音楽座ミュージカルの旗揚げ作品である『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』(以下、『シャボン玉』)が初演から35周年を迎え、2023年10月~12月に全国各地で公演を行っている。11月上旬に東京公演を観劇した。
数多くの名作ミュージカルを生み出してきた音楽座だが、その中でも『シャボン玉』は多くの人に愛され、再演を重ねてきた。
2020年1月に東宝によりシアタークリエで上演され大好評を博し、改めて作品のすばらしさが広く知られることになり、音楽座に多くの再演希望が寄せられたという。
観劇したのは、今回の公演で初めて音楽座に参加し、ミュージカルにも初出演という畠中祐(三浦悠介役)と音楽座きっての実力派俳優・高野菜々(折口佳代役)の出演回。
人気声優として知られる畠中祐はアーティストとしても活躍しており、演技も歌も折り紙つき。両親も『シャボン玉』に出演しており、インタビューでは、幼い頃から『シャボン玉』の楽曲を耳にしてきたと、作品への特別な思いを明かしてくれた。
高野菜々は、今年、文化庁の芸術家海外研修制度でのニューヨーク留学から帰国。9月にはミュージカル『生きる』に出演。音楽座に参加して以来、初めて音楽座作品以外に出演し、主人公の渡辺勘治(市村正親/鹿賀丈史 ダブルキャスト)の転機を促す大切な役どころ・小田切とよ役を演じて注目を集めた。
『シャボン玉』を観劇したのは、平日昼間の公演だったが、会場は満席。しかも開演前からロビーは熱気にあふれ、本作の人気の高さを感じた。(以下、ネタバレを含みます)
音楽家を志すもまだ芽が出ない三浦悠介が、遊園地で折口佳代という女性と偶然出会う。ふたりは一度ならず出会い、惹かれ合い、結婚する。
悠介が音楽家として認められ、ふたりは幸せに暮らすはずだったのだが…。
主人公のふたりを筆頭に、登場人物の誰もが自然体。楽曲は美しいのに、歌うための歌でなく、芝居が歌になっていて、心にストンと届いてくる。強烈なキャラクターもいるのだけれど、実在していそうに思える人たちばかり。
昭和を知る世代にとっては、物語の設定や背景に「あるある!」を思い出して、なつかしさと身近さも感じて、ひときわ楽しいだろう。
そして、宇宙人が登場してくる場面では(!)違和感や唐突感があるのかと思いきや、それがまったくなかった! 大いなる宇宙と善なるものの存在を素直に受け取ることができている自分を発見。ほんとうに、これは驚きでした。
映像などに頼らないシンプルな舞台セットは、場面が転換する度に考えぬかれていることがわかる。まっすぐに作品を届けようというスタッフとキャストの熱意を感じ、舞台が小さく感じられたほど。多くの観客が涙をぬぐい、すすり泣く声がラストまで続いていた。
初演から35年、愛されているから上演され続けている作品なのだと、素直に納得でき、温かな気持ちで劇場を後にできた。
本公演は、11月23日からツアーの後半へ。12月23日(土)〜2024年1月8日(月・祝)には、舞台映像の配信も予定されている。
音楽座ミュージカル
『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』
原作:筒井広志『アルファ・ケンタウリからの客』
オリジナルプロダクション総指揮:相川レイ子
演出:ワームホールプロジェクト
脚本:横山由和・ワームホールプロジェクト
音楽:筒井広志・八幡茂
振付:中川久美・ワームホールプロジェクト
出演:高野菜々・畠中祐/森彩香・小林啓也 ほか
★大阪公演:2023年10月 3日(火)吹田市文化会館 メイシアター 大ホール(公演終了)
★栃木公演:2023年10月14日(土)小山市立文化センター
★東京公演:2023年10月27日(金)〜11月5日(日) 草月ホール(公演終了)
★栃木公演:2023年11月11日(土)あしかがフラワーパークプラザ(足利市民プラザ)(公演終了)
★福井公演:2023年11月23日(木・祝)越前市文化センター
★愛知公演:2023年11月26日(日)幸田町民会館さくらホール
★島根公演:2023年12月3日(日)悠邑ふるさと会館
★広島公演:2023年12月8日(金)・9日(土)JMSアステールプラザ 大ホール
★茨城公演:12月16日水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)
☆舞台映像配信
配信期間:2023年12月23日(土)〜2024年1月8日(月・祝)
配信場所:YouTube(有料配信) 詳細は後日発表
▶︎https://www.youtube.com/@ONGAKUZA
音楽座ミュージカル公式サイト:https://www.ongakuza-musical.com/