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『密やかな結晶』藤原季節、山田ジェームス武、福山康平、風間由次郎 インタビュー

今をときめく女優・石原さとみが4年ぶりに出演する舞台であり、小川洋子の原作を鄭義信(チョン・ウィシン)が脚本・演出を手がけるとあって注目を集めている舞台『密やかな結晶』
Astageは稽古場を訪ねて、この作品に出演する4人の俳優、藤原季節山田ジェームス武福山康平風間由次郎に取材が叶った。

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福山康平        風間由次郎         藤原季節       山田ジェームス武

物語の舞台は、昨日まで存在していたものが、今日は記憶ごと消えてしまう不思議な島。
4人はそこで島の秩序を取り締まる秘密警察をそろって演じる。そして、その他の役も演じているのだとか。

舞台出演は4作目ながら、数多くの映像作品に出演し、海外からも高い評価を得ている藤原季節
多くの舞台に出演、昨年はユーミン×帝劇vol.3『朝陽の中で微笑んで』で鮮烈な印象を残した山田ジェームス武
今年20歳を迎える福山康平は、大河ファンタジー『精霊の守り人Ⅱ悲しき破壊神』(NHK)で妹アスラを守るチキサ役を熱演。真っ直ぐな強い瞳が忘れがたい。
そして、風間由次郎は『キンキーブーツ』『メンフィス』など数多くのミュージカルに出演。昨年は『オーバリング・ギフト』で初のオリジナル脚本・演出を手がけた。

この才能あふれる4人に、作品へかける思いと見どころ、楽しみどころを聞いた。

―みなさんは揃って秘密警察を演じると聞いていますが、その他の役も演じるのですか?
藤原:僕と福山康平くんはベンガルさんと3人で、原作にも登場する乾さん一家を演じます。ベンガルさんがお父さん、僕と福山くんは兄弟で、夜逃げをする前に主人公の“わたし”を訪ねます。ただ原作とはちがってお母さんがいません。

―福山さんが弟さん役ですね。
福山:はい。原作では乾一家は悲しげな四人家族ですが、鄭さんの演出が入って関係性が原作と変わっています。原作は姉弟でしたが兄弟になっています。
藤原:その他には、僕たち4人も秘密警察を演じますが、秘密警察役はメンバーそのままで島のおばちゃん役もやります。秘密警察も島のおばちゃんも歌って踊ります。

―えっ、この四人のイケメンがおばちゃんですか?!
全員:ハイ!(笑)

―びっくりしました! お稽古が始まって、いかがですか?
山田:僕は台本と稽古の差よりも、原作を読んでいた時の考えと台本をもらってからの差が大きかったです。原作では秘密警察についてあまり詳しくは書かれていなかったので「シリアスにいくんだろうか?」と考えていましたが、今の稽古の段階では、秘密警察も明るい雰囲気でやらせていただいています。そういう意味では、同じ『密やかな結晶』でも舞台は「こういう見方もあるんだ」という描き方なのかなと感じています。
それは僕らの演じる役だけでなく、石原さとみさんや鈴木浩介さん、ベンガルさんや山下圭哉さんの役も、僕が想像していたのとは違う見方で構築されているキャラクターです。原作を読んだ上で稽古を見ているので、すごく楽しいですね。
風間:秘密警察は原作では謎の強面(こわもて)集団で、僕たちの秘密警察も強面なんですが、でも決して生まれながらのサイボーグなんかではない。元は普通の人間で、何かのきっかけで軍隊のような秘密警察に入っただけなんですよ。秘密警察の秘密じゃない部分を僕らは演じています。
藤原:原作は一貫してシリアスな雰囲気ですが、舞台となれば笑いもあります。歌ったり踊ったり、音楽も全部曲調が違います。ミュージカルのようにわっと盛り上がる曲もあれば、バラードのような曲もあり、アイドル風やロックぽい曲もあります。まだ内緒かな?村上虹郎も歌います!暗い作品を描くために必要な笑いや明るさも盛り込まれているので、観て頂いたお客様には「楽しかったな」「楽しかったけど、悲しかったね」と思って頂けるだろうと思います。思い出に残る作品になるといいなぁと思いながら稽古をしています。
山田:そういう面では秘密警察はすごく・・・
風間:重要ですよね。
藤原:明るい部分を担っていますからね。
山田:三場での歌も、台本だけ見ていたときには軽く歌うのかと思っていたら
藤原:アカペラで歌うくらいかと思っていたら
山田:それはもうしっかり歌うんです。(笑)ストーリーが進む中で歌や踊りが入ってくることが、物語に緩急をつけることになっているのかな。
風間:稽古をしてみて、島のおばちゃんや秘密警察も「えっ、歌うの?!」というようなコミカルな感じが楽しいだけではなくて「実はすごく重要な歌詞を歌っているんだ」と思いました。
藤原福山:そうだね。確かに!
山田:三場の歌は、失っていくものについてや、島の状態を表している歌詞です。この作品の世界観は、だいたい僕たちがミュージカルのように歌で伝えていきます。
風間:ファンタジーという部分がある『密やかな結晶』での普通と、現実の普通とは違う部分があります。島のおばちゃんというのは、この『密やかな結晶』の世界で普通に暮らしている人です。島のおばちゃんや秘密警察が歌ったり踊ったりするのは楽しいシーンにはなると思いますが、この作品世界の中でのルールや秩序を表す大事な場面ですから、お客様にちゃんと伝えたいですし、やりがいを感じています。
山田:俳優が芝居の中でわざわざ台詞として言う必要はないことや、感情では表しきれない芝居の部分を、僕たちが空気で伝えていると感じる時があります。それも作品や世界観につながって、また俳優にバトンを渡すことができれば、すごくいい作品になるのかなと思います。
福山:僕たちは原作を読んでから台本を読んでいますから、『密やかなる結晶』という作品の世界観をよく分かっていますけれど、初めて舞台をご覧頂くなら、歌と踊りは世界観を感じることができる見どころになると思います。

―さて、初共演の4人。これまで少しずつ違ったフィールドで活動されてきたのではと思います。
山田:違うよね。
藤原:そうかもしれないね。

―福山さんは、どう感じておられますか?
福山:今回は僕が一番年下で、しっかりしたお兄さん方がいるので・・・。
風間:福山くんが一番大人みたいで(笑)
藤原:一番しっかりしているよ!(笑)
山田:僕らが使われています。(笑)
福山:もう、武くんは! こうしていじるんですよ。(笑)

―もうすっかり仲良くなられていますね。
福山:はい、すごく有難いです。インタビューなどでも、みなさんに甘えています。

―初めてご一緒されて、刺激を感じておられますか?
風間:それはありますよね。
藤原山田福山:はい。
風間:「初めまして」でお仕事する瞬間は、やはり楽しいですし、本読みで会った時はワクワクしました。立ち稽古が始まったら、またワクワクして。「このメンバーで地方公演まで行くんだな」と。(笑)
山田:基本的に変わり者だらけの現場ですからね。
福山:間違いないです!
藤原:秘密警察のメンバーは個性的です。風間さんはダンスが圧倒的に上手くてすごいんですが、一番練習をしているのも風間さんだということが印象的です。
山田:確かに。
藤原:空いた時間を見つけたら練習していますよね。一番上手い、かつ一番練習しているので、どう勝てばいいのか・・・。
風間:いやいや、みんな練習しているよね。
山田:僕は追いつけなくて、どうやってついていこうかと考えていますから。(笑)
藤原:居酒屋で山内(圭哉)さんに「楽しむのが一番大変だ」「一生懸命がんばるのは誰にでもできることだから、楽しみなさい」と言われまして、「僕も楽しんでやらなきゃ」と、その言葉が励みであり目標になっています。最初は楽しむところまでいくのに、ちょっと・・・ありませんでしたか?
山田:ありましたね。僕も居酒屋で山内さんに言われましたよ。「ジェー、おまえ、見かけによらずダンス下手だな」と言われて「そうなんです」って答えたら「でも見ていて楽しそうにやっているから、気持ちいいよ。そのまんまでいきな」と言ってくださって。ちょっと安心するよね。
藤原:そうですね。楽しむってことの大変さと、それを勉強するための現場なのかと思いながら毎日稽古しています。
山田:僕たちの歌・ダンスについては「純粋に楽しめ」って意味もあると思いますが、僕らが大変そうな顔をしていたら、楽しいシーンも楽しくなくなってしまうと思うので、そういう意味も踏まえて言ってもらったのかなと思います。

―福山さんはダンス、いかがですか?
福山:僕はダンスの経験がほとんどないんです。原作にはダンスはありませんし、最初に台本を読んだ時には歌詞は書いてありましたが、踊るシーンはどこか書いてなかったので、「僕は大丈夫だな」と安易に考えていたんです。でも僕もダンスに参加して、少しずつやることが増えてきています。ダンスは普段やらないことなので、まだ今は楽しんでやっています。本当はもっと「キツイ!」と思うレベルまでやらないといけないと思うので、これからがんばらなくてはと思っています。

ーでは、最後にお一人ずつ見どころの紹介をお願い致します。
山田:僕たちは秘密警察としては一緒に舞台に出ますが、全員それぞれが個性的なメンバーばかりで、舞台での立ち方にもそれが出ています。さきほど由次郎が「秘密警察はサイボーグではない」と言いましたが、秘密警察も一人一人いろいろ違いがあって、それぞれの人間らしさがとても出ています。それは芝居が違うだけではなくて、俳優の素が秘密警察という役とあいまって出ている部分もあると思います。秘密警察というひとくくりではなく、一人一人深く見ていただけると、また面白さを感じてもらえると思います。

―おばちゃんもそうですか?
山田:おばちゃんもそうです。(笑)季節が一番楽しんでいると思います。
福山:間違いない!

―藤原さん、風間さんはいかがですか?
藤原:見終わった後に、メインキャストの3人はもちろんですが、そこで歌って踊っていた人たちも思い出してもらえると思います。僕も鄭さんのお芝居を見て、歌ったり踊ったりするお芝居は、ものすごくよくそのシーンを覚えています。
山田:印象に残るよね。
藤原:「あのお芝居よかったね」と言われる、その記憶のそばにいられるぐらい楽しんで歌って踊れればと思っています。僕たちが楽しんでいれば、お客様にも見て頂けると思うので、言っちゃいけないんだけど、がんばりたいです。楽しみたいです。そして、楽しい芝居ですが、楽しい中にも良いセンテンスがたくさん入っています。観た後にちょっと考えるきっかけになるようなお芝居になるといいなぁと思います。
風間:この作品には、“秘密警察”のような記憶を失うことに従順な人、“わたし”のように記憶を失うことに抗う人、“R氏”のように記憶を失わない人、がいます。観て頂いたときに「この世界は普通じゃない」と思われるかもしれません。でも消滅が起きるこの世界ではそれが普通なんだと感じ取ってもらえたら、感情移入して楽しめると思います。僕たちは〔記憶を失くす人〕を演じるので、是非僕らに感情移入してもらいたいですし、〔記憶と失う人×記憶を失わない人は結ばれるのか、分かり合えるのか〕〔記憶が消えるもの同士で補っていくのか〕など、この三角関係を楽しんでもらう・・・というところまでいけたら、最高にいいなと思います。

― 一度観て、二度目は違った視点から観て・・・とか、原作を読んでからまた観て・・・とか、したくなるかもしれませんね。
風間:そう思ってもらえたら、いいですね。「もし自分に同じ消滅が起きたら、どうするんだろう?」とか、考えてもらえたりするといいですね。
福山:見どころは3人にしっかり話してもらったとおりです。付け加えるとしたら・・・、たとえば本読みのときにキャストの間でも「原作のこれは台本にある」「これはない」という話をしました。原作は読む人によって印象的なシーンが変わる作品だと思います。それは舞台でも同じだと思います。まずは劇場に観に来て頂けたらと思います。

『密やかな結晶』
原作:小川洋子「密やかな結晶」(講談社文庫)
脚本・演出:鄭義信
出演: 石原さとみ 村上虹郎  鈴木浩介
藤原季節 山田ジェームス武 福山康平 風間由次郎
江戸川萬時 益山寛司 キキ花香 山村涼子 /山内圭哉 ベンガル

日程:2018年2月2日(金)~25日(日)
劇場:東京芸術劇場 プレイハウス(東京・池袋)
チケット料金(全席指定・税込):S席=\9,000 サイドシート=\7,000
公演twitter = @hisoyaka2018
公演HP = http://hisoyaka.com/
*3月に富山公演、大阪公演、福岡公演あり