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ミュージカル『生きる』 村井良大インタビュー「人生が変わるような気がする作品です」

9月7日(木)~24日(日) 新国立劇場 中劇場にて、2023年9月29日(金)~10月1日(日) 梅田芸術劇場メインホールにて、Daiwa House presents ミュージカル『生きる』が上演される。
黒澤明監督の名作映画から生まれたオリジナルのミュージカルで、2018年に世界初演。感動を呼んで、2020年に続いて、今秋、3度目の上演を果たす。

今年、役者生活50周年を迎えるミュージカル界のレジェンド、市村正親と鹿賀丈史が、己の残り少ない人生をかけて市民のために公園を作る男、主人公の渡辺勘治を初演から引き続き演じる。
さらに、村井良大、平方元基/上原理生(ダブルキャスト)、高野菜々(音楽座ミュージカル)、実咲凜音、福井晶一、鶴見辰吾という豪華な出演者が、個性あふれる人物たちを演じる。

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取材に応じてくれたのは、余命を知り、生き方を変えた勘治と向き合う勘治の息子、渡辺光男役を演じる村井良大。2020年に続いての出演となる。
本作の魅力と光男役への思いを明かしてくれた。

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―製作発表を拝見しました。お隣に座っておられた市村さんと目が合った瞬間に、おふたりがにっこりして頷き合っておられたのが、とても素敵でした。
いつも優しくしてくださるので。 2020年公演のことも、いろいろ思い出しました。

―製作発表では、前回はコロナ禍での公演だったことが印象的だったとお話されていましたが、他にはどんなことを強く覚えていますか?
前回、再演から参加するのは、僕がほぼ1人だったので、初演を作られた方々の雰囲気に馴染めるようにという気持ちで稽古に参加しました。初演を映像で拝見させていただいていたので、稽古の当初は、父を大切する息子ながら、父とは距離がある感じでやってみたのですが、稽古途中で演出の宮本亞門さんが「光男はお父さんを大切にしてません!」とおっしゃって。よくよく考えてみたら、僕も父を全然大切にしてなかったと気づいて。それで、それまでとは真逆の「お父さん、何やってるんですか!」という、叱咤激励ではなくて叱咤だけの、苦悩し、怒る息子に変わりました。
男同士だと「あ」「うん」だけで会話するような、本音を言わないようなところがあると思うんですよ。僕も「お父さん、今までありがとう」なんてことは絶対言えない。だから、勘治も光男に打ち明けたいけど言えなかった。言う機会がなかったと思うのです。
僕は、この作品の中で一番の悪役は光男だと思っています。さらに裏にいるのは、光男の妻の一枝なのですけどね。

―宮本亞門さんは、村井さんの演技を見て演出を変えたのでしょうか?
それはわからないですけれど、亞門さんがふと気付かれたのではないでしょうか。そして僕も気付かされました。
光男から見れば「仕事にも行かずに若い娘と遊びに行って、何をやっているのか?!」「恥ずかしいでしょ」となりますよ。この「恥ずかしい」は「世間の皆様に恥ずかしい」で、それはその昭和という時代に生きているからです。
光男たちが勘治の命が長くないことを知らなかったから、いろいろな擦れ違いや勘違いが起こって。お客様にも「勘治がかわいそうだ」と思っていただけて、日本人に響きやすい作品になったと思います。

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―光男役の難しさ、面白さを教えていただけますか?
怒りをキープするのが難しかったです。父親に対して「いかに新鮮に怒れるか」というところで。
でも、勘治役の市村さんと鹿賀さんとでは、役の作り方・心の動きが全然違うんです。僕は、市村さんは“逃げる勘治”で、鹿賀さんは“立ち尽くす勘治“だと感じていました。おふたりとお芝居をしていると「ここでこう来るんだ」とか「なぜそんな表情?」と面白くて。だから、おふたりとお芝居のキャッチボールをするのがすごく楽しかったです。お陰さまで毎回、新鮮にできたと思います。

―お芝居のキャッチボールのお話は、以前のインタビュー でうかがった「生でやりたい」という演技のスタイルのお話を思い出して、この作品でもそこで生まれる生のお芝居を拝見できるのだなと楽しみになりました。
さて、一枝さんのお話がでましたが、光男は一枝と一緒の場面が多いのですか?

基本的に一緒にいます。実は問題事の原因は、いつも妻なのです。父と息子夫婦で同居しているのですが、妻は妊娠中で、「新しい時代に、私たちの新しい家庭をつくるために、家を出ましょう」と誘ってきます。光男は「そうか。じゃあ、俺が親父に言うよ」という感じになるのですけれど、それが、いつもタイミングが合わなくて、親子がすれ違っていきます。

―今回から一枝役が実咲さんですね。
一枝役が実咲凜音さんのシングルキャストになるし、実咲さんがお話しやすい感じの方なので、一緒により深くお芝居を作ることができるのではと楽しみです。
この作品には、日常的なシーンが多いし、その普通に暮らしている様子を見て、お客様が「これは私たちの話なんだ」と感じ取って頂けると思うので、そこをきちんとお伝えしていきたいです。

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―全体の見どころもご紹介いただけますか。
どの世代、どの時代、どの国にも響くテーマなので、海外に通じる作品だと僕は思います。そして、ジェイソン・ハウランドさんの音楽がすごい。ミュージカルとして高らかに歌い上げるのでも、大声量を響かせるのでもない、微妙で優しい旋律で、奥行きがあって、日本人のDNAを感じさせてくれるような慎ましさがあって無理がない。本当に素晴らしいです。
僕が製作発表で歌った ♪あなたに届く言葉 という曲も奥行きがあり、内情的な深みのある曲です。歌唱披露には不向きな曲かもしれませんが、初めて劇中とは違うスタイルで普通に歌いました。芝居と結びつきやすい楽曲なので、公演では光男の怒りが動きにもなり、一部の歌詞を台詞・言葉にしていました。

―歌唱披露を拝見して、こんなにも多彩な曲があるのかと驚きました。
楽曲もバラエティに富んでいて、登場人物の人生観やキャラクター像がわかりやすく表現されているのも、この作品の面白い部分です。
重い作品のような印象があるかと思いますが、笑いもかなりありますよ。肩の力を抜いて気軽に見られる。そして、気がつくと寄り添うような気持ちになれる。いろいろあって、バランスも良くて、飽きることなく見られるところが、この作品の魅力です。

―最後に、まだ観ようか、どうしようかと迷っている方へ、メッセージをお願いします。
ミュージカル『生きる』は、これまでも「名作だ」「観た方がいいよ」と言われてきた作品です。劇場を出た後に「自分も新しい生き方をしていけるかな」と、背中を押してくれるような、人生が変わるような気がする作品です。まだ観ていない方、そして「もう観た」という方にも、是非ご覧頂きたいです。劇場でお待ちしております。

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Daiwa House presentsミュージカル『生きる』
東京公演2023年9月7日(木)~24日(日) 新国立劇場 中劇場
大阪公演2023年9月29日(金)~10月1日(日) 梅田芸術劇場メインホール
原作:黒澤 明 監督作品 「生きる」
(脚本:黒澤 明 橋本 忍 小國英雄)
作曲&編曲:ジェイソン・ハウランド
脚本&歌詞:高橋知伽江
演出:宮本亞門
出演:渡辺勘治:市村正親/鹿賀丈史(ダブルキャスト)
渡辺光男:村井良大
小説家:平方元基/上原理生(ダブルキャスト)
小田切とよ:高野菜々(音楽座ミュージカル)
渡辺一枝:実咲凜音
組長:福井晶一
助役:鶴見辰吾

佐藤 誓
重田千穂子
田村良太

治田 敦、内田紳一郎、鎌田誠樹、齋藤桐人、高木裕和、松原剛志、森山大輔
あべこ、彩橋みゆ、飯野めぐみ、五十嵐可絵、河合篤子、隼海 惺、原 広実、森 加織
スウィング 齋藤信吾、 大倉杏菜
安立悠佑

主催:ホリプロ/TBS/東宝/WOWOW
後援:TBSラジオ
特別協賛:大和ハウス工業

企画協力:黒澤プロダクション
企画制作:ホリプロ
公式HP=https://horipro-stage.jp/stage/ikiru2023/
公式Twitter=https://twitter.com/ikirumusical