「焼肉ドラゴン」などで知られる鄭義信作・演出、森田剛主演による舞台『すべての四月のために』が11月11日に開幕した。初日を控えた10日に公開ゲネプロが行われた。
物語は第2次世界大戦下の朝鮮、木浦から船で2時間の小島で理髪店を営む安一家が主人公。次女・秋子(臼田あさ美)と呉萬石(森田剛)の結婚式が行われていた。だが萬石は長女(西田尚美)への思いを捨てきれずにおり、それを知っている秋子は新婦でありながら浮かない表情を浮かべていた。
安一家は夫婦(左端 麻美れい 山本亨)
そして四姉妹(左から 次女・臼田あさ美 三女・村川絵梨 長女・西田尚美 四女・伊藤沙莉)
この祝いの最中に、この理髪店が日本軍専用となる通知がもたらされる。
物語はこの一家の戦中を、そして戦後とその先までも描いていく。
安一家、島の人々、そして島を占領している日本軍という立場も考え方も違う人々の苦労や複雑な思いの数々、そしてさまざまな愛のかたちを描き込んでいく。
厳しい時代を描きながら、一人一人の個性がくっきりと浮かび上がった物語には、笑いもちりばめられ、あの時代と今を深く考えさせられながら演劇の面白さを堪能させてもらえる170分(休憩15分)だった。
森田剛コメント
長かったような短かったような稽古期間、毎日、多くのダメ出しをいただきました。素敵な言葉がたくさんあるので、お客様にしっかりと届けたいと思います。大変な時代を生きぬく人たちの話ですが、観ている人に勇気を与えられる作品です。温かい家族なので、いい家族だな、と思ってもらえると思います。 その一員として観ていただけるように、稽古中の鄭さんの演出が自分の中に入っていればいいのですが、繰り返しダメ出しが出たシーンでは鄭さんの顔が浮かんできそうな気がします(笑)。本番が始まったら、役は役者のものでもあるので、のびのび演じられればと思います。
きっとこの作品を観た方は、自分の家族のことを思い出すのではないかと思います。同時に、自分の未来や過去、生きている意味を考えるかもしれません。さらには祖父や祖母、父や母がいて、自分がいるんだという当たり前のことが、とても幸せなことなんだと感じていただける舞台になっていると思います。
麻実れいコメント
鄭さんらしい世界を壊さないように、温かい優しい空気感の中でこれからの約一か月半、生きていけたらと思います。鄭さんとご一緒するのはひさしぶりでしたが、やはりお稽古はとても「しつこかった」です(笑)。しつこければしつこいほど、シーンを繰り返すことで私たち役者の中に入っていくので、幸せですね。特に2幕は運動量が半端じゃないので疲労もありましたが、お客様からのパワーでそれも溶けていくと思います。久しぶりにご一緒した森田さんは、普段寡黙ですが、今回は交わす台詞も多い役どころなので、実はすごく温かくて、優しくて、そしてかわいいところに触れられました。何より、舞台に向かう姿勢が真摯で素敵ですね。観終わった後、清々しくあたたかな幸福感に満たされる作品だと思います。
老若男女、すべての方に、足を運んでいただければと思っています。
鄭義信コメント
稽古の中で、それぞれのキャラクターがはっきり確立したように思います。舞台の上でそれがどう融合して、化学反応を起こしてくれるか、今はドキドキですね。稽古は和気藹々と過ごせました。森田さんとご一緒するのは初めてですが、これまでの作品にない森田さんの魅力を引き出せたのではないかと思っています。まっすぐな演技をなさる方なので、とても見ていて気持ちがよく、ご一緒したいと思っていました。とても素敵な方です。稽古場では明るく、明るくという注文も、嫌がることもなく実にのびのびと(笑)やっていただけました。割とご本人、ギャグっぽいのも好きなんじゃないかな(笑)。
テーマ自体は重いものを扱っていますが、笑って、泣けて、幸福な時間を共有できる舞台になると思います。ぜひ足をお運びください。
PARCO PRODUCE「すべての四月のために」
作・演出:鄭義信
出演:森田剛 / 臼田あさ美、西田尚美、村川絵梨、伊藤沙莉、小柳友、稲葉友、津村知与支、牧野莉佳、近藤公園、中村靖日、山本亨 / 麻実れい ほか
2017年11月11日(土)~29日(水)東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
2017年12月8日(金)~13日(水)京都府 ロームシアター京都 サウスホール
2017年12月22日(金)~24日(日)福岡県 北九州芸術劇場 大ホール
公式HP: http://www.parco-play.com/web/