竹中直人と生瀬勝彦が、劇作・演出に倉持裕と共演してみたい旬な女優をヒロインに迎えて贈る舞台「竹生企画」。その第三回公演『火星の二人』が4月10日(火)の東京・シアタークリエを皮切りに、全国各地で上演されます。3月半ばに、その稽古場を取材しました。
稽古場に入ると、目にとびこんできたのは、大事故から奇跡的に生き延びた朝尾(竹中直人)が、妻・素美(高橋ひとみ)、息子・正哉(池岡亮介)と暮らす家です。
稽古開始前に、スタッフから「このセットは、本物です。昨日がんばってだいぶ作りましたが、完成までもう少しです」と説明がありました。これからまだ追加装備を備えたり、手を加えたりするのだそうですが、キャストの皆さんは歩き回ったり、階段を駆け上ったり、立派なセットが嬉しそうでした。
この日の稽古は、志波(生瀬勝久)が、朝尾に事故の話を聞きだすところから始まりました。
朝尾(竹中直人) 志波(生瀬勝久)
事故の模様が竹中さんと生瀬さんの会話だけで鮮やかに描写され、二人の話を聞いているだけで、事故の様子が映像のように頭に浮かんできました。ドラマや映画では味わえない、舞台ならではの体験に、グングンに引き込まれていきました。
事故から1年が過ぎたというのに、朝尾が事故の話をするのはこれが初めて。
つらい思い出を苦しみながら語る朝尾を、素美と正哉、正哉の彼女・さやか(上白石萌音)が遠巻きに見守りながら聞き入っています。
素美(高橋ひとみ)
さやか(上白石萌音) 正哉(池岡亮介)
やがて生瀬さん演じる志波が、事故で生き残った二人のうちのもうひとりであることが明かされます。
二人は同じ大事故を生き延びたのですが、生瀬さん演じる志波は生き生きと活力にあふれ、苦悩している竹中さん演じる朝尾とは対照的。会話しているだけなのに、二人の正と負のエネルギーが真正面からぶつかり合っているのが感じられました。
ここまで約30分。一気に稽古をした頃、それまで無言だった倉持さんが手を叩いて芝居を止めました。
倉持さんは2~3箇所でキャストの立ち位置を指示すると、もう一度最初からスタート。
今度は随所で止まりながらの稽古となりました。
倉持さんがこまめに声をかけていたのは、竹中さんの台詞に対して、他の俳優たちが反応するタイミングと動き。いつ返事をするか、どう体を動かすか、動かす速さなど、気にしていなければ気がつかない、いや、気にしていても気がつかないくらいのわずかな違いを、いろいろな場面で調整していきます。
優しく竹中さんを見守るのは、妻役の高橋さん。倉持さんから指示がある度、丁寧に繰り返し演じます。すると不思議なことに、妻だけでなく、息子と息子の彼女の主人公への気遣いまで一層感じられるようになってきました。ほんのわずかな違いが描き出す心の動き・・・これを演技というのですね。
息子・正哉役の池岡亮介さん。
事故により父が変わったことで、彼もまた変わり、彼女との関係も変わってしまいました。いい加減そうなのに、まじめそうにも見えて・・・。彼にも謎がありそうです。
今回のヒロインは上白石萌音さん。竹中さんとは映画『舞妓はレディ』で共演されていましたね。
本作では、朝尾家の一員ではない彼女が、この家族を見つめる目線や、正哉との若者らしいやり取りがこの物語に新鮮なエネルギーを注いでいるのを感じました。
事故からは一番遠いところにいるはずの彼女が、この物語のキーパーソンだったりするのかな?・・・と想像は尽きません。
さて、この一家を訪ねてきた志波の真意は何なのか? そして、事故にも、主人公にも、この一家にも隠された何かがありそうで、ワクワクします。
毎回、緻密な作りの上に、観客の予想を超える展開を繰り広げる倉持作品。この先に、どんな倉持ワールドが展開するのか? 伏線がどこかにあったのだろうか? 気になって、楽しみでしかたなくなりました。
出演は、竹中直人さん、生瀬勝久さん、上白石萌音さん、池岡亮介さん、高橋ひとみさんと、前野朋哉さんの6人。
公演は4月10日(火)~25日(水)東京・日比谷シアタークリエを皮切りに、大阪、愛知、富山、石川、長野、宮城、岩手、栃木、新潟、香川、広島、鹿児島、長崎、福岡にて予定されています。
公式HP:https://kaseinofutari.amebaownd.com/
<公演概要>
『火星の二人』
作・演出:倉持 裕
出演:竹中直人 生瀬勝久 上白石萌音 池岡亮介 前野朋哉 高橋ひとみ
<東京公演>
2018年4月10日(火)〜25日(水) シアタークリエ
チケット料金:¥9000(全席指定、税込)
<全国公演>
大阪、愛知、富山、石川、長野、宮城、岩手、栃木、新潟、香川、広島、鹿児島、長崎、福岡にて公演予定
公演に関するお問い合わせ:キューブ 03-5485-2252(平日12:00〜18:00)
企画・製作:東宝・キューブ