1994年に生まれた音楽座ミュージカル「ホーム」が、ダンスミュージカルとして生まれ変わって12月8日まで上演されていた。残念ながら公演はすでに終了したが、12月14日(土)・15日(日)には、YouTube公式サイトにて東京公演の舞台映像が配信される。
東京公演を観劇した。
音楽座ミュージカル「ホーム」は、実話をベースに1994年に初演され、2010年、2018年と再演された感動の人気作品。今回、ダンスをたっぷり取り入れ、感動の作品がパワーアップ。エネルギーあふれる新作となって上演された。
劇場に足を踏み入れて驚いたのは、決して大きいとは言えない草月ホールが、とても大きく見えたこと。
無機質なセットを背景に、オープニングから俳優たちのダンスがあふれ、客席にエネルギーが押し寄せる。「これから何が始まるのか?!」というワクワクを盛り上げてくれる。
描かれる時代は、昭和60年代。ひとつの家族と、あるカップルの物語。
デパートの屋上でアドバルーンが飛んでいかないように見張るのが仕事の男が主人公のひとり。彼がひとりの女性と出会って、あたらしい家族ができた。
もう一組は、60年安保で学生運動に身を投じていた一組の恋人たち。昭和の世相を背景に、2組のその後の人生が交差しながら描かれる。
今作では、ダンスも心の内を伝えるひとつ。エネルギーあふれる群舞だけでなく、言葉にできない想いを伝えてくれる。
だが音楽座の本領は、市井の人の暮らしや姿を丁寧に描くこと。その中で人物一人ひとりの思いが、自然と観客の心に伝わり、共感の波が沸き上がってくる。物語の節目にダンスを織り込みながらも、その丁寧さは失われない。
時が流れる中で、家族は形を変え、恋人たちはそれぞの人生を歩む。変わるもの、そして変わらないもの…。
知る人には懐かしい、知らない人には驚きの昭和もしっかり見せてくれ、改めて時代の変化の大きさを感じると共に、当たり前とは何かを考えさせられた。
「この物語はどこへいくのか?」そんな思いがよぎるほど、多くの登場人物のエピソードと思いがどっさり詰め込まれ描かれる。等身大の人物像に「あるある」を感じて、俳優たちの演技であることも忘れてしまう。
もちろんユーモアもたっぷりちりばめられている。練りに練られた脚本と、それを実現する確かな演技力が、絶妙な間を生み、劇場を笑いで揺らす。
多くの登場人物たち、一人ひとりの物語が、劇の終盤には見事に収斂していく。しっかりとしたテーマに貫かれた、爽快な感動の波が押し寄せ、客席のあちこちからすすり泣く声が響く。
上演を重ね長く大切にしてきた作品に、さらに磨きをかけての今作。これだから、音楽座ミュージカルにはまってしまうのだろう。配信でもう一度観られることが、とても嬉しい。
■東京公演:11月29日(金)~12月8日(日)草月ホール(終了)千秋楽公演の配信あり
■大阪公演:11月22日(金)17:00 高槻城公園芸術文化劇場 南館 トリシマホール(終了)
▶︎公式HP:https://ongakuza-musical.com/2024/home
▶公式You Tube : https://www.youtube.com/@ONGAKUZA
■幸田町公演:2024年11月24日(日) 14:00 幸田町民会館さくらホール(終了)