舞台『NOISES OFF』が2023年11月4日(土)から11月12日(日)までの大阪公演を終え、11月16日(木)からは東京公演がスタートした。上演に先がけて、ゲネプロが公開され、フォトコールと囲み取材が行われた。
後)小南満佑子 葛山信吾 紅ゆずる 福本伸一
前)山路和弘 平祐奈 藤井流星 羽野晶紀 伊礼彼方
本作はマイケル・フレインによって1982年に書かれた、舞台の「ON(表側)」と「OFF(裏側)」を描く爆笑シチュエーションコメディ。 今回、演出に森新太郎を迎え、主演は藤井流星。脇を固めるのは羽野晶紀、平祐奈、伊礼彼方、小南満佑子、福本伸一、葛山信吾、紅ゆずる、山路和弘といった個性豊かな役者たちだ。
【ゲネプロレポート】
本作について、何も知らないままに見始めたとしたら、最初は戸惑うかもしれない。
舞台セットの山の中の別荘風のリビングに登場したのは、羽野晶紀。彼女のおしゃべりを聞いていると、藤井流星、平祐奈、葛山信吾、紅ゆずるが次々登場してくる。だが、なぜか全員がぎこちない演技だ。
「なぜだ?」と思っていると、客席から演出家(伊礼彼方)の俳優へのダメ出しが飛んできた。
そう、これは舞台「ナッシング・オン(何事もなし)」の初日前夜の通し稽古中なのだ。本番は明日、いやもう真夜中を過ぎたので今日だというのに、俳優陣はまだ段取りがつかめていない。
舞台監督(福本伸一)、助監督(小南満佑子)も働きづめでフラフラ。おまけに目を離すと酒を飲んで姿をくらましてしまうベテラン俳優(山路和弘)も自分たちで見張らなくてはならない。
しかも演目「ナッシング・オン」はタイミングが命のシチュエーションコメディとあって、小道具もたくさん、セリフや動きのタイミングを計る機会もたっぷり。全員の息を合わせねばならない。覚えることは山ほどある。どう考えても初日に間に合わない!とにかく大変なのだ。藤井流星は「稽古を2週間しかしてないのに!」と絶望的に叫んでしまう。
フォトコールで披露されたのはこの一幕冒頭の30分程度。
これだけでも十分、大変な舞台…俳優陣はどれだけ頭と身体を駆使しているのか…と思うのだが、実はこの後、更に何十倍も困難な舞台が待っていた。
伊礼彼方以外は全員が関西人とあって、自然で迫力ある関西弁が飛び交う中、次々に明るみになる公演成功を阻むヤバい事実!
さらに「小南!」「祐奈ちゃん」という呼びかけも飛び交い、役を演じているのか、はたまた本人なのか、観ているこちらも混乱してくる?!
休憩をはさんで二幕で描かれるのは、1か月後の地方公演。ここでは舞台の裏“OFF”が描かれる。それは(ネタばれになるので、内容は多くは書けないだが)「現実にも有るのでは…?」と思えるような人間模様。
観客席からは「思わず噴き出しちゃった」という音(笑い)が何度も響く。筆者も想像していた何十倍も笑かしてもらった。(と、思わず関西弁になるほどでした)
そして、サービス精神もたっぷり!なんと、三幕目はさらに2ヵ月後。ツアーの千秋楽の様子まで見届けることができる。
観終わったときには、笑いに笑った満足感と共に、俳優陣の笑いを生む絶妙なタイミングと、この複雑で迷路のような物語を完遂する力量と生き生きしたキャラクターのエネルギーに感嘆し、毎公演を成功させている俳優・スタッフの皆様に尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。
是非劇場に“噴き出し大笑い”をしに足を運んでみてください。
【囲み取材】オフィシャルレポート
囲み取材にはキャスト9名が登壇した。大阪公演を終えて東京公演に挑む意気込みを聞かれると、藤井は「大阪は予想以上に皆さんがリアクションしてくれました。県民性もあると思うけど、その差を極力なくして、東京の皆さんにも笑ってもらえるように全力でドタバタしたいです」と宣言。伊礼が「流星次第だよね」とハードルを上げると、羽野が「みんなでやってるからね」とフォローする。藤井は「大阪はめちゃくちゃやりやすかったです。新喜劇とかもあるのでドタバタ劇に慣れてるのかな」と振り返った。
羽野は「フォトコールでは冒頭だけでしたが、この後どんどん展開していくのを楽しんでいただけたら。流星が前半だけですごい汗だくになっています。2幕は20代から60代までのカンパニー全員が大運動会みたいに頑張っています」と話し、藤井も「稽古中に4kgくらい痩せた」と明かす。
伊礼は「ずっと客席にいるので、お客様の反応を感じながらやれるのが嬉しい。大阪では流星のファンがすごかったですよ。一瞬も見逃すまいと集中して、反応するから。祐奈ちゃんの側転にも拍手が起きてたよね」と大阪公演を振り返る。
藤井も「反応が舞台というよりライブみたいだった」だったと頷き、大阪と東京の反応の違いも楽しみたいと話していた。
また、大阪公演ではセットが壊れたり、紅がシーツを取る際に伊礼のカツラをもぎとってしまったりと、ドタバタコメディの裏側で色々なハプニングがあったそう。平は「本当に素敵なカンパニーです。みんな仲が良くて息ぴったりなのがドタバタ劇で前面に出ていると思います」と自信を見せる。
小南は「伊礼さん以外みんな関西人。劇中でも関西弁なんですが、オフも関西弁で喋っている珍しいカンパニーでした。ネイティブな関西弁と関西パワーが炸裂している作品を、東京の皆さんがどう受け取ってくれるか楽しみです」と話す。福本は「想像を超えるドタバタ劇で、体力をすごく使います。お客さんに笑ってもらって元気になってもらえるように頑張ります」と意気込んだ。
葛山の「本当に頼りになるメンバーとスタッフさんです。何が起きても対応してもらえる安心感があるので、僕は怪我がないよう精一杯頑張りたいと思っています」というコメントには、キャスト陣から「新人のコメント」「ベテランやろ」と次々にツッコミが。
紅は「見ていただいたらわかるように、キャストがすごく仲が良い。それが芝居に活きると思います。大阪って笑わなきゃ損って感じで笑ってくださる民族じゃないですか(笑)。東京の方は笑うのが恥ずかしいという方が結構いらっしゃると思うんですけど、我慢でけへんようにしようと。高みを目指してやりたいと思うのでよろしくお願いします!」と気合十分。
山路は「私はちょっとボケた老人役で、ちょこちょこ出てくるので出とちりが怖い。危ないなーと思うと紅さんが尻を叩いてくれるのでなんとかなっています。関西弁が他の仕事でも出てきそうになるのがまずいですね(笑)」とユーモアを交えて語った。
関西人が多いカンパニーについて、伊礼は「初めての本読みの時に一瞬で女子が固まって井戸端会議が始まった(笑)。初めてとは思えないくらい和気藹々としていて」と明かし、藤井も「みんなでご飯を食べたんですけど、葛山さんが話そうとすると毎回誰かに遮られて諦めていて。みんな役に近い部分がありますよね。祐奈ちゃんの明るさもそうだし、晶紀さんのチャーミングな感じも」と頷く。平も「すごく和やか」と笑顔を見せていた。
また、伊礼が演出家役を演じて大変さに気付いたという話から、本作の演出を手がけた森の話に。藤井はWEST.のメンバーで、舞台『エレファント・マン』で森の演出を受けたことがある小瀧から「すごく勉強になる」と聞いていたそう。「お会いしたことがなく、写真だけ見て絶対に怖い人だと思っていました。稽古場で笑顔が見られてよかったです。初対面の時は、こんなに静かなやつで大丈夫かなって思われてたんじゃないかな。 (後方で聞いていた森に)一言だけもらっていいですか?」と質問すると森から「期待通り!」という返事があり、安心したような笑顔に。「舞台の経験が浅いので、動きやセリフについて、すごく勉強させてもらいました」と話し、最後に「東京・福岡公演が残っています。ハードルは上げたくないですが、爆笑を取るつもりで一丸となって頑張りたいと思います!」と力強く締め括った。
『NOISES OFF』
作:マイケル・フレイン
翻訳:小田島恒志
演出:森新太郎
出演:藤井流星 ⽻野晶紀 平祐奈 / 伊礼彼方 小南満佑子 福本伸一 / 葛山信吾 紅ゆずる 山路和弘
日程・劇場:
<大阪公演>2023年11月4日(土)~2023年11月12日(日) 森ノ宮ピロティホール ※全公演終了いたしました。
<東京公演>2023年11月16日(木)~2023年11月29日(水) EX THEATER ROPPONGI
お問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
<福岡公演>2023年12月4日(月)~2023年12月10日(日) キャナルシティ劇場
お問い合わせ:キョードー西日本 0570-09-2424(平日・土曜11:00~15:00)
チケット:S 席 11,000 円(全席指定/未就学児入場不可)
※福岡公演のみ:S 席 11,000 円/A 席 9,000 円
公式サイト: https://noises-off.jp/
主催:東京グローブ座 テレビ朝日 シーエイティプロデュース