昨年10月の東京公演で、昇降機に衣装が巻き込まれ左腕に重傷を負った市川猿之助が、4月1日から大阪・松竹座で上演されるスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』に帰ってくる。今回は、東京公演で代役を務めた尾上右近と主役をWキャストで演じ、配役は日替わりの4パターンとなる。
3月17日に都内で行われた市川猿之助、尾上右近、坂東巳之助、中村隼人、坂東新悟が揃った取材会をレポートする。
中村隼人 尾上右近 市川猿之助 坂東巳之助 坂東新悟
猿之助の怪我はまだ完治していない。だが「医師から動いて良いと言われている」「恐怖心はない」と猿之助は淡々と語った。
松竹座での公演については「僕はあまり動けないから、展示された国宝仏像を見に来る感じで」「動くルフィーが見たければ、(尾上右近がルフィーを演じる)昼の部がお勧めだよ」と笑顔で。4パターンの配役は「怪我の具合と照らし合わせながら、右近くんが立派な本役としていけると思った」「イワンコフやサンジが一人しかできないのは困る」「ミュージカル仕立てにしたかった」ことから生まれた。
さらに「ワンピースが作品で感動していただいているのは、非常によかった。僕の手を離れても作品として成立していた。観れば、猿之助の色が分かるくらい出ていた。猿翁から『作品を残せ。自分の身は滅んでも名前は後代に残る』とよく言われていました。それができたから『ワンピース』はいいな」とも話した。
大阪公演に向けてのブラッシュアップのポイントは「時間を短くする。『勧進帳』のように絶対にいじれないかたちにしたいです。究極のかたちに」と尽きない意欲を示す。
市川猿之助が怪我で降板した後、東京公演で主演を務めあげた尾上右近。
7月には初の翻訳現代劇『スプーン一杯の水』への出演が決定。注目を集めている彼が、大阪公演でもWキャストとしてルフィー、ハンコック役を演じる他、他の配役組み合わせではサディちゃん・マルコを演じる。
東京公演を終えた直後は「無でした。一日、一日(重ねる)だけだったので、(無事終えられて)良かったと思う部分もありましたが、それからのこともありましたし、いろんなことを感じ過ぎて、一回転して無でした」と言う。
4月からの公演について、猿之助から「(東京公演での)2ヶ月で右近くんが立派な本役としていけると思った」「彼はすごく動くからね」の言葉に「そんなことを言っていただけるとは」と頭を下げつつ満面の笑顔を見せた。
大阪・松竹座での『ワンピース」には初参加となる坂東新悟。
演じるサディちゃん役について、Wキャストの右近から「僕は動きであでやかさを、新悟さんはワンピース体型で声もきれいで素敵」と言われ「(東京公演では)右近くんのサディを追い求めたところがあったので、寄せたいところはよせたいし、自分なりの違うやり方の方も追求したい」
サンジ、イナズマ、マルコを演じる中村隼人。
右近とWキャストになるマルコについて「(東京公演の)最初は、右近くんの演じるマルコを見ていたので、まさか自分がやるとは思っていなかった。原作がとても好きで、キャラクターの口調や特性、思い、背景が漫画で入ってくるので意識します。年上の先輩が多いが、(マルコは)白ひげの右腕ですから、その方たちを引っ張っていけるような兄貴気質を演じられればと思っています。」
猿之助の「ミュージカルテイストにしたかった」との意向を受け、劇団四季で長く活躍した下村青が、本作初出演となり、 日替わりでイワンコフ、全日程でブルックを演じる。
初演からゾロ、ボン・クレー、スクアードの三役を演じている巳之助は音楽にも詳しい。
巳之助は下村が歌う楽曲を聞いた感想を「違うテイストになっています。また面白くなりそうです。曲は(既存曲の)アレンジで、すごく素敵になっています。歌詞もすごいです」。
猿之助が「『シカゴ』かと思った」、右近が「良い意味で予想を裏切られる。新鮮なスパイス」と言う下村が生むミュージカルテイストも大きな楽しみになりそうだ。
本公演は2018年4月1日(日)~25日(水) 大阪・松竹座にて。公式HP http://www.onepiece-kabuki.com/