ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』が、2月7日からシアタークリエにて開幕。初日前日の行われたゲネプロからレポートする。
原作は2006年に発表されたアリソン・ベクダルの自伝的グラフィックノベル。
ベクダル自身のセクシュアリティの発見と、父親との関係、そして父親の人生の物語。
舞台では、幼少期、青年期、そして現在を行き来しながら、現在のアリソンがずっと舞台のどこかにいて、その目を通して描いていく。
リーディング公演などを経て、2015年にブロードウェイにて上演。サウンドトラックがグラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞にノミネート。またトニー賞12部門にノミネートされ、作品賞など5部門を受賞した、とても高い評価を得ている作品だ。
今回の日本初演の演出は小川絵梨子。繊細で厳格に台詞を大切にすることで知られ、ストレートプレイの演出家として高い評価を得ている小川が初めて挑むミュージカルとなる。
物語は、現在43歳のアリソン(瀬奈じゅん)の、衝撃的な、だがクールな語りから始まる。
アリソンが育った家・・・木のぬくもりが感じられる懐かしさのある家・・・を舞台に過去を遡る旅が始まる。
長女アリソンと二人の弟、そして子煩悩な父(吉原光夫)とちょっと口やかましいけれどしっかり者の母(紺野まひる)。暖かで仲良しの、どこにでもいそうな一家。でも、なぜか父と母から感じられる不安定さ。その理由が次第に解き明かされていく。
無邪気で元気な子供に見えて、繊細で小心な子供心をのぞかせる子役たち!! その歌声は、明るい希望となって最後まで心に残ります。
子供たちを包み込む大きさのある優しい父、その繊細さ、孤独と苦悩、そして内面に秘めた欲望。
吉原が見せるいくつもの顔、そしてその謎に、ひきつけられていく。
青年期のアリソン・・・スカートをはくのが嫌いだった女の子は、化粧けのない少女となった・・・を演じるのは大原櫻子。レズを自覚して初恋に落ちる姿は微笑ましくて新鮮。歌声も合わせて、女優・大原櫻子を堪能させてもらった。
セクシュアリティ、家族、親子・・・いろいろな影響を受けながら、子供は大人になっていく。
親子だから話せないこと、やっぱりあるよね・・・
今の自分があるのは、どういうことなんだろう・・・?
そんなことまで考えてしまうほど、心にずっしりとくる物語。
公演は26日(月)まで、日比谷・シアタークリエにて。その後、兵庫、愛知でも公演。