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舞台『ワタシタチはモノガタリ』作・横山拓也&演出・小山ゆうな 取材会 横山「あまり演出のこと考えずに無茶なことも書かせていただきました」小山「完成した台本も”面白いという一言に尽きる”でした」

江口のりこ、松岡茉優、千葉雄大、松尾諭という豪華キャストが出演し、人気劇作家・横山拓也の書き下ろし最新作を、小山ゆうな が演出する舞台『ワタシタチはモノガタリ』が、9月8日(日)~30日(月)のPARCO劇場の上演を皮切りに、福岡・大阪・新潟で上演される。

横山さんと小山さんへの取材が決り、舞台『ワタシタチはモノガタリ』の台本を読ませてもらった。
読んでいる最中は笑いが止まらず、読み終わった後には、これをどう舞台にのせるのか、妄想が繰り返された。
そんな面白すぎるほど面白い作品にひかれて、8月上旬、本読みから稽古が始まって間もない稽古場を訪ねて話を聞いた。

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横山拓也           小山ゆうな

<あらすじ>
富子(江口のりこ)は、初恋の相手だった徳人(松尾諭)と、彼が中学3年の夏に大阪から東京に引っ越して以来15年間、文通を続けてきた。「30歳になってどっちも独身だったら結婚しよう」そんな、冗談まじりの淡い約束を胸に抱いて。

しかし、徳人は30歳を迎える年に職場の女性と結婚。その結婚式で15年ぶりに徳人と再会を果たした富子は想いを隠しながら祝福し「あなたに書いた手紙を全部私にください」とお願いする。

富子は長きに渡る往復書簡を<富子>を<ミコ(松岡茉優)>に、<徳人>を<リヒト(千葉雄大)>という名に変え、かなりの脚色を加えて、ウェブ小説として投稿。瑞々しく純粋な恋心がにじむ手紙群は、瞬く間に評判となり、出版、映画化の話が動き出す・・・。それは徳人を巻き込んで。

富子と徳人が生きる現実と、現実よりキラキラしているミコとリヒトの虚構の世界が入り混じる。

-なぜこのテーマで書こうと思われたのですか?
横山:ひとつは、普段、自分が劇団でやってるような“業の深いところまで突き詰めていく”よりも、少しコミカルな外枠を意識して書いてみたいと。自分にとってのチャレンジでもありました。企画の会議で“ラブコメ”にたどり着いて、自分でも面白そうだと感じて、今回の作品に踏み切りました。
基本的には普段の自分の作品でも“登場人物にちょっと自分の一面がのるように”というイメージがあります。江口さんの演じる富子というキャラクターに、自分が学生当時から抱いてた、書き手としてのコンプレックスや高みを目指したい気持ちなどを投影できたら面白いかなと思ってスタート切った感じです。

-長年書きたいと思っていらした内容だったのでしょうか?
横山:特にそういう意識はなかったのですけれど、大阪で15年間、劇団(「売込隊ビーム」)をやっていた時代には、コメディやシチュエーションコメディ作品もたくさん書きましたが、(2012年より横山が率いる劇団ユニット)iakuになってからはあまり手を伸ばさなかったので、すごく久しぶりにiakuではやれないようなことをやらせていただける機会だと思って書きました。
温めてきたわけではありませんが、チャレンジでもあり、自分の中にあるものの、面白いと思っていた部分をまた引っ張り出してきたようなイメージです。

-文通や携帯小説を題材に選ばれた理由は?
横山:文通については、語りたいことがありまして。僕自身の経験なんです。(笑) 僕は小2から中2まで千葉県にいて、中3になるタイミングで大阪に引っ越して、中学時代の千葉県の友達4人と文通をスタートさせました。その中の1人がちょっと好きな女の子でした。
作品の後半で、富子に語らせていますけれど、手紙という、たった1人のためにいろいろと思いを巡らせながら書くことが、自分にとっては10代の出力のトレーニングだったんじゃないかなと、今は思っています。それを富子に語らせたくて、作家としてそういうことに気づいた瞬間が描けたら面白いなという思いです。

-文通は続いたのですか?
4人中、3人の同性の友達とは、高1ぐらいで終わりました。(笑) その好きだった女の子とはずっと続いて、高校に行ってからも比較的頻度は高くて、大学に入った頃から少なくなって、気づいたら終わっていた感じですね。その後、お互いに家族が出来てからも年賀状のやり取りが毎年あります。

-まさにこの作品ですね!
横山:そうなんですけど(笑)、でも当時の僕がその方との結婚望んでいたわけでもなく「30歳になって、結婚うんぬん」という話題は全くなかったですし、自分の実体験といろんな人の体験などを混ぜているので「これが自分の体験だ」と言い切るのは恥ずかしいですし、そう言ってしまうと、今後、僕がその人の顔が見られなくなってしまうので、「こんな作品あるよ」とお伝えしたい気持ちと、「これは言えないな」という気持ちで、今すごく葛藤しています。(笑)

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-小山さんが、この脚本を読まれたときの感想をお伺いできますか?
小山:プロットの段階から何回か読ませていただいていて、突然完成形を目にしたわけではなく、最初に大筋とアイデアを聞いた段階からとっても面白くて。横山さんがプロットからどのように立ち上げて、どう深めて変更されていくか、その過程を垣間見ることができました。その過程で、魔法がかかっていくような感じがする「すごい!」と思う瞬間があり、完成した台本も「面白いという一言に尽きる」でした。

-台本を拝見したのですが、本当におもしろかったです。今回のような演出は、既存の作品の演出をする場合とは違うと思いますが、いかがですか?
小山:先日もスズナリで横山さん(作・演出、iaku)の『流れんな』を拝見してきたのですが、とても素晴らしくて、(観終わって)私は放心状態で、帰りに1時間ぐらい電車に乗れずに歩いたぐらいにすごいと思ったので、この作品も「私が演出でいいんだろうか」「横山さんが演出した方が明らかに面白くなるんじゃないか」と思ったりしました。「横山さんだったらどういう風に演出されるかな」と思ったりもしますが、そこはもう考えてもわからないから、ここから、作っていくものを見ていただいて、ご意見くださったりすることもあるかもしれないと思っています。

-横山さんから小山さんの演出に期待されているのは?
横山:すごく丁寧に作られる印象もありますし、何作か小山さんの演出の作品を観させていただいたんですけれど、作品によって手つきがまったく違っていて「戯曲や作品に寄り添ってくれる演出家さんなんだ」という印象があったので、最初から信頼していて「小山さんとだったら是非」という思いがありました。いろんな演出家さんと組ませていただく機会がある中で、今回、初めて小山さんと組むことにワクワクしています。

-せっかくの書き下ろしですから、ご自分で演出をというお気持ちは?
横山:それが全くない…という言い方もおかしいのですけれど、外の現場で演出の依頼を受けたことがなく、iakuが唯一、自分が演出する場なのです。だから今回は小山さんとご一緒することを踏まえて、あまり演出のことを考えずにかなり無茶なことも書かせていただきました。(笑)
これは僕の悪い癖だと思いますし、ある方には「横山くん、全部の作品を自分で演出するつもりで書かなきゃダメだよ」と言われたこともあって、そうだと思いつつも、「小山さん、どうにかしてください」「これって、どうやられるんですか?僕に教えてください」というようなことを脚本に託させてもらった部分はあります。

ワタシタチ 宣伝ビジュアル (1)

リヒト(千葉雄大) ミコ(松岡茉優) 富子(江口のりこ) 徳人(松尾諭)

-富子が描く小説の妄想世界では、富子はミコに、徳人はリヒトになっています。公演ビジュアルを拝見しても、現実と虚構が混じり合っていくところが、とても面白そうなのですが、どのような演出プランをお考えですか?
小山:富子とミコ、徳人とリヒトが同じ人物であることをどう見せるかを、今、探りながら稽古しています。富子の妄想の世界の中は自由なので、そこが演劇の楽しいところで、松岡さんと千葉さんが、少女漫画的にいるのか、無機質にいるのか、ちょっと韓流ドラマっぽい感じにするのか など、本読みの中でもいろいろ試してくださっています。引き出しがとてもたくさんある方たちなので、いろいろとやって、みんなで今楽しく作ってるところです。

ワタシタチ組写真_横

 

江口のりこ 松岡茉優 千葉雄大  松尾諭

-キャストの話が出たところで、4人のキャストの方の印象をお伺いしたいです。
小山:江口さんは本当に素晴らしい女優さんだということはもちろん存じていますし、本読みでもわざと大きな表現をするのではないけれど「なるほど」と思う表現があって、すくい上げて表現されることにとても説得力があって、すごいと思っていたのですが、昨日立って稽古を始めてみたら、もう富子として舞台上にいるんですよ! 普通は俳優さんがその役として舞台上にいるために試行錯誤をする期間が稽古期間。セリフがちゃんと体を通して自分の言葉になって出てくるまでには時間がかかったり、舞台上にその役として立つために時間が必要だったりするのですが、江口さんはもう最初から富子として立っている。圧倒的にすごいです。
何もおっしゃらないですけれど、きっと、おひとりで、とてつもない分量の準備をされているのだと思います。言葉1つ1つにどういう意味があって、どういう気持ちで言ってるのかを分析し、富子がどういうふうに立って、どういう仕草をする人なのかも考え尽くされているからだと思います。

横山:初日の本読みに参加したのですが、江口さんは、すごく素直な方だと思いました。言いにくいセリフがあったら、ちゃんとそこに引っかかっているような感じもして、自分で無理やり処理するのではなく、ちゃんと「ここ、わからないです」と表明してくれるような印象があって信頼できる俳優さんだという印象です。

小山:松尾さんは以前にご一緒した時(「願いがかなうぐつぐつカクテル」)は、翻訳劇で猫の役でしたが、今回は関西弁で年齢的にもリアルな男性役なので、松尾さんの人生が垣間見えるような瞬間もあって、私にはとても新鮮です。 昨日初めて立ち稽古をして、富子がどういう人かによって、徳人も変わってくると思うので、そのあたりも繊細に考えられながら稽古されていると思います。

横山:松尾さんについては、江口さん演じる富子が一生懸命生きている、それだけなのにずれていく感じに、関西弁で突っ込んでいくという関係性が成立するのに、松尾さんがぴったりだと思いました。ちょっと神経質にマイペースで突っ込んでいく姿が、とてもはまっていて面白いという印象でした。

-妄想の世界のおふたり、松岡さんと千葉さんは? (おふたりとも2役演じる)
小山:この妄想の世界は、私には映画のバービーのような作られた世界のイメージがあるのですが、おふたりは、すごく可愛らしい。とっても絶妙なところに、おふたりともいてくれて、あざといと思われるようなことやっても、ほんとに可愛いんです!でも、おふたりともよく考えていらして、投げかけたものを、すごい速度で考えて、次の時には違うもの出してくださる。知性も感じますし、おふたりとも、とっても素敵です。

横山:千葉さんは大好きな俳優さんで、あんまりテクニカルふうに見せないのに、実はものすごくたくさんの技術を持っている印象があります。上手く蓋をして隠しながら居続けるような役は、千葉さんがやると裏までちゃんと見えて、厚みがあって、面白いんじゃないかなと思っていますし、タイプの違う2つの役で楽しませてもらいたいと書かせて頂きました。
松岡さんは、印象は違いますが、ものすごく技術もあるし、自分の発する表情と言葉をきちんとコントロールできる巧さ・強みがある。ミコというつかみどころのない役も、いろいろなアイデアを持って演じてもらえるのではと期待しています。もう一つ役も、ざっくばらんに話す感じが、僕が一番好きな松岡さんらしさなので、稽古を楽しみにしています。

-最後にお客様にメッセージをお願いします。
小山:横山さんの書き下ろし作品をPARCO劇場で上演することは、私としては画期的なことだと感じています。しかも、上演時間がすごく長いわけではないですけれど、横山さんの作品の印象としては、大作になっていると思います。コメディでもありますし、お客様には客席でライブで感じていただければと思います。

横山:この作品の中で描かれている小説の部分や、淡い恋心、自分が叶えたい夢の話もあって、盛りだくさんなので、お客様にもそれぞれに感じていただけるところがあるのではと思っています。何よりも言葉の応酬が、この作品の面白みのひとつだと思ってるので、演出の小山さんはじめ、俳優たちが稽古場で、どう自分の言葉にして、お客さんに届けていくエンターテイメントにしていくのか、僕自身も楽しみにしながら稽古を頑張りたいと思っております。

PARCO PRODUCE2024
『ワタシタチはモノガタリ』
作:横山拓也
演出:小山ゆうな
出演:江口のりこ 松岡茉優 千葉雄大
/入野自由 富山えり子 尾方宣久 橋爪未萠里/松尾諭
公式サイト:https://stage.parco.jp/program/watamono
ハッシュタグ:#ワタシタチはモノガタリ
◆東京公演
[公演日程] 2024 年9月8日(日)〜30日(月)
[会 場] PARCO 劇場(渋谷 PARCO 8F)
[一般発売日] 2024年6月中旬予定
福岡・大阪・新潟公演あり
制作協力:ニベル
企画・製作:パルコ

福岡公演:2024 年 10 月 5 日(土)・6 日(日) キャナルシティ劇場
大阪公演:2024 年 10 月 11 日(金)~14 日(月祝) 森ノ宮ピロティホール
新潟公演:2024 年 10 月 18 日(金)・19 日(土)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場