シアタートラムにて2024年11月16日(土)より『ロボット』が上演される。
原作は、カレル・チャペックにより1920年に発表されたSF戯曲の金字塔「ロボット」。ノゾエ征爾の潤色・演出、水田航生、朝夏まなと、渡辺いっけい ほかの出演により現代の物語として立ち上げる。
チャペックは「労働」を意味するチェコ語「robota (ロボタ)」から、「ロボット」という言葉を新たに生み出したと言われ、ノーベル賞候補に7回推薦されたチェコの国民的作家。
この作品でロボットが反乱を起こした後、ただ一人残される人間であるアルキスト役を演じる水田航生がインタビューに応じてくれた。本作への意気込みと、作品に向き合う心構えなど、たっぷり語ってくれた。
【あらすじ】
物語の舞台は人造人間(ロボット)の製造販売を一手にまかなう工場。ロボットの進化により人間は労働から解放され、労働せずとも生活していけるようになった。人間たちは全てをロボットに任せるようになり、自分からは動かないまでに退化してしまう。やがてロボットたちは団結して反乱を起こし、人類抹殺の計画を始める。
-水田さんは2005年にオーディションを受けられてから数えると、来年でこのお仕事の世界に入られて20年ですね。
そうか?!(驚いたようで確認して)そうだ!(笑)
-それついては、また最後にお伺いさせてください。まずは本作について、オファーを受けたときのお気持ちはいかがでしたか?
僕の大好きなシアタートラムにまた立てるということが嬉しかったですし、原作を読んでみたら、冒頭の1~2ページから世界観に引き込まれてワクワクしました。アルキストという大事な役で呼んでいただけたことも、なによりも光栄だという気持ちでした。
-ロボット製造会社の社長ドミン役を渡辺いっけいさんが、工場に興味を持って訪ねてくるヘレナ役を朝夏まなとさんが演じられます。水田さんの演じるアルキストは、どんな役ですか?
ロボット研究所の建設部長で、レンガを一つひとつ積み重ねることに喜びや意味を感じるという、変わり者とまでは言えないけれど、ちょっと人とは違う観点からものが言えたり、問題提起したりする立場の人間です。
-水田さんのお名前が、出演者の一番上にありますので、座長でもありますね。
それはプレッシャーです。いえ、楽しみですね。(笑) でも台本の準備稿を拝見したら、誰が主役とか、誰を軸にして観るというよりも、登場人物それぞれにフォーカスが当たっている作品だと思います。
-ノゾエさんとお話をされましたか?
まだお話しできていないのですが、準備稿には原作を読むだけでは想像できないセットやト書きもいっぱい書いてあり、いろんな可能性がある準備稿だったので、これを演出によってどう見せるのだろう、どういう動きがつくのだろうと想像して、すごく楽しみにしています。
-原作は、人間が全ての労働をロボットに任せるようになった世界を描いているそうですね。
100年前は夢物語だったものが現実味を帯びてきている今、この作品が現代と地続きになるような、すごく身近に感じるような作り方も出来たりするかもしれないと思います。
僕も準備稿を読み終わった後に「人間的なことって何なんだろう?」とか「人として生きるって何なんだろう?」「労働とは何のためにあるんだろう?」と、改めて考え見つめ直しました。おそらくこの作品をご覧いただいたお客さまにも、フィクションやSF作品というよりも、今の社会に通じる心に響く作品になるのではと思います。
-水田さんご自身はどのように作品や役へ向き合われるのですか?
作品に対して常にフラットですね。カラカラのスポンジ状態で、作品が何色の水なのかで自分の色も変わっていくような感じがあります。ミュージカルだから、ストレートプレイだからと、心の持ちようを変えないようにはしています。
原作があるものは、やはり原作を読みます。そして、漠然と知ってることも深いところまで調べます。『ロボット』だったら、AIなど今の時代ではどうなっているのかを調べ、“アダムとイブ”というワードが出てくるので、漠然と知っているのではなく、深いところまでちゃんと調べます。それを説明するシーンがなくても、知っているか知っていないかだけで、心積もりが違ったりしますし、実はセリフにダブルミーニングがあるのかもしれませんし。稽古場に行くまでに、自分の手につくところの範囲ですけれど、ヒントを探します。でも結局は稽古場に行って、演出家や共演者やスタッフの皆さんが資料などを色々用意してくださることもあるので、それらに目を通しながらにはなりますけれど。
-それも楽しまれているようですね。
そうですね。基本的に大変なこともたくさんありますけど、その大変なことも含めて、やっぱり楽しいですね。いろいろと知りたがり人間なので。
例えば、この作品に出会わなければ、カレル・チャペックさんを知らないままだったかもしれない。「カレル・チャペック紅茶店」というお店があるんですよ。カレル・チャペックさんが由来らしいのですが、その紅茶店しか知らない人生だったかもしれないのに、この作品に携わることで、カレル・チャペックさんという作家を知れたことで嬉しくなっちゃうタイプなのです。
-自分の新しい世界が広がっていくのが嬉しいのは、お客様もきっと同じですよ!
確かに僕が出演する作品をきっかけに「新たな分野や物事を初めて調べてみました」とか「興味を持ちました」と言ってくださる方もいらっしゃるので、そう思うと、そんなことも演劇の楽しみのひとつですね。
-本当にそうですね。今回共演される朝夏まなとさん、渡辺いっけいさんと、これまでにご一緒されたことは?
今回は初めての方ばかりなんです。こういう現場に最近は身を投ずることがなかったので、自分がどう稽古場にいるのかも、ちょっと楽しみでワクワクしています。しかも朝夏さんも渡辺さんも昔から存じあげている方なので、1分1秒無駄にしない稽古をしたい。いろいろ考えて稽古場に入ると空回りしてしまうので、調べられることは自分で調べて、あとはまっさらな気持ちで、その場その場で感じることをキャッチアップすることに重点を置いた稽古をしたいと思います。
-さて、冒頭のお話しに戻りますが、来年で20年ですね。
その時々で揺れ動いたことはあったと思いますけれど「演劇が好き」「この仕事が好き」「お芝居している時が何よりも自分が生きていると感じる時だ」という思いはまったく変わっていない。20年を迎えて、これから21年目、22年目になっても、おそらく変わらないであろうし、変わってほしくないところです。
-これまでを踏まえて、今後の抱負もお聞かせください。
19年目の今年は、2013年に(マーキューシオ役で)出演したミュージカル『ロミオ&ジュリエット』にもう一度、今度はティボルト役で出演させていただきました。そして、『マーキュリー・ファー Mercury Fur』(2014年)、現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』(2015年)『お勢登場』(2017年)と出演させていただいた、この世田谷パブリックシアターさんに、また今回、久しぶりに呼んでいただける。そして最近、何年ぶりかに再会する人がとても多いのです。そこにはなにか意味があるのではないか…、「当時のことも忘れるなよ」「初心を忘れるな」と言われているようでもあり「この10年間やってきた君の経験を試されているんだよ」と言われているようでもあると感じています。
振り返って考えてみると、ありがたいことに、僕の人生の節目には「今それが必要だよ」と教えてくれているような出来事がありました。そんな、導いてくれているんじゃないかと思える出来事に何を感じて、どう活かしていくかはその時の自分次第なので、そんな出来事ひとつひとつにちゃんと気付けるアンテナを常に敏感に持っていたい。何歳になっても、そこは変わらずにいたいです。
アルキストがレンガを一個ずつ積み上げていくところに、もしかしたら似ているかもしれません。周りから見たらちっぽけなことかもしれないけれど、本人にとっては大事な時間で、大事な瞬間の積み重ねなのだろうと共感できます。僕も丁寧に積み重ねていきたいと思っています。
ヘアメイク:菅井彩佳
スタイリスト:山本隆司(style³)
『ロボット』
2024年11月16日(土)~12月1日(日) シアタートラム
【原作】 カレル・チャペック「ロボット」(海山社・栗栖茜訳)
【潤色・演出】 ノゾエ征爾
【出演】
水田航生 朝夏まなと / 菅原永二 加治将樹 坂田聡
山本圭祐 小林きな子 内田健司 柴田鷹雄 根本大介 / 渡辺いっけい
【料金】 (全席指定・税込)
一般 8,500円 / 高校生以下 4,250円
※劇場友の会、アーツカード、U24 割引あり ※託児サービスあり ※車椅子スペース取扱あり
【一般発売】2024年9月15日(日)10:00~
【お問合せ】 世田谷パブリックシアターセンター 03-5432-1515 https://setagaya-pt.jp/
【主催】 公益財団法人せたがや文化財団 【企画制作】 世田谷パブリックシアター
【後援】 チェコ共和国大使館 チェコセンター東京 日本チェコ友好協会 世田谷区
兵庫公演:2024年12月14日(土)15:00、12月15日(日)13:00 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【料金】 9,500円(全席指定・税込)
【一般発売】 2024年9月15日(日)
【取扱い・お問合せ】
芸術文化センターオフィス 0798-68-0255 (10:00~17:00 月曜休/祝日の場合翌日)
【主催】 兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
【『ロボット』公式 X(旧 twitter)】 @robot_sept2024
【世田谷パブリックシアター公式 X(旧 twitter)】 @SetagayaTheatre
【『ロボット』公式ホームページ】 https://setagaya-pt.jp/stage/15694