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M&Oplaysプロデュース 『少女ミウ』 作・演出 岩松了「小さい劇場の稽古は一歩一歩進んでいる感じ」 × 俳優 堀井新太「何なんだろう?…と見ていると、後でザワーッと鳥肌が立つ感じになったりします」

鬼才・岩松了の新作『少女ミウ』が、2017年5月21日(日)~6月4日(日)に、ザ・スズナリで上演される。
今回は、堀井新太、黒島結菜をはじめ、10名の若手俳優たちと「虚偽と真実」をテーマに青春群像を描くという。
岩松了、ザ・スズナリ、青春群像…そう聞いただけで、期待に胸高鳴る方も多いのではないだろうか。

堀井新太は、NHK連続テレビ小説「マッサン」で風間杜夫が演じた森野熊虎の息子、一馬役でお茶の間にもお馴染みに。
昨年は倉持裕 作・演出の舞台『家族の基礎~大道寺家の人々』に出演。現在はTBSで水曜夜に放送中のドラマ「3人のパパ」で主演をつとめ、来年のNHK大河ドラマ「西郷どん」に村田新八役での出演も決まっている期待の若手俳優だ。

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堀井新太              岩松了

公演初日が近づいてきた晴れた日の午後、Astageは『少女ミウ』の稽古場を訪ね、2人に話を聞いた。
演じている本人も知らなかった、役柄の誕生秘話も公開です!

―今回は「小さい劇場で若手公演をやりたくなった」とザ・スズナリで上演の本作となったそうですね?
岩松僕の個人的な心構えだけの問題かもしれませんが、小さい劇場でやるといろんなことが試せそうな気がしています。キャパも小さいので、チケット代もお安くなる。1万円もするならば「ちょっと見世物にしなきゃ」などと、いろいろ考えてしまうのですが(笑)、「劇場がザ・スズナリならば、もう少し自分よりに考えることができるかな」「それはしばらくやっていないな」と。今回は堀井くんと黒島さんという若いペアだったので、これでやってみたいと思いました。

―本作の出演が決まって、堀井さんはいかがでしたか?
堀井正直に言うと、僕は経験も少なかったので、岩松さんとやらせて頂けるのは不安だったのです。でも風間杜夫さんが岩松さんの作品によく出演されていて「役者は(岩松さんと)やった方がいい」とおっしゃっていて、岩松さんの作品を観劇させて頂いているうちに「僕も味わいたいな」と思うようになりました。

―小さい劇場はいかがですか?
堀井僕は3万人もの応募者がいる大きなオーディションでグランプリを獲って、演技の基礎などを何も学ばないでいきなりデビューしたのです。他の方からすれば、すごく羨ましがられたりもしますし、僕も最初は「こんなところからデビューできるなんて、スターだぜ」なんて思っていたんです。(笑) でも、やっぱり、そんなことはなくて…。本物の役者…というのは僕の言い方ですが、すごい役者さんやお笑い芸人さんを拝見していると、場数を踏んでいろいろな経験をしておられると思います。中には、才能があってボーンといく方もいるのかもしれませんが…。
ザ・スズナリは舞台上で動揺していたらバレそうなくらい客席と近いので、度胸なども学べたらと思っています。小さい劇場の方が丸裸でぶつかれる気がします。そこに今、挑戦できているのは大きいです。

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―お稽古はいかがですか?
堀井:僕にとっては初めての感じです。いろいろ考えて辛いところもあるのですが、役者として人として成長させて頂いている感じがします。
岩松:僕はこれまで、堀井くんをまったく知らなかったのですが、本を書くための仕事場へ行く途中にある…何の店だっけ?
堀井:たこ焼き屋ですね。
岩松:毎日必ず通るその店の前で、堀井くんも毎日ロケをしていたんです。
堀井:今、放送中のドラマ「3人のパパ」の撮影です。
岩松:5~6回は会いましたね。でも、まだこの「少女ミウ」を書いている途中で、「まだ台本を渡せてない」と心苦しい思いになりまして…。撮影スタッフの中に知人がいて、必ず挨拶してくれて「堀井くん、いますよ」と声かけてくれるのですが、心苦しさのあまり、途中から迂回するようになりました。(笑)
堀井:最初は会えなかったですが、僕もスタッフさんに「岩松さんが通るよ」と聞いて、かならず現場に居るようにしていました。稽古が始まる前からの不思議な縁でしたが、あのワンクッションは僕にはよかったです。(笑)
風間杜夫さんが出演されていた舞台『世界』がBunkamuraシアターコクーンで上演されていた時に、風間さんの楽屋におじゃまして「次に岩松さんとやるんですよ」と報告したら、風間さんが「絶対に観に行くからな!」とおっしゃって「岩松さんから話を聞いたら、『はい』だけ答えろ。『はい、分かりました』と『分かりました』は絶対につけるな!」と言われました。(一同爆笑)
岩松:僕は堀井くんを知っている役者さんを何人か知っていて「堀井くんってどんな人?」と尋ねたら、みんなが「あいつはバカですよ~」って言うんですよ。(笑) 「そんなこと、言っていいの?」と聞くと「本人も言っていますから」って答えるので「分かった!じゃぁ、堀井くんが賢く見えるような芝居を書こう!」と思って『少女ミウ』を書きました。(笑) 「この人、頭いいんじゃない!」って見えるのも、芝居の妙だと思うので。
堀井:そうなんですねぇ!!
岩松:だから、そんなことを言っていた友達には、ぜひ観に来て欲しいです。
堀井:(真顔で)本当に僕が演じる広沢は、僕とは真逆の役です。ニュース番組のアンカーマン(メインキャスター)でみんなの上に立っている、僕の年齢では初めてやらせて頂く役どころです。立ち振る舞いや言葉遣いも、今までにやったことがないことばかり。そうかぁ…、この役はそこから生まれた役なんですね。やりがいがあります!

―これも一種の当て書きですね?
岩松:そうですね。堀井くんにかぎらず当て書きは、わりとしますね。想像では埋まらないものがありますから、実像が参考になるのでね。堀井くんは真逆でしたが、丸顔の人には丸顔と書けば、やはりね。
堀井:あ~、面白いです!
岩松:これから賢い役ばっかりきたら、どうしようかね?(笑)
堀井:それは有難いです。
岩松:私生活は知らないんですけど、堀井くんはたぶん性格がいいんでしょうね。意地悪ではないと思います。もしかすると、いきなりデビューしたという背景も関係しているのかもしれません。最初不遇だった人は、他人を斜めに見る習慣がついていくわけですけど、斜めに見続けた人間からするとスクスク育ったなぁと。(笑)
堀井:僕は岩松さんの頭脳が欲しいです!物事に真剣に取り組んできて、その上に何か持ってらっしゃる方なので、思考回路がとても気になります。僕には岩松さんが何を感じて、考えておられるのか、分からない…知りたいです。(笑)
僕はいろんな監督さんから「(役者として)本能で演じるタイプだ」とよく言われます。でも本能だけじゃなくて、計算もしていかないと…と思って、最近は他人をよく観察するようにしています。これまでは表面的にしか見ていなかったと思うので…。奥深い人になりたい、純粋だけじゃなくて…。
岩松:どうなんでしょうか。僕も内面的には他人を斜めに見たりしていますが、あ、でも外面は明るくしているんですよ!「岩松さん、いい人だ」と思われるように。 (笑)

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―どんなお稽古場なのでしょうか?
堀井:愛のあるステキな現場です。岩松さんは見逃がさずにすごく良く見て下さっています。僕は信じています。7人ぐらいずらりと登場している場面でも、ちょっと気を抜いていると、すぐにばれてしまいます。役者としてスキはなくします!!(笑)
岩松さんの稽古時間は、すごく効率的だと思っています。稽古時間は午後2時から7時までと短いんです。でもとても集中できる時間…ダレない時間で、みんなが冴えています。そんなところも、岩松さんがきっちり押さえておられるところだろうなぁと思っています。
岩松:昔は1時から9時まで、途中1時間の休憩をとって稽古していたんですよ。でも、まじめに一生懸命稽古するのもいいけれど、やりすぎると本当に体が持たないと気付いてきたので。(笑)
堀井:そうなんですねぇ。僕が初めて台本を見た時に、会話が抽象的だと思ったのです。普通の会話では、詳しく説明しながら話はしないので、話の一部分だけで解釈して返事を返してしまうことも多いと思うのです。稽古では最初は何回も台詞を繰り返すのですが、よく分からない。岩松さんの指示を聞いて繰り返していくうちに、解釈していける。自分の中で飲み込んでいくので、不思議な感覚になります。岩松さんとご一緒された俳優さんのインタビューをいくつか読ませて頂いたのですが、みなさんが「繰り返していくうちに分かっていく」とおっしゃっていて「やっぱり、そうなんだ」と。岩松さんの台本は、登場人物の職業や素性などが細かく書かれていないので、想像でいろいろなやり方ができるのも面白いなぁと思っています。

―お稽古も終盤だと伺いましたが、俳優さんたちも変わってきていますか?
岩松:だと思いますね。今回のキャストは、藤木修くんと篠原悠伸くんは一緒にやったことがありますが、他は全員が初めての人たちばかりです。大きい劇場でやる舞台の稽古は、歩行に例えるとジャンプしている印象があるんですが、小さい劇場の稽古は一歩一歩進んでいる感じがあって、それが面白いんです。作家が一日10枚書こうと決めて書くように、稽古を5枚ずつ進もうと決めて進むような感じが好きですね。
「あと1月くらい、稽古したいな」くらいの感じはあります。自分でも「こんなこと、こだわらなくてもいいのにな」と思いながらやっている時もあるんです。だけど、演劇ってそういうものです。例えば「このシーンがわからない」と思ったとすると、分からないままにずっとやっていくと、突然分かる時がある。道が見つかる…みたいな。そういうことが稽古場にはあるから、言葉は悪いですが「意味もなく繰り返していく」ということの中から道がみつかることがあります。そういうことをやっていけるこの稽古場です。
堀井:台本の意図って必ずあるんでしょうけれど、岩松さんは決めつけないで最初は自由にやらせてもらえます。そこから岩松さんに「そこはこうしようか」とか「そこはもっと」という指示を受けて、自分の中でそれをどこまで高めていけるか…という、常にこの作業です。「少女ミウ」は爆発的に面白いシーンもあれば、「何なんだろう?」と見ていると、後でザワーッと鳥肌が立つ感じになったりします。どうしても笑いが我慢できないくらい面白い場面もあるんですが、そこはなんとしても笑わないように、僕は必死で我慢したいと思っています。どんな場面か、観て下さいね。

―では、最後に見どころ、この舞台の面白さを教えて下さい。
堀井:意外にサスペンスもあり、恋もあります。現実と虚構が入り混じりながら、たくさんのドラマとすべてのキャラクターがラストシーンに向っていき、そして最後には分かるんです。その終わり方もいろいろな見かたができる作品だと思います。最後の最後まで目が離せない舞台になっています。僕が保証します!
岩松:10人の役者が、それぞれの持ち味を出して、エネルギッシュにやっています。若いエネルギーを感じに来て下さい。

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岩松 了(いわまつ りょう) 写真右
1952年3月26日生まれ。長崎県出身。80年代後半から劇作家、演出家として頭角をあらわし、89年「蒲団と達磨」で岸田國士戯曲賞、93年紀伊國屋演劇賞、98年「テレビ・デイズ」で読売文学賞を受賞。90年代からはテレビドラマや映画の脚本家・監督としても活躍。
最近の主な作・演出作品に、「ジュリエット通り」「水の戯れ」「宅悦とお岩~四谷怪談のそのシーンのために~」「青い瞳」「結びの庭」「家庭内失踪」「シブヤから遠く離れて」、主な出演作品に、映画「ペコロスの母に会いに行く」(監督:森崎東)「トイレのピエタ」(監督:松永大司)「3月のライオン」(監督:大友啓史)「笑う招き猫」(監督:飯塚健)「22年目の告白-私が殺人犯です-」(監督:入江悠)、ドラマ「時効警察」(ANB)「若者たち 2014」(CX)NHK連続テレビ小説「花子とアン」(NHK)「きんぴか」(WOWOW)「バイプレイヤーズ」(TX)などがある。

堀井新太 (ほりい・あらた) 写真左
1992年6月26日生まれ。東京都出身。
NHK連続テレビ小説「マッサン」で森野一馬役を演じたほか、戦後70年ドラマスペ シャル「妻と飛んだ特攻兵」(テレビ朝日)、「表参道高校合唱部!、「下町ロケッ ト」(TBS)、大河ドラマ「花燃ゆ」、NHK創作テレビドラマ大賞「川獺」(主 演)、映画「青空エール」、舞台「家族の基礎~大道寺家の人々~」など多数の作品 に出演。M&Oplaysプロデュース主演舞台「少女ミウ」 、2018年大河ドラマ 「西郷どん」に村田新八役での出演も決定している。

M&Oplaysプロデュース『少女ミウ』
作・演出:岩松 了
出演:堀井新太、黒島結菜
川口覚、富山えり子、金澤美穂、篠原悠伸、新名基浩、藤木修、岩井七世、安澤千草
日時:2017年5月21日(日)~6月4日(日)会場:ザ・スズナリ
料金:¥5,500(全席指定・税込)/U25 ¥3,500
主催・製作:㈱ M&O plays

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