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シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』 インタビュー 原田優一&大山真志 原田「例年になく早くから準備しています」 大山「今年も攻めているな」

2011年の初演から12年。毎回、日本の歴史に新たな視点から光を当て、楽しさあふれる公演を年末に上演してきた時代劇エンターテイメント「祭シリーズ」が、今年も12月28日~31日に明治座にて上演される。

13作目となる今作は、軍記「太平記」をモチーフに描くオリジナルミュージカル『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』。
脚本を担当するのは、「祭シリーズ」で初めて筆を執る池田テツヒロ。最近では朝の連続テレビ小説「らんまん」で主人公と同じ長屋の住人を演じ、俳優としては池田鉄洋の名で活躍しているので、ご存じの方も多いだろう。
演出は、2021年に「祭シリーズ」初のミュージカル『明治座で逆風に帆を張・る!!』を大成功に導いた原田優一。今回も俳優としても出演。大山真志演じる楠木正成の弟、楠木正季を演じる。

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楠木兄弟を演じる、大山真志&原田優一のおふたりに、「祭シリーズ」の思い出から今年の『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』(以下『る太』)の見どころまで、語って頂きました。

―今回再び演出を担当される原田さん。どこから作品づくりに加わっていらっしゃるのですか?
原田
:プロデューサーの「こういう構想はどうかな?」「こんな感じでいきたいんですけれど」「ミュージカルにしましょうか」という持ち出し会議あたりから加わりました。

―ということは、池田さんが脚本を書き始める前からですね。演出家がそこから加わって作るとは、さすがオリジナル作品ですね。
原田
:特に今回は例年になくスケジュールが早めに始まり、台本のあがり、衣裳の決定と早めに進んでいます。ミュージカルなので稽古に入るまでにやらなければいけないことがふんだんにありますが、一昨年の『明治座で逆風に帆を張・る!!』の時は初のミュージカルで、かなりバタバタしたんです。なので、今回は、余裕を持ってやってみようかと。

大山:だから、まだ9月ですけれど、今日は第二部のユニットの撮影とレコーディングです。例年だと、レコーディングするのは、だいたい11~12月の稽古中だよね。

―もう脚本も上がってきてて、構想がしっかりできている?
原田
:はい、池田さんもすごく早く書いてくださって。ありがたいです。

―物語の時代設定は鎌倉末期から南北朝ですね?
原田
:はい。書くには難しい時代だと思うんですよ。足利尊氏という人物の名前は知られていても、歴史好きの方でもあまり深くは知られていないと思いますし、時代もちょっと地味だと思うので、物語を練るにあたっては、かなりご苦労をおかけしたのではないかと思います。


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―楠木正成役を演じる大山さん。台本はもう届きましたか?
大山
:まださらっとしか読めてないんですけれど、商人気質というか結構泥臭い役で、僕が兄で優ちゃんが弟。(笑) 普段の優ちゃんとの関係性もキャラクターに活かしていければなと思いながら読みました。

―意外な兄弟のキャスティングでした。
大山
:優ちゃんとはダブルキャストをやらしてもらうことも多かったので、これまでもご覧になっていた方が、今回ご観になったら「やっぱり、この2人が兄弟やってると面白いな」と思ってもらえるんじゃないかなと思っています。

―原田さんは演出しながら出演もされるのですよね。
原田
:だからこそ真志に兄弟をやってもらえるのが心強い。自分が出ていると、そこは客観視できない。だから「もう、任せた。まーくん」という感じではありますね。
―固い信頼関係を感じました。泥臭いとおっしゃっていた楠木正成ですが、昭和の人間にとっては、“忠義を貫いた英雄”というイメージがあります。
原田
:キーポイントとなるキャラクターになりますね。

―演出家としては大山さんの正成にどんな期待を持っていらっしゃいますか?
大山
:真剣に聞いておこう!(原田に向き直して)
原田:商人気質と今おっしゃっていたけれど、自分の利益を求めていく中で何を選択すれば、自分にとって、国にとって、環境にとってもいいのかっていうところを、商人気質として選択していく役なので、日々生活の中での利益を求めていくところが、我々にとっても観客の皆様にとっても、一番共感する役になるんじゃないかなと思います。そこを真志なら人間らしく演じてくれると思っております。

―旧来のひたすら天皇に忠実な忠臣というイメージとは
原田
:ちょっと違う感じではありますね。
大山:もっと人間臭くて、「なんか、これ面白そう」と感じる方へ進む人で、人生にギャンブル感を求めているようなところに、自分との共通点を感じたりもして、すんなりこの役に入っていけそうだなと思っています。

―人生にギャンブル感ですか?
大山
:「こっちをやった方が面白いでしょう」という方をいつも選んでしまう人生なので。
原田:自分もそうです。そうじゃなかったら、この仕事を選んでない。もっと堅い仕事を選んでいると思います。
大山:そうですね!

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ーこの年末の「祭シリーズ」とおふたりは長いご縁がありますが、これまでに印象深いことをひとつ教えてください。
大山
: まだ出演して2回目くらいの頃かな。「1回通してみようか」とやってみたら、予定の上演時間を40分ぐらいオーバーしていて、大幅カットしたことがあります。でも、それぐらい、このる・ひまわりさんと明治座さんが作る作品はボリューミーな作品ですよね。

―毎年、本当に楽しさがぎっしり詰め込まれていますね。
大山
:今回は出演者がもっとも少ないらしいのですが、全員にすごい見せ場が作られていると思っています。
原田:今回も池田さんから最初に台本が上がってきたときには、それこそ上演時間が1時間ぐらいはオーバーしてましたよ。それから何万字もカットになりまして。

―カットしても、それぞれの見せ場は残してくださっているんですね?
原田
:そうです。僕のこのシリーズの印象は、バタバタしながらも自分の持ち味や持ち回り、立場、任されているところを、それぞれが分かっていて、そこを死守していくというところ。初めて観たときには感動しました。それに俳優たちの瞬発力もすごい。「何とかしなきゃ」というときには、それぞれが責任を持って対応策をやっていける。瞬発力というか、対応力があるというか。他の舞台で、ここまで瞬発力、対応力を求められることって、あまりないです。
大山:よく言えば臨機応変。俺たちはそういうのを多くやっているね。(笑)
原田:やってるよね~。(笑) 他では稽古で何回も何回もやって、稽古通りのことを本番に持っていくのですが、このシリーズで鍛えられたのは特殊技術で、なかなか他では得られないものだと思います。それができることの大切さは、他の現場に行ってわかるんです。ここで鍛え上げられたものは、他でも絶対通用すると思います。

―きっとその生身の感じが人気の秘訣のひとつですね。今年はまたどんな作品になるのか、楽しみです。
原田
:はい。きっちり作るとこは作り上げ、今まで以上にこだわって作れるんじゃないかなと思いますね。

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―そして、第二部の方の進み具合は?
大山
:今日、録音しました!

―感触的にはいかがでしたか。
大山
:「今年も攻めているな」と思います。(笑)
原田:毎年、僕たち自身も「今回はどのチームに入れるんだろう」「今度どんなチームができるんだろう」と楽しみにしています。今年は「皆、アイドルしてるな!」という感じです。

―そのグループでも話し合って、グループならではの特徴を作っていくのですか?
大山
:第二部に関しては、チームカラーやざっくりとした台本はありますが、細かく作り込む稽古はほとんどなく、稽古終盤に全体で数回通してやってみるという感じです。


―それで、あの完成度!すごいですね。
原田
:瞬発力ですね。

―そこまでの瞬発力を求められていたとは、思いませんでした。
原田
:僕らも最初は思ってもいなかったです。できちゃうのもいけない。(笑)

―できちゃう方々揃いなのですよね。では、最後に今年の意気込みをお願いします。
大山
:僕たちのファンというよりも、毎年毎年、この年末の作品を楽しみにしてくださってる方々、この年末の作品のファンの人たちがたくさんいらっしゃると思います。 その人たちが「うわ~、毎年この年末の作品大好きだけど、今年もやっぱりまた塗り替えてきたね」と思ってもらえるような作品をお届けしたい。おそらくそうなると思いますので、ほんとうに楽しみにしててください。ものすごいクオリティのものができる人たちが揃うんだもん。頑張ります!

原田:これは受け売りになっちゃうんですけども、演出の仕事って、キャスティングが6割を占めると言われますが、そのキャスティングという点で今回は成功していると思います。
「例年になく早くから準備しています」と、自分からハードルを上げてしまっていますけれども、このシリーズでのミュージカル第二弾ですから、前回のハードルは越えるという難しさもあると思います。お客様も前回は「このシリーズでミュージカルって、幕が上がってみないとわかんない」という気持ちもあったと思うんですけれど、今回は「どういうふうにミュージカルとして出てくるのか」を楽しみにしててくださる方や、「このシリーズのミュージカルの見方は分かった。じゃあ次はどう出てくる?」という考え方で待っててくださっている方もいて、ありがたいなと思っています。その期待に応えられるように、むしろ期待以上のものができるように頑張りたいと思いますので、ぜひ劇場お越しくださいませ。

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シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』

2023年12月28日(木)~31日(日)明治座
★キャスト
足利尊氏:相葉裕樹

足利直義:内藤大希

護良親王:石川凌雅
北条高時/吉田定房:松田岳
新田義貞:前川優希
北条時行:井澤巧麻
風清:広井雄士
ふゆ:井深克彦

上杉重能:丘山晴己

佐々木道誉:井澤勇貴
赤橋守時/万里小路宣房:伊藤裕一
長崎円喜/北畠親房:加藤啓

楠木正成:大山真志
北畠顕家 :辻本祐樹

楠木正季:原田優一

高師直:上口耕平

後醍醐天皇:ROLLY

登子:水夏希

★スタッフ
脚本:池田テツヒロ
演出:原田優一
音楽:かみむら周平
公式HP :https://taihenki.com/