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開幕!とんでもなく愉快でとんでもなく厳しい芝居 こまつ座『太鼓たたいて笛ふいて』

太鼓たたいて笛ふいて舞台写真④s2

井上ひさし生誕90年の最後を飾る こまつ座 第152回公演『太鼓たたいて笛ふいて』が、11月1日に紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて幕を開けた。初日に先立ちゲネプロが行われた。
林芙美子役として主演を務めるのは、大竹しのぶ。
栗山民也の演出のもと、2002年の初演でも同役を演じ、第10回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞し、2004、2008 、2014年も同役を演じてきた。
今回は高田聖子 近藤公園 土屋佑壱 天野はな 福井晶一という新たな魅力的なキャストを迎え、この6名の出演者と、客席の最前列中央に置かれた1台のピアノにより、第2次大戦をはさむ16年の物語を綴る。(写真:宮川舞子)

太鼓たたいて笛ふいて舞台写真①s2
天野はな、近藤公園、福井晶一、大竹しのぶ、高田聖子、土屋佑壱

本作は、井上ひさしによる女流作家・林芙美子を描いた音楽評伝劇。大正から戦後まで活躍した林芙美子だが、本作で井上ひさしが描くのは、売れっ子作家になった後の林芙美子。
戦中に従軍記者として活躍するも、戦後は一転、反戦小説を書くようになった林芙美子を軸に、同じ時代を生き抜いた人々の姿と思いの変化を多重的に描いていく。

太鼓たたいて笛ふいて舞台写真②s2

それだけを聞けば、堅苦しい話だと思われるかもしれないが、さにあらず。
井上ひさしらしく、幕開けから観客をワクワクさせる技を駆使。朴勝哲のピアノ1台が壮大な音楽を奏でたかと思えば、子供心をくすぐる手法も使う。一緒に歌いたくなるハーモニーもあれば、聞き入ってしまう歌もあり。随所に笑いも織り込んで、観客を引き付けて放さない。第二次大戦前後を生きた普通の人たちの細々とした生活を描く中で大きな時代の流れを感じさせてくれる。

そして、登場人物、一人ひとりの個性が次第に露わになって、それぞれが複雑な時代の波を生き抜いて行く物語も興味深い。大竹はむろん、6人の俳優全員が生々しく生き、その心の叫びが、胸に迫ってきた。

第152回公演太鼓たたいて笛ふいて舞台写真⑧s2

左)芙美子のするどさは、母親ゆずりだと思わせる林芙美子の母・林キク(高田聖子)。まだ50代の高田が、見事なおばあさん役に。(当時は60才前後は十分に老人とされたのだと思い至らされた)

第152回公演太鼓たたいて笛ふいて舞台写真⑤s2

上)芙美子に歌詞を依頼にきたレコード会社社員の三木孝(福井晶一)。福井といえば歌。その期待を裏切らないだけでなく…。

第152回公演太鼓たたいて笛ふいて舞台写真⑨s2

右)人気作家の芙美子に、子供たちの施設への寄付を頼みにきた島崎藤村の姪の島崎こま子(天野はな)。”静かな気品があった”と言われていたらしい こま子の人柄を感じる。

後方)近藤公園、土屋佑壱が演じる行商人が、時代に翻弄される人生にも心揺さぶられる。

第152回公演太鼓たたいて笛ふいて舞台写真⑩s2

太鼓たたいて笛ふいて舞台写真③s2

★演出家 栗山民也 コメント
なんだか毎日の稽古がとても楽しかったせいか、本読みから通し稽古へのほぼ一ト月に何をしてきたのか、はっきりと思い出せないのです。6 人の俳優たちのいろんな絡み合いの絵が頭の中を巡り、その背後には劇中のたくさんの音楽が絶えず流れています。とにかく熱くなって多くを喋っていたこともおぼろげで、あっという間の初日なのです。激動の時代が目まぐるしく変転するこの熱い温度を持った作品が、今の世界の現在とあまりにも重なり合っていたせいかもしれません。
まるで今回の公演のために書かれたような、そんな感じの、とんでもなく愉快でとんでもなく厳しい芝居です。

★大竹しのぶ(おおたけ しのぶ)/ 林芙美子役 コメント
もう一度やりたいとずっと願っていたことが、やっと叶いました。
今回は5人の新しいキャストの方々を迎えての、5度目の上演。
今この状況の世界だからこそ、多くの人に観て貰いたいと心から思うのです。
井上ひさしさんがいつも言っていた言葉「いいお芝居ですね。僕はこの芝居が大好きなんです」。
またそう言って頂けるよう、みんなでクリスマスの山形公演まで、一回一回頑張ってゆきます。
幸せです。

第152回公演太鼓たたいて笛ふいて舞台写真舞台写真⑥s2

こまつ座 第152回公演『太鼓たたいて笛ふいて』
作: 井上ひさし
演出:栗山民也
出演
大竹しのぶ 高田聖子 近藤公園 土屋佑壱 天野はな 福井晶一 朴勝哲
東京公演:11月1日(金)ー30日(土) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
☆★スペシャルトークショー★☆
☆11月 7日(木)1時公演後 高田聖子 天野はな ※司会進行土屋佑壱
☆11月13日(水)1時公演後 大竹しのぶ
☆11月20日(水)1時公演後 近藤公園 土屋佑壱 福井晶一
☆11月26日(火)1時公演後 大竹しのぶ 高田聖子 福井晶一
※トークショーは、開催日以外の『太鼓たたいて笛ふいて』のチケットをお持ちの方でもご入場いただけます。
※出演者は都合により変更の可能性がございます。

≪全国公演≫
大阪公演:12月4日(水)ー12月8日(日) 新歌舞伎座
福岡公演:12月14日(土)ー12月15日(日) キャナルシティ劇場
名古屋公演:12月21日(土)ー22日(日)ウインクあいち
山形公演:12月25日(水) やまぎん県民ホール