間らしさのすごくある役どころなので「そこはそういう意味があるんだな」というのを見ていただけたらいいかなと思っています。
―舞台で生のお姿を拝見できるのも楽しみにしております。今回は軍服姿ですね。
渡辺:軍服を着るとシャキッとなれるのですが、映像と違って舞台ではそれをずっと続けなくてはいけない。猫背になりやすいので、ちょっと大変かもしれませんが、集中力を持ちつづけられると思うので楽しみです。
―最後に楽しみにしている方へ、まだ迷っている方へ、メッセージをお願いできますか?
渡辺:戦争が始まる前の不穏な静けさの中、何が正常なのか、わからなくなるぐらいの不安定さが魅力の作品になると思います。1月の公演ですが寒さを忘れるような熱い公演、日常を忘れるような公演になると思うので、劇場に観に来ていただけたら幸いです。
珠城:会話がメインとなるストレートプレイですが、その中で音楽とダンスが融合して、また新しいかたちで再演されます。前回の『マヌエラ』をご覧いただいている方はもちろん、まだご覧いただいてない方にも、今回はまた新しいメッセージを受け取っていただけると思います。音楽はもちろんですが、登場人物のキャラクターが濃く、その時代の中でそれぞれが自分の人生を本当に一生懸命に生きていて、その思いがきっと舞台上から客席にほとばしるように伝わっていくと思います。人間の生きざまを皆様に楽しんで見ていただけたら嬉しいなと思います。私も新しい挑戦がたくさんありますので、それを皆さんと一緒に精一杯頑張りながら作っていきたいなと思います。寒い時期ではありますけれども、温まりに劇場に足をお運びいただけたらと思います。
PARCO PRODUCE 2023 『マヌエラ』
脚 本 鎌田敏夫
演 出・出演 千葉哲也
音 楽 玉麻尚一
振 付 本間憲一
出 演 珠城りょう 渡辺大 パックン(パックンマックン) 宮崎秋人 宮川浩
岡田亮輔 齋藤かなこ 磯部莉菜子 松本和宜 馬場亮成 榎本成志 松谷嵐 横田剛基
伯鞘麗名 永石千尋 平井琴望 佐藤アンドレア 平山ひかる
公式サイト https://stage.parco.jp/program/manuela/
ハッシュタグ #舞台マヌエラ
企画・製作 株式会社パルコ
東京公演
日 程 2023年1月15日(日)~1月23日(月)
会 場 東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
チケットに関するお問合せ サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(月~金12:00~15:00)
公演に関するお問合せ パルコステージ 03-3477-5858(時間短縮営業中)
https://stage.parco.jp/
大阪公演
日 程 2023年1月28日(土)~1月29日(日)
会 場 森ノ宮ピロティホール
チケットに関するお問合せ キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~18:00/日祝休業)
福岡公演
日 程 2023年1月31日(火)
会 場 北九州芸術劇場 大ホール
チケットに関するお問合せ ピクニックチケットセンター 050-3539-8330(平日12:00-15:00)