女流作家スーザン・ヒルの同名小説をもとに、スティーブン・マラトレットの脚色、ロビン・ハーフォードの演出で舞台化され、34年間ロンドン・フォーチュン・シアターで公演されてきた英国ホラーの傑作、『ウーマン・イン・ブラック』。
明日、6月9日(日)にPARCO劇場で、8度目の初日を迎える。初日に先立ち、取材会とゲネプロが行われた。出演は向井理、勝村政信。
演出)アントニー・イーデン 向井理 勝村政信
【取材会】
向井:割とあっという間に稽古が 進んで、すごく順調ではありましたけれども、2人だけしか出てこないからこそ、コミュニケーションをちゃんと取りながらここに来れたなと思います。毎回どの舞台もそうですけど、どういう風に見てもらえるのかもそうですし、最後までちゃんと世界観を作り上げてゴールするまで気が抜けないので、その緊張感はいつもと同じです。やっぱり出演者が少ないので責任も重くなっているので、すごく緊張感がある。でも劇中劇という形を取ってはいるので、 楽しんでやれたらいいなと今は思っています。
(勝村さんは)兄のようで、遊び心がすごくあるので、お芝居の中でも遊び心を持ってやってらいっしゃるので、余裕を持ってやられているのを見ると、自分もすごくリラックスできますし、そういう意味では本当に学ぶものがたくさんあります。
勝村:芝居を始めてもう40年近くなりますが、ずっと同じで初日には「あと1週間あったらよかったのな」といまだに思います。あと1週間あったとしても、1週間後には「あと1週間あったらいいな」と思ってしまうんだと思うんですけど、2人でそれぐらい色々準備をしてきても 満ち足りるってことはなくて、常に何かが足りないと思い続けてしまいます。 今回もそうですけど。でも、初めて今回、力強い素晴らしい仲間を紹介してくださって、 新しいこのカンパニーが動き始めて、本当にいい時間を過ごすことができました。
(年が)18ぐらい違うでしょ。よく考えると、息子と一緒にやっているような。でも理ちゃんは映像でもそうですけど、とても頼りになる。9年前にもこの舞台をやっているので、台詞を覚えているかと思ったらまったく忘れていて、理ちゃんをひっぱっていってあげようかと思っていたのに、2日目からグイグイ引っ張っていただいて。いまだに引っ張っていただいて、一緒にいて、こんなに安心できる人はいないんじゃないかと。僕らの関係も、この舞台に対しても、初めてとは思えないぐらい素晴らしい演技を見せてくれています。
アントニー:勝村さんは、とても技巧に優れた素晴らしい才能を持った方だと思っています。いろいろな役を演じるんですが、それをただうまく演じ分けるというだけでなく、その1つの文章の中で、人を悲しい気持ちにしたり、すごく嬉しい気持ちにさせたりが自由自在にできる方だと思っています。
向井さんは、彼の演じる役は、とても魅力的な人でないといけない。非常に魅力ある方が演じるべき役で、そういう意味では向井さんはものすごく魅力的で、皆さんを魅了するに違いありません。その彼がこの芝居を語ってくれるということで、とても嬉しく思っています。
実は私はもうかなり長い間、この芝居に関わっておりまして、様々なことを知っているつもりでいたんですけれど、この数週間、皆さんとこの2人とお仕事をしてきて、この芝居に関して新しい発見が多々ありました。それがとても良かったと思っています。
【ゲネプロ】
アーサー・キップス(勝村政信)は、若き日の恐ろしい体験のために、今も悪夢にうなされて苦しんでいた。その忌まわしい記憶から解放されるため、家族に打ち明けようと決心。その体験を書き上げ、読み聞かせるために俳優の手を借りることにした。
依頼を受けた俳優(向井理)は「読み聞かせるには5時間はかかる」「効果音を用意した」と、芝居仕立てにすることを提案。キップスと二人で演じようと持ち掛ける。
芝居なんて無理だと言うキップスを説き伏せ、俳優が若き日のキップスを演じ、キップスがその他の人物を演じる芝居の稽古が始まった。
稽古を始めると、次第に芝居に乗ってくるキップス。
二人の劇中劇が始まった。
若き弁護士のキップス(向井)は、事務所を代表して顧客のドラブロウ夫人の葬儀に参列し、その事務処理を任され、田舎町クライシン・ギフォードへ向かう。社内でクライシン・ギフォードの住人、サム・デイリー(勝村)と知り合う。
ふたりは自ら道具を動かし、大きな籠を汽車の座席に見立てたりしながら芝居を作り続ける。
クライシン・ギフォードは遠かったが、ホテルは快適だった。だがキップス(向井)がホテルの亭主ランドロード(勝村)にドラブロウ夫人の仕事でやって来たことを伝えると、それまで愛想よかったランドロードの態度が一変する。
俳優は俳優なりに工夫を凝らし、ふたりの芝居は順調に仕上がっていった。
観客にとって、劇中劇とそうでない場面との理解が難しそうに思えるが、向井が若きキップスを演じる劇中劇と、俳優に戻ってキップス(勝村)に話しかける芝居との切り替えが、説明なくともわかりやすく、コメディぽさも感じられて笑ってしまう場面もある。だが、これから後、英国ホラーの傑作と言われる恐怖の道筋がジワジワと形作られていく。一幕60分、休憩20分、二幕50分。ふたりの俳優がつくる劇場だからこその恐怖の空間を、是非体験してほしい。劇場だから怖いけれど、劇場だから怖くないですよ!
舞台『ウーマン・イン・ブラック』
【日程】2024年6月9日(日)~30日(日)
【会場】PARCO劇場
【原作】スーザン・ヒル
【脚色】スティーブン・マラトレット
【演出】ロビン・ハーフォード/アントニー・イーデン
【翻訳】小田島恒志
【出演】向井理 勝村政信
【公式サイト】https://stage.parco.jp/program/wib2024
【ハッシュタグ】#ウーマン・イン・ブラック
※大阪・北九州・愛知公演あり