conSept Musical Drama #7 『SERI~ひとつのいのち』が2022年10月に東京の博品館劇場と、大阪の松下IMP ホールにて上演される。
高橋亜子(脚本・作詞)、桑原まこ(作曲・音楽監督)、下司尚実(演出・振付)が初コラボで贈る本作は、倉本美香の『未完の贈り物』を原作にしたオリジナルミュージカル。目が見えず、話すこともできない少女「千璃(セリ)」と生きる日本人家族の葛藤や闘いを音楽やダンスに乗せて描く。
このたび、本作の取材会が行われ、千璃役の山口乃々華、千璃の母・美香役の奥村佳恵、父・丈晴役の和田琢磨が出席し、本作への想いや意気込みを語ってくれた。
― それぞれの役の印象と役に対してどのようにアプローチしていきますか?
和田琢磨(以下、和田):私自身、父親役や夫の役は人生で経験がありませんが、実年齢的には、適齢というか、ちょうどいい年齢ですので、役に対して自分でどう作っていこうかというよりは、美香役の奥村さんとSERI役の山口さんから色々吸収し、それに素直に反応して丈晴という役を作っていけたらいいなと思っています。
彼らに起きた出来事は非日常的なことではありますが、台本を読んで解らないとか、共感できないという印象はなかったです。技術的に難しいことはたくさんありますが、今まで自分の人生で経験してきた感受性みたいなものを存分に広げていければ、そんなに難しくはないかなとは思っています。
山口乃々華(以下、山口):今回は千璃が誕生して学校に入る6歳まで、両親と一緒に過ごす時間が細かく描かれています。私自身は目も見えるし言葉も理解できる、普通の女子として育ってきたので、目が見えない状況や、“理解ができない”のはとても怖いことだと思いますし、簡単に理解できることではない。でも、その状況は千璃にとっては当たり前のこと。伝える手段が私たちと比べれば少ないというだけで、きっと 心が豊かに動いているかもしれないと感じたので、その感性のアンテナをしっかり張って身体で動いていきたいと思っています。
奥村佳恵(以下、奥村):私は感情の幅が大きく揺れ動く役で、自分の感情の高ぶりをそのまま歌にしているシーンもたくさんあります。音楽の力はとても大きいと思いますので、音程をしっかりとっていくということも含めて、歌のシーンもお芝居のシーンも自分が引っ張られ過ぎないようにバランスを取りながらやっていきたいです。
― 今回はお三方とも初めての共演とのことですが、お互いの印象をお聞かせください。また、3人でどのように舞台を作っていこうと考えていますか?
和田:どこまで何ができるんだろう・・・と、僕自身もワクワクしています。
奥村さんはクールビューティーな方という印象を持っていたんですが、初めてお会いしたときに凄く明るくて、ずっとニコニコ笑ってらっしゃる。共演者の方たちともフランクにお話もされてたので、 そのギャップが素敵だなと感じました。先日、大阪でも会見をさせていただいたのですが、奥村さんの話す印象的な言葉がたくさんあったので、これから夫婦役をやるのが凄く楽しみです。
山口:お二人(和田と奥村)とも、とても目が優しくて。初めて挨拶したときに、なんとなく拒否されてるのか、受け入れてくれてるのかが分かると思うんです。お二人とも本当に目の奥が優しいんです。そして、奥村さんはパキッとした性格でいらっしゃって、肌も真っ白でお人形さんのようで圧倒されていたんですが、本当に優しくお話してくださるし、キラキラと笑っていらっしゃるので嬉しい気持ちになります。
和田さんはなんとなく丈晴さんと少し似ている感じがして、優しいけれど支える力がある。印象です。みんなと雑談しているときも笑いをとってくだって楽しい方です(笑)。作品はシリアスですが、本当の家族のような強く温かいものが生まれる気がして、とても楽しみにしています。
奥村:和田さんは本当におおらかな方という印象です。最初にお顔だけ見たら「ちょっと鼻にかけてるの?」って思ってしまっていたのですが(笑)、全くそんなことはなく、人当たりがとても柔らかくて、座組のクッションのようになってくださるような優しい方です。
乃々華ちゃんは本当にピュア。たぶん心がきれいなんだと思いますね。会話をしていても、色んなことに対する反応がとても素直な人。仲良くしてほしいです(笑)。
― 見どころも含めて、この作品を通して伝えたいことは?
和田:色々な見方がある作品だと思います。母親の方が観た時、男性が観た時など、観る方によって印象が変わる作品になるのではないかと。正直、自分が何かを伝えたいということはあまり考えていません。台本と音楽に素直に向き合って、(観た方が)どう感じていただけるのか私自身も楽しみです。台本の中でも一人で葛藤したり、夫婦で意見がすれ違ったりするシーンがありますが、そういうことに観る方の日常とリンクする瞬間があるのではないかと思います。自分の役や作品に対して、極力嘘がないように向き合っていきたいです。
山口:自分が演じる千璃の魂を身体で表現するので、感情豊かに伝えられたらいいなと思っているので、ぜひ注目していただきたいです。
この物語は 障害を抱えた家族のお話なので、特別な例と受け取られるかもしれませんが、実はこれはあなたの物語でもある・・・というメッセージがあります。今このように素直な気持ちで安心して毎日を生きていられるのは、周りの人たちが支えてくれているから、愛があるからだということ。私自身も誰かがいつも見てくれている、支えてもらっていると感じることがあるので、そういうことを感じていただけたら嬉しいです。
奥村:芝居では何かを誇張することはなく、リアルに感じられると思いますし、音楽に合わせて伝えるシーンは、また違う感覚もあり、色んな質感が組み合わさっているので、そのシーンごとに受取り方もあるので、楽しんでいただきたいと思っています。伝えたいメッセージの大きなテーマは乃々華ちゃんが言ってくれたことになりますが、私が演じる美香という役としては“逃げない”ということが1つのメッセージだと考えています。とてつもない、途方もないことで押し潰されそうになっても、 逃げずに戦い続けることで得られる光とか、温かさとかがあるんだということを伝えたいです。
― 今作では二十数曲という多くの楽曲と合わせてお芝居をするという、そのバランスを台本からどのように捉えましたか?
和田:自分はあまりミュージカルの経験は多くないのですが、奥村さんも仰ったように、会話だけのシーンと音楽に乗った歌のシーンの質感の差が出れば出るほど、作品が面白くなるんじゃないかと感じています。今回は生演奏ですし、何年も公演している大型の作品でもないので、もちろん約束事はありますが、トライ&エラーの精神で、演出家の方やキャストの皆さんで掘り下げていけたら、これまで見たことのない質感の作品になるのではないかなと思っています。もの凄くハードルが高いことでもあるのですが、自分自身の戒めとして言っています(笑)。
山口:楽曲を少し聞かせていただいたのですが、全体的には明るい雰囲気で楽しい音楽なんですが、 その中で美香さんが悩んだ時の音は凄くギャップがあって心に響きます。私自身は作品の中でほぼ言葉を発しないので、生活を繰り返す中でマイムで多様な表現をします。色んな角度から見せられるものがあると考えているので、言葉でなくてもみんなが共感でき、色々な方向から投げかけて心に届く作品になればいいなと思っています。
奥村:私はミュージカルで自分が歌うような機会は今までなかったので、 本当に自分の中では挑戦の時なんですが、いかに芝居と歌を繋げて違和感を感じさせず歌えるかということが大事。シーンの中で、日常に溶け込んだまま歌に入れたらいいなと思っています。それは自分の努力次第なので一生懸命頑張ります!
― 10月6日から始まる公演に向けて、体力づくりや健康に気を使われていることはありますか?
奥村:最近はちょっと暑すぎてクーラーをかけて生活していますが、喉が乾燥したらいけなので、もう少し涼しくなったらクーラーを止めて喉のケアをしっかりしたいと思っています。喉を潰してはいけないので。
山口:私は踊りで身体表現をしていくので、必ず体力が必要。いまバースレッスンを1日3時間くらいしています。まだアップの状態ですが、レッスンに通って動ける体作りをしています。
和田:普段から舞台作品で体を動かすことが多いので、今年に入ってからパーソナルジムでトレーニングして少し体を鍛えるようになりました。最近は筋トレにハマって、毎日腹筋ローラーを家でもやっています。この作品の中では脱ぐシーンはないので、筋肉をお見せするようなことはないと思いますが(笑)。
― 今回、実際のご家族のお話を演じられるということで、覚悟のようなものはありましたか?
和田:今までも実在する方や、実在した方の役をやらせていただいたことはありますが、やはり常に台本に嘘がないように向き合うように心がけています。今回はアメリカで暮らしている日本人家族の話ですが、日本で暮らしている家族や家庭の中にも起こりうるような会話がたくさん散りばめられています。奥村さんと山口さんと真摯に、その状況状況で新鮮に向き合っていけば、伝えたいことが浮かびあがってくるのではないかと考えています。
山口:私は以前、この原作のリーディングミュージカル作品を拝見する機会があって、その時もズシンと胸に響きました。千璃は重い障害ではありますが、両親が諦めないでいてくれたから、そこで愛情を感じ、希望も持つことができた。私も本当にこの家族になりたいと思いましたし、今回奇跡的にも出演のお話しをいただいて、演じることに覚悟も責任感も感じました。
奥村:実在していて、かつ今も生きていらっしゃる方のお芝居をするときは、 いつものお芝居に比べて圧のようなものは自分の中で感じていますが、どんな作品でも結局お芝居をするのは私であって、私の体で私の声でお客様に届けるということ。私も原作を読ませていただきましたが、台本は割と忠実に描かれているので、観てくださったお客様にしっかり届くように舞台で必至に生きるということをするしかないかなと思っております。
<あらすじ>
ニューヨークで暮らす美香と丈晴は子供を授かった。千璃と名付けられた女の子。
初めての子供に未来への希望と夢に膨らむ二人だったが生まれた子供には両眼ともに眼球がなく、知的障害も抱えていた。絶望し途方にくれる夫婦。特に母である美香は自身を責め、周りの目を気にし、そして意思疎通がままならない我が娘に困惑し疲弊していく。
ある日、思い詰めた美香はマンションの屋上から千璃とともに身を投げようとするが、そのとき屋上から見下ろしたマンハッタンのある情景を耳にした千璃が笑う。
初めて目にした娘の笑顔に触れ、“この子と生きていこう”と強く誓う美香。
しかし、その決心の先には終わりが見えない千璃の手術、夫婦のすれ違い、周囲の非難、
法廷闘争···など
想像を絶する難題が幾重にも待ち受けていた。
【公演概要】
conSept Musical Drama #7『SERI〜ひとつのいのち』
出演:山口乃々華 奥村佳恵 和田琢磨
植本純米 小林タカ鹿 樋口麻美 辰巳智秋 内田靖子 長尾純子 小早川俊輔
原作:倉本美香『未完の贈り物』
脚本・作詞:高橋亜子
作曲・音楽監督:桑原まこ
演出・振付:下司尚実
演奏:桑原まこ(Key.)、成尾憲治(Gt.)、山口宗真(Reed)、平井麻奈美(Vc.)
アソシエイト・プロデューサー:川村徹也
プロデューサー:宋元燮
後援:一般社団法人未完の贈物 / 製作支援:杉本事務所
企画・製作:conSept / 主催:conSept、関西テレビ放送
(C)2022,conSept LLC
◆上演日程
東京 2022年10月6日(木)~10月16日(日)博品館劇場
大阪 2022年10月22日(土)~10月23日(日)松下IMPホール
◆チケット料金(全席指定・税込、東京・大阪共通)
SS席:11,500円、SA席:10,500円、A席:9,000円、C席:7,000円
■チケット発売日月
プレイガイド先行:8月13日(土)~21日(日)
一般販売:8月27日(土)~
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