12 月 14 日(木)、有楽町の I’M A SHOW(アイマショウ)にて、韓国オリジナル・ミュージカルの新作を紹介する『K-Musical Roadshow in Tokyo』(主催:韓国芸術経営支援センター 後援:韓国文化体育観光部、韓国文化芸術委員会)が日本で初めて開催された。
キム・ジョング、ユン・ヒョンリョルらトップスターも出演し、韓国から最新の人気5作品のハイライトシーンを次々と披露するショー・ケーススタイルで披露された。
韓国のミュージカル創作・製作陣の層の厚さと、俳優陣の歌唱力のすばらしさ・層の厚さに、改めて驚嘆させられ、韓国ミュージカルの今後の日本での展開に期待膨らむショーケースとなった。
本公演には今年 6 月にソウルで開催された「K-Musical Market」での審査を経た5作品のスタッフ、キャスト総勢約60 人が来日。客席は、日本の舞台製作会社のプロデューサー、韓国オリジナル・ミュージカルに関わるメディアや舞台スタッフなど約 150 人に加え、一般公募で募集されたオーディエンス約 200 人で満席となった。オーディエンス募集には定員の約 3 倍の応募があるなど、韓国オリジナル・ミュージカルへの注目の高さがうかがえた。
司会進行は俳優の加藤和樹とキム・テイが担当。数多くの韓国ミュージカルに出演し、韓国での観劇や多く韓国俳優とも交流が深い加藤ならではのトークを展開。韓流スターのファンミーティングの司会や韓国大型ミュージカルの日本公演の通訳でも活躍するキム・テイは韓国発のオリジナル・ミュージカルにも詳しく、5作品の魅力を丁寧に引き出した。
紹介された5作品は『ドラララ歯科』『不思議な家』『最後の事件』『春を描く』『ブラームス』(上演順)。(撮影:友澤綾乃)
★カルチャーホリック製作『ドラララ歯科』(脚本:キム・ジョンミン、作曲:ソン・チャンギョン)
韓国のロングセラー絵本を原作とした 12 時にオープンする歯科医院の物語。ドラキュラだけど、優しくて愛情深い歯医者のララは歯だけでなく、心も治療していく。 歯医者を怖がる子どもたちに勇気と想像力を届け、歯磨きの大切さや習慣を歌やダンスで学ぶことができ、昨年の初演は観客占有率の 90%以上の好評を博した。
脚本:キム・ジョンミン 作曲:ソン・チャンギョン(ふたりは夫婦クリエーター)
ファミリーミュージカルに定評があるカルチャーホリックは、ミュージカル『恐竜は生きている』が2016年にヒット。韓国のみならずアジアツアー中。2025年にはオーストラリアとロンドンでの公演を予定している。
★アシン・アートカンパニー製作『不思議な家』(作:キム・テリン、作曲:チェ・ヒヨン)
店主が亡くなり放置されたカルグクス(うどん)店が舞台。店を処分しようと娘が帰ってくると、家の神々
たちがあの手この手で再建を企てて…。伝統音楽に現代音楽を融合。現代人が忘れがちな『もの』に対する
価値と大切さを見直す物語。戯曲『神秘のレストラン 百年麺』をベースにミュージカル化。
作:キム・テリン 作曲:チェ・ヒヨン
伝統楽器と現代音楽が融合し、衣裳や時代設定からは意外なほどのノリノリのダンスに心躍る作品。イ・インボク代表(プロデューサー)は「企画時はカルグクスではなく寿司でしたが、私たちは大田(テジョン)にいるので、テジョンで有名なカルグクスになった。観客にもカルグクスを食べてもらえたらとの思いで製作した。日本で上演するとしたら、私たちが最初にやりたかった寿司で」と明かし、会場に笑いが広がった。
★ネオ製作『最後の事件』(作:ソン・ジェジュン、作曲:ホン・ジョンイ)
コナン・ドイル役 キム・ジョング
『カフェ・イン』、『RUN TO YOU』、『シングルズ』などを生んだソン・ジェジュンが脚本、作曲は『国楽(韓国の伝統音楽)』出身の新人、ホン・ジョンイが手掛けた。
作家コナン・ドイルの創作の苦悩と実話をベースに、名探偵ホームズ誕生の裏に迫る。作者と生れ出たキャ
ラクターの対峙、成功と夢が生み出す死の真相…。
キャストはふたりだけ。圧巻の歌唱によって物語が進み、ドイルの苦悩のエネルギーに客席が覆われ、ミステリアスな世界へと引き込まれてしまう。『スリルミー』にも通じるようなダークな魅力がある作品。
熱狂的なファンを生んだ『死の賛美』、『バニシング』と再演を重ねる公演を作ってきたネオ。この『最後の事件』も再演を重ねそうだ。
★文化アイコン製作『春を描く』(作:イ・ジヒョン、作曲:ホン・イェ)
新人の劇作家、作曲家による作品。朝鮮時代を背景にし、伝統音楽をベースに電子楽器と融合させ、親しみやすさのある美しい音楽が魅力的な作品。美術展で幻の絵が発見され、その絵を見たキュレーターと作曲家が過去へと導かれる。時間を超えた運命的なラブストーリーが美しい絵を背景に抒情的に綴られる。2013 年、CJ 文化財団の CJCreative Minds Musical 部門に選出されリーディング公演を行った後、約 8 年後にミュージカルへ生まれ変わった。
2000年に設立され、韓国の演劇を育ててきたともいえる文化アイコンの作品。日本では『愛は雨にのって』が上演されている。日本でもベストセラーとなった小説『82年生まれ、キムジヨン』を昨年舞台化して注目を集めた。
★NTA カンパニー製作『ブラームス』(作:ソン・スミン、作曲:ジン・ジュベク)
クララ役 パク・ヘミン ブラームス役 チョ・フン
19 世紀を代表する音楽家のヨハネス・ブラームス、クララ・シューマン、ロベルト・シューマンの 3 人を描いた作品。ブラームスが愛したクララとその夫のロベルトの実話から、3 人の関係の背後にある芸術と愛について問いかける。
19 世紀を彩ったロマンチックな音楽と映像を活かしたメディアアートの世界と融合させた演出も、韓国で
話題となった。
作・演出:ソン・スミン(『サン=デグジュペリ』、『ラスト・ムーン』)
音楽:ジン・ジュベク(『サン=デグジュペリ』)
シューマン役 ユン・ヒョンリョル
作・演出のソン・スミンさんはNTA カンパニーの代表。ブラームスの楽曲をモチーフにした楽曲も印象深く、歌い上げる楽曲では、今更ながら韓国ミュージカル俳優陣の歌唱力に圧倒された。
ミュージカルの人気が日本に比べると遅く始まった韓国。2010年頃からの急速な人気の高まりは”ミュージカル・バブル”と言われたこともあったが、国の手厚い援助や創作者・俳優の人員育成システムの確立、アイドルを取り込む戦術の巧さも相まって、人気も実力も不動のものとなり、今やドラマ・映画・音楽に並ぶ世界的なコンテンツとして成長。韓国でのロングラン上演はもちろん、権利輸出やアジアツアーを行う公演も多くなり、欧米への進出も始まっている。
とはいえ、日本での韓国ミュージカルの上演は、まだまだ多くない。
このショーケースは、中国ではすでに何度も行われていたが、コロナ禍もあって、日本で開催されるのは初めてとのこと。
今後は日本でも韓国ミュージカルに触れる機会が益々増え、互いに刺激を受け、切磋琢磨されて素晴らしい公演が増えるに違いない。期待膨らむショーケースだった。
K-Musical Roadshow in TOKYO 概要
【日時】 2023年12月14日(木) 13時開演 ※上演時間:約3時間
公演終演後に会場にて日韓のプロデューサー、メディアによる交流会を実施。
【会場】 I’M A SHOW(アイマショウ)
【司会】 加藤和樹 キム・テイ
【公式HP】 https://k-musical-jp.bitfan.id
【主催】 韓国芸術経営支援センター
【運営】 K-Musical Roadshow日本事務局
【後援】 韓国文化体育観光部、韓国文化芸術委員会