2023年3月から東京・愛知・山形・大阪にてミュージカル『ジキル&ハイド』が上演される。
今回、Astageのインタビューに応えてくれたのは、昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(三谷幸喜作)で源実朝役を務めた柿澤勇人。
初めて演じるジキル&ハイド役について、そしてミュージカルへの思いについて、お話し頂きました。
―本作のタイトルロールを演じると最初に聞かれた時はいかがでしたか?
すごく驚きました。初演の鹿賀丈史さん、石丸幹二さんの公演は拝見していましたが、その時には「自分がやりたい」とも「いつかやってみたい」とも思っておらず「やっぱり鹿賀さん、石丸さんという大スターの方が演じる役だな」と思っていました。そういう意味で、まず「僕でいいのかな」と驚き、プレッシャーを感じました。
でも「やるんだったら、ちゃんと向き合わないとできない役なので、しっかりやりたい」と思いました。
―オリジナルミュージカルの『東京ラブストーリー』での苦労とは、また違った苦労がありそうですね。
『東京ラブストーリー』では何年もかけてオリジナルキャスト、スタッフとして意見を出し合い、とことん話し合い、時には「もう無理だ」「全部ひっくり返したい」とか「もう逃げたい」とか思いながらも作ってきて、やっと成功にこぎ着けました。ゼロから作品を作るのは、本当に大変な仕事でした。
そういう意味で言うと、『ジキル&ハイド』は完成したものがあるので、その中でどれだけ表現するのか、あるいは、まったく違う方向性の表現を追求するのかを探ることになります。
おそらく「『ジキル&ハイド』はこうあるべき」というのもあると思うんです。それはもちろん僕も踏襲すべきところは踏襲したい。でも個人的な欲としては、僕がこの役をやる意味は、過去の作品をなぞることではないと思うので「そこはちょっと違うな」とか「こうしたい」というのがあったら…多分あると思うので、そういうところは、現場で話し合って変えていってもいいのかなと思っています。
本来、ジキル博士は若造と言っていい年齢で、大御所や権威を持つ人たちが揃った席で、ぽろっと自分の考えを明かしたら、頭ごなしに否定され、ひどく跳ね除けられた。でも彼は「この自分の信念通りにやって成功したら、きっと世界は変わる」と考えていた。そんな彼の若さ故に起きてしまったことでもあるのかなと思うので、そのあたりはしっかり脚本に沿いながら役作りをしていきたいと思っています。
―本当に大変な作品・役柄ですね。どう準備されるのですか?
僕は芝居にこだわりたくて、「1年間はミュージカルから離れたい」とお願いしてミュージカルから遠ざかっていた時期があります。でもミュージカルから離れると、喉も筋肉なので当然ですけど、声も衰えてくるんです。しかも1週間や2週間で戻るようなものではなくて。改めて「喉は地道に歌い続けて蓄積させていかないと保てないし、歌も上手くならない」「ミュージカルって、本当にすごいことをやっているんだな」と思いました。
―「芝居にこだわりたい」「ミュージカルから少し離れたい」と思われた理由は?
ミュージカルに出演し続けていると、新しい出会いがあまりなく、知っている方たちとばかりお芝居をすることになりがちなので、このままミュージカルだけに留まっていたら、僕の役者としてのキャリアも技術も成長しないのでは…と思ったのが理由の1つです。
もう1つの理由は、ミュージカルの現場は時間的なこともあって、どうしても技術的な歌と踊りから作品に入ることが多いんです。でもそれだと、一番根本であり大切な芝居の部分について突き詰め足らないことがあると感じて、改めてしっかり本を読んで、芝居からスタートしたくなったからです。
―そして映像作品でも大活躍されました。ミュージカルに何を持って帰ってこられましたか?
まだ自分でもよくはわからないですけど、役への考え方や掘り下げ方、役者としての生き方は、変わりつつあるかな…というか、以前から肌感覚で「これで間違いないよね?」「これでいいんだよな?」と感じてきたことが、やっぱり間違ってないんだと思えたことでしょうか。それが、今後の良い財産になったらいいなと思います。
―大河ドラマでも注目を集めた柿澤さんが、名作中の名作『ジキル&ハイド』に主演されるとあって、これまでミュージカルにあまり馴染みが無かった方にも大勢来て頂けると思います。改めて柿澤さんが感じておられるミュージカルの魅力と本作の見どころを教えていただけますか?
人間には喜怒哀楽だけじゃなくて、言葉で表せないぐらいの感情があって、それをエネルギーをあふれさせながら、歌や踊りで表すのがミュージカルだと思います。人間ができるすべてがフル稼働する瞬間を生で見られるのは、忘れられない衝撃になるし、それで人生が変わってしまうことが、たまにあるんです。僕がそうで、高校生の時に初めてミュージカル『ライオンキング』を見たときに「何だ!この作品?この世界は?舞台って何なんだ?」と、 人生がひっくり返るぐらいに驚きました。
ミュージカル『ジキル&ハイド』は、歌では人間としてやれることのマックスを出さないと伝えられない気がしますし、演技では善と悪という両極端を描いて、舞台上で瞬発的に2役を演じなければならない。そこにワイルドホーンさんの名曲がバンバン歌われる。演じている側は、エネルギーゲージの全てを使い果たすぐらいになると思うので、僕にとってもすごく大きな挑戦になると思います。1回1回の公演が大変なのはもちろんですが、公演は1回では終わらないので、身体と心のスタミナが必要になりますし、疲弊していたとしても、もっと限界まで追い込まないとできない役だと思うので、正直言えば怖いのは怖いです。でも、それは俳優として幸せなことですし、乗り越えなければいけない壁でもあると思っています。
「誰かの人生を変えよう」とまでは思わないですけど、初めてのミュージカルとして、この作品はうってつけだと思いますし、 ご覧になったら忘れられない1日になるんじゃないかと思います。
とにかく観ていただきたいです。大河ドラマでの僕とは、まったく違う僕をご覧頂けると思います。
ミュージカル 『ジキル&ハイド』
原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎
出演 ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド(ダブルキャスト) 石丸幹二 柿澤勇人
ルーシー・ハリス(ダブルキャスト) 笹本玲奈 真彩希帆
エマ・カルー(ダブルキャスト) Dream Ami 桜井玲香
ジョン・アターソン(ダブルキャスト) 石井一孝 上川一哉
サイモン・ストライド 畠中 洋
執事プール 佐藤 誓
ダンヴァース・カルー卿 栗原英雄
宮川 浩 川口竜也 伊藤俊彦 松之木天辺 塩田朋子
麻田キョウヤ 岡 施孜 上條 駿 川島大典
彩橋みゆ 真記子 町屋美咲 松永トモカ 三木麻衣子 玲実くれあ (五十音順)
スウィング:川口大地、舩山智香子
【東京公演】 2023 年 3 月 11 日(土)~28 日(火)
会場:東京国際フォーラム ホール C
主催・企画製作:東宝/ホリプロ
お問い合わせ:ホリプロチケットセンター 03-3490-4949(平日 11 時~18 時/土日祝休)
チケット(全席指定・税込):S席 14000 円 A席:9000 円 B席:5000 円(販売中)
https://www.tohostage.com/j-h/
https://horipro-stage.jp/stage/jekyllandhyde2023/
【愛知公演】 2023 年 4 月 8 日(土)17 時・9 日(日)12 時
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
【山形公演】 2023 年 4 月 15 日(土)13 時・16 日(日)13 時
会場:やまぎん県民ホール
【大阪公演】 2023 年 4 月 20 日(木)~23 日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール