9月9日(土)に東京・自由劇場にて開幕する、門井慶喜の同名小説を原作にした舞台『銀河鉄道の父』。その稽古場取材会が行われ、公開稽古と、主演の的場浩司、福田悠太(ふぉ~ゆ~)、大空ゆうひによる囲み取材が行われた。
本作が描くのは、「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」などで知られる宮沢賢治と、その父・政次郎を中心とした家族の物語。今年5月には映画も公開され注目を集めた作品である。舞台版は詩森ろばが脚本、青木豪が演出を手がけ、2020年に初演。今作は3年ぶりの再演となり、政次郎役の的場浩司、政次郎の妻・イチ役の大空ゆうひ、政次郎の父・喜助役の田鍋謙一郎が再集結。新キャストとして宮沢賢治を福田悠太(ふぉ~ゆ~)、妹・トシを駒井蓮、弟・清六を三浦拓真、政次郎の姉・ヤギをしゅはまはるみ、トシの女学校の恩師・西洞タミノを桑田亜紀が演じる。
公開稽古で披露されたのは、宮沢賢治が鉱石に興味を持ち始め“石っコ賢さん”と呼ばれていた幼少期から、親元を離れ盛岡中学校(現在の高校にあたる)に入学するまでの10分ほどのシーン。演出の青木が「映像であれば子供時代は子役が演じるのですが、せっかくの演劇なので、人形からスタートして大人の役者にスライドしていきます」と話したとおり、政次郎とイチの子供たち(賢治、トシ、清六)の幼少期は、それぞれの役者が人形を操りながら芝居をする。稽古は、その人形姿で川で拾った石を「牡蠣の化石だ!」と喜び、「波の音がしねが?」とトシ(駒井)に聞かせる賢治(福田)のシーンからスタート。波の音を「聞こえね」と言いながらも大好きな兄の言葉に導かれ想像を広げていくトシと、どこか未来の姿も連想させる賢治とのやり取りは、その目に映る広々とした世界を見せてくれる。そんなふたりに「賢治は質屋(宮沢家の家業)! トシは嫁!」と明治時代の生き方を説くのが政次郎(的場)だ。強面の的場が叱ると迫力が出そうなものだが、台詞のトーンや表情からどうにも隠し切れない愛情がにじみ出ていて柔らかい。その隣には赤ん坊の清六を抱いた妻・イチ(大空)がおり、政次郎とはまた違ったカタチの愛情がこぼれる。岩手弁も相まって、家族5人が醸し出す空気は温かで、お説教ですらいくらでも見ていたい気持ちにさせられるのが印象的だった。
一度シーンを通すと、青木が役者一人ひとりのそばに行き、その人物の心情や見せたいもの、時には場面の風景を説明し、そのうえで動きや台詞のトーンを提案する。役者たちも意見を出し合い、「そしたらこうするといいかも」「それでやってみよう」と進めていた。その雰囲気は活気がありにぎやか。このときはわかりやすい変更があったわけではないのだが、改めてシーンを通すと伝わるものがより明確になっていたり、人物がぐっと魅力的になっていたりして、見学していてとてもおもしろかった。
的場、福田、大空が参加した公開稽古後の囲み取材では、稽古について的場が「少人数の座組なので、和気あいあいと、一丸となって楽しくやれていると思います」と話し、福田も「宮沢賢治役ということで緊張していたのですが、的場さんがやさしく接してくださり、勇気をくださり、思い切ってお芝居できています」、大空も「キャストも変わりまた新しい家族をつくっています。稽古場も家族のように和気あいあいとしていて、とても楽しい座組です」と笑顔を見せる。再演である本作について的場は「演出の青木豪さんが初演をなぞるようなものにしないので、また違うものになっています。初演も素敵な作品ですが、今回も期待できる作品になるのでは」と自信をのぞかせる。今回から参加する福田が「再演からの参加は緊張したのですが、温かく迎えてくださった」と明かすと、大空が「緊張したと言ってますけど、初日からのびのびやっていた。賢治ってこういう人だったのかなと思わせてくれる瞬間がある」と笑い、的場も「悠太は自由にやってる。素敵ですよ」と太鼓判。最後はそれぞれ岩手弁で「がんばりやんす」(的場)「きばりやんす」(福田)「お待ちしてやんす」(大空)と意気込みを述べ、会見を締めた。
公演は9月9日(土)から東京・自由劇場にて。お見逃しなく。
舞台『銀河鉄道の父』
原作:門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社文庫)
脚本:詩森ろば
演出:青木豪
キャスト:
的場浩司
福田悠太(ふぉ~ゆ~)
三浦拓真
駒井蓮
田鍋謙一郎
しゅはまはるみ
桑田亜紀
大空ゆうひ
公演日程:2023年9月9日(土)〜9月16日(土)
会場:自由劇場
公式サイト:https://www.mmj-pro.co.jp/ginchichi/
©門井慶喜/講談社 ©舞台「銀河鉄道の父」製作委員会