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ミュージカル『クラスアクト』筧利夫インタビュー「味わうとか楽しむとかではなく“喰らい”に来てください」「1曲終わった後は必ず拍手を!」

大ヒットミュージカル『コーラスライン』の作詞家、エド・クレバンの⽣涯を描いた感動の実話から生まれたブロードウェイミュージカル『クラスアクト』が5⽉30日から東京・サンシャイン劇場を皮切りに全国16か所で上演される。エド役は筧利夫が演じる。

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ミュージカル『コーラスライン』は、1975年の初演から1990年4月28日の千秋楽まで6137回公演して当時最長のロングランを記録。1976年のトニー賞で最優秀ミュージカル賞をはじめ9部門を獲得し、ブロードウェイでは『CATS』に抜かれるまで最長のロングランを記録。ショービジネスの世界の輝きと厳しさを描いて、今なお愛され続けているミュージカルの金字塔だ。

その作詞を担当し、トニー賞を受賞したエドだが、実は “作詞“よりも“作曲” 家として認めてもらいたかったのだ。しかし、その夢叶わぬまま、癌のため48歳の若さでこの世を去った。
エドの死後、彼が遺した楽曲の数々で紡がれたのが、本作ミュージカル『クラスアクト』だ。
登場するのは、エドの友人・恋人をモデルに生まれたキャラクターたちと、実在するブロードウェイのクリエイターたち。

筧利夫は、数多くのドラマ・映画に出演、バラエティーでも活躍し、ミュージカル『ミス・サイゴン』、ミュージカル『深夜食堂』など、ミュージカルでも主演を務めてきた。その筧に、本作の魅力と意気込みを聞いた。

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-本作のお話を受けられた時のお気持ちは?
台本を読んで面白いなと思って、いろいろ調べましたら、実在の人物の話で、全部本当の話なんですよ。そして、今回が日本初演ではなくて、数年前にも上演されていて、僕が他のミュージカルで共演した人たちが出演していて、作家の方が稽古場に陣中見舞いでいらしていたことを知って「生みの親にとってかなり思い入れが深い作品なんだな。やりがいがある」と思いました。ただ「普通のお芝居を引き受けるのとはちょっと違う感じだ」とも思ったんです。お芝居が面白いかどうかは演出家の責任の範疇ですけれど「エド・クレバン役をやることに関しては僕が責任持たなきゃいけない」「ちょっと違う心のくくり方がいるな」と思いました。

-「違う心のくくり方」と言いますと?
僕はミュージカル出演がミュージカル『深夜食堂』以来6年ぶりで、舞台出演も4年ぶり。普段はカラオケにも行かないし、昨今の映像作品では小さい声で喋るのが主流なので、もう声が細くなっていて、舞台用の声ではなくなっていたんですよ。それに年齢的にも声の通りが良くなくなるということもあるので「これまたイチから鍛え直さなきゃいけない」「いろんな意味で大変だ」と思いました。「やる」と言った以上は、あるレベルまで自分で持っていかなきゃいけない。だから、かなり考えてからお返事しました。楽に生きているよりはそっちの方がいいと思います。「また久々にちょっと重量の大きいのが来たな」と追い込まれています。

-自分を追い込んでいかれるんですね。台本を拝見させていただきました。エドの登場は、“スポットライトを一身に集めて話し(歌い)始める”。そして、すぐにステップを踏み始める。かっこいいですね。

エドは特に踊る人物じゃないのですけれど、ブロードウェイのトニー賞授賞式の映像を見たら結構踊っていましたね。しかも、踊りながら歌ってなかったかな? 歌いながら踊るのって、ほんと難しいんですよ。踊りに音程取られちゃうから。また、心配事が出てきた!(笑)

-踊りながら歌う、それが最高に楽しみです!(笑)エドはどんな人だと思っておられますか?
かなり偏屈な芸術家肌の人だったんだろうと思いますけど、随分たくさんの仲間がいたみたいですね。彼の葬式にみんなが集まってくれたわけですから、愛すべき男だったんじゃないですか。仲間から見たら、いい作曲するのになかなか世に出れない。おそらく、毒がない、屈託がない人だったんじゃないかと思います。

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-エドは仲間たちから「初めて会った時には、変態だし、セクシーだし、わがままだし、クレイジーだと思った」とも言われていましたけど、それをどう表現されるのでしょうか?
そう言われてましたね。おそらく俺がどうこう思わなくても、たぶんお客様には「そうそう!」って思われると思いますね。

-ご自分が「変態でセクシーで、わがままで、クレイジーだ」と?
全部当たってますね。(笑)全部入ってます。違うところがないですね。(笑)

ーそうですか?! さらに加えるとしたら?
う~ん、諦めが早い。悩まない。悩めないんですよね。悩むような回路がないんです。「この役どうやろうかな…」とか、悩まないんですよ。

-どうされるんですか?
「それはオファーしてきた人の責任だよ」って思うんですよ。(笑) だって、オファーしてくれた方は僕ができると思ってオファーしてくれたわけですから、たぶん僕が気づいていない何かがあるんだろうと思って。僕ができるのは全力を尽くすこと。一生懸命セリフを覚えること、面白くなるように工夫することぐらい。エドは実在の人なので、「エド・クレバンさん、お願いします」って体を貸しますよ今回は。「僕はあなたにならなきゃいけないんで、僕に降りて来てくださいね」と。この公演は稽古合わせて約4か月ありますから、4ヶ月間降りて来ていただけるとありがたいかな。

-そんな体験をされたことがあるのですか?
いえ、無いです!(笑)

-今回は全国各地で公演されますね。ミュージカルをあまり観たことが無い方や、初めて観るという方もたくさん観に来られるかと思いますが、楽しみ方や見どころを教えていただけますか?
楽しみ方は、ミュージカルですから“1曲が終わった後は必ず拍手をする”ですね。拍手して、声援もしてもいいです。

-もう声を出してもいいですからね。
はい、そこは太字で書いておいてほしいです。ブロードウェイでは公演中に大声援があったりしますよね。
そして、このミュージカルを見て、人生観が変わる若い人たちもいると思います。「気を引き締めて、楽しく学びに来るように」とお伝えしたいですね。この作品の根底には、アメリカのショービジネスというとても厳しい世界があります。そのあたりのところがわかって観てもらえると、日本の感覚で見るのとはちょっと違ってくるんです。アメリカと日本、英語と日本語の成り立ちとか、違うところはいろいろありますから、もしかしたら本当のところはなかなか伝わらないのかもしれないのですけれど、感動をお届けするのが僕らの使命です。今後の日本のミュージカル界を発展させていくためには、新しい人材を発掘しなきゃいけない。未来のミュージカル界を背負う人たちに、気づきを与えるためにもこのミュージカルは必要なんです。たくさんの方に観ていただきたいです。

-ショービジネスの厳しさは、エドが歌詞を作ったミュージカル『コーラスライン』の映画版を見てから観劇に来ていただくと、わかっていただき易いかもしれませんね。
根本的に、エドが『コーラスライン』の歌詞をつくった人というのがありますからね。それに、コーラスライン(稽古時に舞台上に描く「線」。役名が付されないキャストたちが、ダンスなどで超えて前面へ出てはならない「線」。メインキャストとコーラスを隔てる象徴)の前に出られない人たちの下積みの辛さを、僕らは知っていますけれど、若い人は知らないかもしれませんね。本作に登場する『コーラスライン』の原案・振付・演出のマイケル・ベネットや、作曲のマーヴィン・ハムリッシュについても、ちょっと調べてから来てもらうといいかもしれませんね。

―最後に筧さんご自身の、本作での見どころを1つ教えてください。
僕の見どころは…、終盤は長台詞、歌、長台詞、歌とたたみかけるので、そこを“喰らい”に来てもらいたいですね。味わうとか楽しむとかではなくて“喰らい”に来てください。

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ブロードウェイミュージカル「クラスアクト」
2024 年 5 月 30 日(木)~6月2日(日)サンシャイン劇場
作曲・作詞:エド・クレバン
脚本:リンダ・クライン、ロニー・プライス
オリジナル・ブロードウェイ版演出:ロニー・プライス
<日本版スタッフ>
日本語台本(訳詞含)・演出:西田直木
振付:川崎悦子
音楽監督:宮﨑 誠
<キャスト>
エド:筧 利夫
ソフィ:紫吹 淳
ルーシー:高橋由美子
マーヴィン:吉田要士
リーマン先生:ブラザートム
フェリシア:松岡美桔
モナ:星野真衣
ボビー:  広田勇二
チャーリー:平山トオル
マイケル:吉田 潔
ダンサー:市川由希
公式サイト: https://aclassact.jp
版権コーディネート:東宝ミュージック
製作:ナッポスユナイテッド、あなぶきエンタテインメント

全国ツアー
宮崎公演:宮崎市民文化ホール6月6日(木) 18:30
熊本公演:熊本城ホール6月8日(土)15:00
鹿児島公演:鹿屋市文化会館6月9日(日)18:00
愛知公演:愛知県芸術劇場大ホール6月13日(木)19:00
岡山公演:倉敷市芸文館6月16日(日)|13:30
青森公演:リンクステーションホール青森6月20日(木)18:30
静岡公演:沼津市民文化センター6月22日(土)14:00
香川公演:ハイスタッフホール(観音寺市民会館)6月29日(土)13:00
愛媛公演:愛媛県県民文化会館6月30日(日)18:00
沖縄公演:那覇文化芸術劇場7月6日(土)開演17:00 7月7日(日)開演13:00
福井公演:フェニックス・プラザ7月13日(土)
北海道公演:札幌市民ホール7月18日(木)18:30
兵庫公演:神戸国際会館こくさいホール7月26日(金)14:00
大阪公演:南海浪切ホール7月27日(土)17:45
長崎公演:長崎ブリックホール8月3日(土)17:30