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『PHOTOGRAPH 51』インタビュー 矢崎広&宮崎秋人 矢崎広「お客様の目線に立つことが多いこの役が楽しみ」&宮崎秋人「矢崎先輩に全力でぶつかっていく」

女性科学者 ロザリンド・フランクリンは、DNAの二重らせん構造という大発見に大きな貢献をしたのだが、ノーベル賞を受賞したのは彼女ではなかった・・・。
近年になって再評価されるようになったロザリンドと彼女を取り巻く5人の男性を描いた舞台『PHOTOGRAPH 51』。
ウエストエンドでは二コール・キッドマンが主演して大好評を博したこの舞台が、この春、東京と大阪で上演される。

ロザリンド役には本作が初舞台となる板谷由夏。そして、神尾佑、 矢崎広、 宮崎秋人、 橋本淳、中村亀鶴という演技に高い評価をもつ俳優が個性的な5人の男性を演じる。

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矢崎広      宮崎秋人

今回Astageは、近年、目覚しい活躍を見せる矢崎広宮崎秋人のインタビューが叶った。
久しぶりの顔合わせとなる二人は、本作でどんな役をどう見せてくれるのか。
互いをよく知る二人だからこその化学反応は生まれるのだろうか?

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―おふたりの共演は、ミュージカル『薄桜鬼』(2012年~)でしたか?
宮崎:『薄桜鬼』以来、初めてですね。
矢崎:共演したのは『薄桜鬼』だけ?
宮崎:そう、『薄桜鬼』以外には共演作はないです。
矢崎:『薄桜鬼』の頃はしょっちゅう一緒にいましたね。

―それでは、もうお互いに分かり合えている?
宮崎:(顔を見合わせながら)僕はいつも見てもらっている・・・という感じですね。
矢崎:そうなんだ!(笑)

―そのあたりのお話は後ほど伺うとして、まず『PHOTOGRAPH 51』はどんな作品なのでしょうか?難しい作品ではないかとちょっと心配です。
宮崎:専門的な用語や聞きなじみのない言葉は出てきますが、結局は人間関係のお話なので、ストーリーの大枠としては、そんなに難しいことはないと思います。
矢崎:そうですね。科学者たちのお話なので、難しそうに思えるかもしれませんが、出てくるのはDNAのらせんという、最近ではCMでも見かけるような言葉なので、お客様も頭の中でイメージを描きやすいと思いますよ。今の日本と違って、女性が活躍することが難しかった時代にいた、ロザリンドというひたむきな女性科学者を中心に話が進んでいきます。

ー矢崎さんはどんな役を演じるのですか?
矢崎:僕はロザリンドの助手として登場するゴスリングを演じます。若い科学者で、ずっと彼女の傍に居て、でいろいろな科学者とかかわっていきます。どちらかと言えば、ロザリンドを支える側の人間です。

―この作品で楽しみにしていることは?
矢崎:初めてお話を頂いた際、「ゴスリングってどんな役だろう?」と思い、作品について調べてみたら、ウエストエンドでとても評判となっていた作品だと知りました。今は、単純にこの役を演じることをすごく楽しみにしています。5人の男性が登場し、それぞれがストーリーテラーとして観客に話しかけますが、僕がストーリーテラーとなる場面が断トツに多いんです。
僕はストーリーテラーをする役者さんが好きですし、とてもあこがれています。ストーリーテラーになることが多いというのは、お客様の目線に立つことが多いということで、それはまた、自分がお客さまに語りかけながら役に戻ったり、芝居の世界に戻ったりすることに挑戦できる機会になると思います。「がんばりたい!」とすごく思っています。

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―観客も舞台に参加する感じでしょうか。楽しみです。宮崎さんが演じる役は?
宮崎:僕の演じるワトソンはざっくり言うとすごく生意気なヤツです。(笑) 「コイツ、嫌いだわ~」と思いながら台本を読んでいます。 (笑)

―ワトソンは後にノーベル賞を受賞した方ですよね。
宮崎:僕はまだ出演が決まる前、まだ仮台本しかないときに、演出のサラナ・ラパインさんと面談をしたんです。その時に「どの役をやりたいのか?」と聞かれて「ワトソン」と即答しました。そしてワトソン役をやることになったので、すごく嬉しく思っています。
ワトソンは好かれる要素がない役です。そういう役は初めてなので、どこまで人に疎まれることができるか、僕にとって大きな挑戦になると思います。
そして台本を読んで感じたのは、幕が開くと最後まで途切れることがなく続いていく作品で、1時間半の上演中は集中力を切らさないようにしなくてはならない。でもストーリーテラーのようにお客様に話しかけることもあるので、集中力と体力が要る作品になるだろうと思っています。

―演出のサラナさんは『4Stars 2017』も担当された方ですが、宮崎さんがお会いになった印象は?
宮崎:サラナさんから「質問はありますか?」と聞かれて、僕が外国の方の演出を受けるのは初めてなので「演出するのは日本語の芝居なのだが、分かるんでしょうか?」という質問から始めて「これは嫌われたなぁ」と思うくらいストレートにいろいろと尋ねました。「これでダメならしょうがない」と思えるくらい真正面からぶつかっていきました。だから、生意気なワトソン役がもらえたのかなと思いました。(笑)
サラナさんも真摯に受け止めて答えてくださり、自分のビジョンを明確に伝えて下さいましたので、演出して頂けるのが楽しみです。

―見どころはどこでしょうか?
矢崎:稽古前の今の段階で思う見どころですが、女性が活躍することが難しい時代に、ひたむきに研究していた主人公のロザリンドという女性の生き方でしょう。しかも、その女性はユダヤ系で、ユダヤ差別もまだ残っていた時代だったんです。
今の日本では女性が活躍していますが、でもまだまだな点も少なくないですし、特に女性の心に響く作品になるのではないかと思いっています。

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―さて、久しぶりの共演となるおふたりですが、共にすばらしいご活躍をされています。互いに注目しているのは、どんな点ですか?
宮崎:僕は広くんにはデビュー当初からずっとお世話になっています。何もできない頃に、僕や松田凌は「矢崎広の背中をおっかけよう!」と思ってきたので、僕からしたらずっと親鳥です。
矢崎:そんなこと、ないです!
宮崎:正直に言いますと「デビューして3~4年で肩を並べられるのではないだろうか」と思っていましたが、無理です!まだまだです!(笑) 最近も舞台を観に行かせて頂きましたが、幕開け直後に広くんがセンターに出てきたときに、よくわからないんですけど涙出ました。

―それはどの作品ですか?
宮崎:『モマの火星探検記』です。
矢崎:ありがとう!
宮崎:一人のファンとして広くんのことを見ているんです。
矢崎:うれしいです。
宮崎:口惜しいですけれど「ちょっと追いつけないな」と思います。
矢崎:いやいや・・・。

―追いつけたと思ったら、もう先に行ってしまっている?
宮崎:はい。ちょっと止まってほしいです。(笑) だって、広くんの武器には歌もあるんですよ!!
『薄桜鬼』では、広くんは土方歳三という堅い役でもあったので、しっかり作品に根を張り巡らして皆をひっぱる、支えるという立ち位置の役者さんだと思っていましたが、最近ではネタを振られても楽しんで演じる姿を拝見して「こんなこともできるんだ」「ずるい役者だ」と思いました。しっかり支えることもできるし、お客様のハートをしっかりつかんで笑わせたりもするんですから。
矢崎:ホントにありがとうございます!
宮崎;だから、『PHOTOGRAPH 51』で同じ舞台に立てるのは、すごく嬉しいんですが、同じ板の上で今の自分を広くんに見られるというのは、正直怖いです。でも題材としては申し分のない、出し切らなきゃいけない作品なので、今の自分がどこまでできるのか、矢崎先輩に全力でぶつかっていこうと思っています。
矢崎:(恐縮しきりな様子)

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―矢崎さんから見ての宮崎さんは?
矢崎:ミュージカル『薄桜鬼』をそれぞれ卒業していったわけですが、『薄桜鬼』をやっていた当時のメンバーの中でも宮崎秋人の活躍は目覚しいものですね。「秋人は活躍するよな」と思いながら、その活躍をずっと見ていました。やはり彼は好きな役者です。ハートがある役者ですし、支持していますし、このままいってほしいと思っています。
今回も共演者に秋人がいるのを聞いて、とても嬉しかったし心強かったです。ひとつの作品をずっと作ってきたという信頼もあります。今回は以前とは違って、役柄も僕の方が年下なのかなと思います。長年の信頼感もあるので、今回は秋人に頼るような感じでやっていきたいなと思っています。
宮崎:ハハハ!!
矢崎:秋人は僕を褒めてくれましたけれど、僕も同じようなことを秋人に感じていますし、僕が持っていないものを秋人はたくさん持っているとも感じています。

―その「僕がもっていないもの」とは?
矢崎:秋人然としてあるもの・・・きっと彼の中で「これはいいこと」「これは良くないこと」というのがしっかりあるんです。そして周りを見るセンスはすばらしいと思います。それが芝居にも生きていて、善悪が分かっているから周りを見ながら瞬時に判断できる。切り替えのスイッチもすばやい。
宮崎:ありがとうございます。照れくさいです・・・。(笑)
矢崎:ハートもあるし、全力でやる。本当にがむしゃらにやるところが、やっぱり好きです。

―同じ舞台の上のお二人が楽しみです。では最後に、昨年を振り返りつつ、2018年への意気込みをお願い致します。
宮崎:ずっと勢いで駆け抜けて来た感じがしていたのですが、2017年は少し違っていました。舞台作品への出演はそこまで多くなかったですし、1回ブレーキをかけてひとつひとつの作品に向き合う時間があり、丁寧に1作ごとに向き合うことができたおかげで、この仕事が改めて好きになれた、「もうひとつ上のステップで好きになれた」という思いがあります。
2018年は年始からいろいろ作品に出演させて頂いて、春にはこの『PHOTOGRAPH 51』がある。今まで以上に求められることが多くなってくる2018年なので、2017年はそこへ繋がる良い年だったと思います。また得られることが多い2018年になると思うので、毎年一個一個積み上げることができるように、がんばりたいと思っています。
矢崎:2017年は7月に30歳なりました。30歳になった年ですが、30代が始まった年でもあり、気持ちとしては「なった」と「始まった」が半々です。30歳になったときに気持ちの変化があり、同時に責任感も感じましたし、自分でもよくわからないのですが「体の変化もあるなぁ」と感じています。そのあたりを自分の中で向き合いながら、作品づくりにかかわり始めています。
30歳のタイミングだからなのか、芝居についてもいろいろ思うことや感じることが増えてきました。「今まではこうしてやってきたけど、全部違うことをしてみようか」「挑戦してみよう」と思ってトライして失敗して、また元に戻したり…。新しい年が僕には区切りではなくて、「(年齢で考えると)まだ一年の半分」「まだ途中だ」という感じでいます。
抱負といえるのか分かりませんが、2018年は、そして『PHOTOGRAPH 51』でも「自分に足りないものや挑戦できるものを見つけてやっていきたい」という思いです。

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『PHOTOGRAPH 51』 公演概要
作:アナ・ジーグラ 演出:サラナ・ラパイン
出演:板谷由夏 神尾佑 矢崎広 宮崎秋人 橋本淳 中村亀鶴
公演日程:
2018/4/6(金)~2018/4/22(日) 東京・東京芸術劇場シアターウエスト、
2018/4/25(水)~2018/4/26(木) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
お問い合わせ(10時~18時):梅田芸術劇場 0570-077-039[東京] 06-6377-3800[大阪]
公式HP: http://www.umegei.com/photograph51/
Twitter: @Photograph51_JP Instagram: @Photograph51_JP