恋愛アドベンチャーゲーム 「薄桜鬼」のスピンオフ作品として、舞台を幕末から現代に移し、前年まで男子校だった「私立薄桜学園」に入学した唯一の女生徒・雪村千鶴を見つめる生徒、そして教師たちを描いた青春ラブコメディ「薄桜鬼SSL ~sweet school life~」。
TVドラマや映画、そして舞台となって愛されてきたこの作品が、この春、再び舞台「薄桜鬼SSL ~sweet school life~ THE STAGE ROUTE 斎藤一」 となって上演される。
山田ジェームス武 宮城紘大 中尾拳也
今回は、宮城紘大(斎藤一 役)、 山田ジェームス武(土方歳三 役)、中尾拳也(沖田総司 役)のお三方にお集まり頂き、稽古の様子や役作りについて伺った。
すでに稽古も始まり、3人はすっかり気心も知れた仲の様子。互いにツッコミを入れ合いながら、楽しいトークが繰り広げられた。
―稽古が始まった今の気持ちをお願いします。
宮城:稽古が始まって、演出家の菅野さんから「お客様にこう見て欲しい、こう感じて欲しい」という意図をしっかり聞き、それに応えることができるように、僕も頑張りたいと思っています。春という季節にぴったりの作品なので、観た方が、例えば学生であれば、この始まりの季節に期待感をもって1年を送れるくらいに刺激を与えられるように頑張りたいと思います。
中尾:沖田総司という役をやって、すごく楽しいので、お客様に早く観て頂きたいという気持ちです。出来上がるのがすごく楽しみで。春は「薄桜鬼SSL」を観に来て欲しいです!!
山田:まだ深いところまで作りきれてないところがありますが、残りの稽古期間で作り上げていきます!今回はラブストーリーなので、そこをお客様にどう楽しんで観ていただけるように「お客様にモヤモヤする気持ちになって頂くにはどうしたらいいのか?」と、さっきも三人で話をしていました。キュンキュンさせるよりモヤモヤさせる方が、難しいんじゃないかと僕は思っているので…
中尾:ムズムズね?
山田:モヤモヤでしょ?(笑) そのいいラインを見つけ出すのは、すごく難しいと思いますが、全体を通していかに自然に出せるか、というのが僕らの課題の1つです。僕らがどれだけいい作品にできるか。楽しみです。がんばります!
宮城、中尾:そうだね、頑張りましょう!!(笑)
―出演決定後、ご自分でもキャラクター研究をされたと思いますが、稽古が始まってから予想と違った点など、ありますか?
中尾:沖田は頭が良くて、ひとつ先を見ている人だと思っていましたが、やってみて「もっと先を見てなきゃいけない、ずっと先まで考えてやっている人なんだ」と感じて、尊敬する気持ちが生まれてきました。ドSでも優しいんです。
―キャラクターについて深まってきましたか?
中尾:そうですね!
山田:僕は、土方歳三はマジメで厳格な人物だと思っていました。本を読んだりした時に、優しさが垣間見える瞬間があって、それは「こうしてやろう」と意図的にやっていることではなくて、ひとりひとりに対して愛があるので、自然と出て来るもの…大人の包容力…みたいなものを感じました。ただ、資料を見た中では、優しさがあっても厳しさが先にたつ人物、不器用な人なのかと思っていたのですが、演じてみると「意外とまっすぐだ」と感じます。「恥ずかしいからできない」のと思う人物ではなく、思ったことはわりとさらっとできてしまう…大人な瞬間を感じることが多いです。そこが演じて難しいところ、ぶつかってしまうところです。土方には大人の余裕が感じられるので、そこを上手く引きだすことができれば、面白いものができるだろうと思います。
―宮城さんはいかがですか?
宮城:う~ん、試行錯誤して生み出されたキャラクターなので、イメージがそこからずれたりはしませんでしたが、台本を読んでみると、知らなかった部分がたくさんありました。真面目で正義感あふれる人間で、頭がいいように見えて、恋愛では鈍いところもある。「かっこいい」というイメージが強かったのに、読んでいくと「かわいいな」とも思える部分が増えました。
山田:斎藤一は「この胸の痛みは何なんだ!」と本気で悩んでしまいそうな感じがするよね。
宮城:そうですね。例えば、ジェームスくん演じる土方と高橋紗妃ちゃん演じる千鶴が稽古している場面でとてもいい雰囲気になっているのを見て、「もやっ」とすることがあったんです。僕にはそれが嫉妬だと分かったのですが、斎藤は「なんだ、この気持ちは?!」と思ってしまう人間。僕も意識せずにそうもっていくのは、とても難しいです。
―今のお話に重なりますが、キャラクターを深めて感じる、自分との違いや似ているところを教えてもらえますか?
山田:土方の持つ大人の包容力が、僕が持っていないものですね。演じながら「オレってまだガキなんだなぁ」と感じてしまうくらい。土方のセリフの言い回しもあり方も、生徒や周りに安心感をもたらしていて、他の先生にも余裕があるように見えます。その大人の部分が、羨ましいです。
逆に自分に近いところは・・・、思ったことは言う。ペラペラしゃべるわけじゃないですが、嘘は言わない。僕も嘘つかないと思うんだけど…。(一同爆笑)
中尾:それ、誰に問いかけているの?(笑)
山田:土方が芯を持っているところにはとても憧れるので、僕も「芯を持って生きていきたいな」と思います。「薄桜鬼」の世界観に生きている人、みんながかっこいいですよね。この幕末を生きた人、全員が熱を持っていて、憧れます。
宮城:いいこと、言いますね。以下同文で!!(笑)
山田:そしてラブコメディですが、熱を伝えたいです。面白いだけ、キュンキュンするだけの舞台じゃなくて、燃え尽きるぐらいの作品にしたいです。
宮城:斎藤一と僕が違うところは数限りなくあります。僕は「リラックスしてやろうよ」というタイプなのですが、彼はだぶん、そういうところを許さない。「3秒の遅刻」というエピソードがありますが、3秒の遅刻も彼は許さない。僕ならたぶん、許しちゃう。僕と斎藤一は違いますね。でも恥ずかしがり屋なところは似ているかもしれません。僕もすぐ顔が赤くなったりするので、恥ずかしがり屋だと言われます。斎藤一は、自分の得意でない分野で突然何かあると、動揺してないように見えても、実は動揺していると思うんです。照れてしまうところも、自分と似ているかなと思います。
中尾:沖田は前に出て何かをやる方じゃないけど、僕は体育祭でも前に立ってやるのが好きで、小中高全部で応援団の団長をやっていましたし、みんなをひっぱっていくのが好きなので、そこは僕とはちょっと違いますね。
―お稽古場でのエピソードを何かご紹介いただけますか?
山田:稽古場では演出家の(菅野)臣太郎さんがいらっしゃらないときに、僕たちキャストだけで「台本を読もう」「解釈を考えよう」と自主稽古をやっています。1人1人の読み方、解釈が違うので、「そういう土方がいるんだ」「そんな沖田がいたのか」と、自分だけでは見つけられないことが次々に出てきて、毎回、驚くことがあります。そのおかげで自分の作る土方が、大きくなっていく瞬間が感じられて楽しいです。みんなで考え、探り合うのが好きですね。
宮城:あ~、すごく真面目な話だ! 僕は面白いエピソードしか考えてなかったのに。(笑)
でも僕も自主稽古は面白いです。個人でなくみんなでやる自主稽古というのが初めてだったので最初は不安だったのですが、他の人の解釈を聞けるというのは、僕にとってはものすごく勉強になります。
中尾:そのお陰でみんなの距離が近づいた気がするよね?
宮城:それも大きいですね。僕は千鶴ちゃんとのシーンが多いのですが、千鶴ちゃんから「女の子として、こういう方が嬉しい」などと意見を聞くと、思っていたのとは違うこともあったりして、とても参考になりました。
中尾:千鶴ちゃん役の高橋紗妃ちゃんは、男ばかりの現場で女の子ひとりですが、フランクに誰とでも話ができる。「すごいなぁ」と思っています。
山田:飄々と、堂々としているしね。
宮城:僕もすごいと思います。
山田:それから、演出の臣太郎さんのエピソードなんですけど、臣太郎さんは演劇が大好きで、なによりお客様を大切に考えて、熱いんです。「この人とやりたい」と思う瞬間がたくさんある演出家ですね。
中尾:臣太郎さんとは初めてご一緒するので、緊張して壁を作っていたのですが、稽古が始まって、すぐに解けました。すごく楽しそうに沖田を表現してくれるんです。
宮城:すごく的確にね。今「どの舞台でも、どの現場に行っても、間違いなく通じること、大事なことを教えてもらっているなぁ」と思っています。
―役作りの工夫や、観てもらいたいところは?
宮城:芯のあるかっこいい斎藤一ですが、かわいいとこもあるので、そのギャップを観て欲しいです。そして、ゲームや原作では知られていないような斎藤一を観て頂けたら…と思っています。千鶴を助ける場面でのアクションでも「斎藤一ならこうするだろう」と考えながらやっています。例えば、剣を避ける動作でも、大きく動いたほうが舞台として見えやすいし、分かりやすいと思いますが、斎藤一は最小限の動きで躱す人、首を曲げるだけで避けるような人だと思うので、そういうところも考えながら完成させていくので、注目して頂けると嬉しいです。
中尾:この作品の登場人物人たちは真面目で良い人ばかりで、沖田が悪者に見えてしまうシーンもありますが、ストレートに女の子に向かって行くのが沖田です。現実にはいそうにない…僕の周りにはいなかったタイプですが、でもそういうところが沖田の魅力だと思います。そして「薄桜鬼の沖田総司」というイメージは崩したくないので、声も大事にしたいと思っています。沖田役の声優さんと同じ声にするのは無理だと思いますが「あ、沖田だ!」と思っていただけるように、声の輪郭は似せたいと思っています。
―沖田役の声優の森久保祥太郎さんは特徴のある声ですよね。
中尾:そうですね。かつて他の作品に出演している時に、僕と同じ役をされている声優さんが観に来て下さって「声の輪郭を大切にしてくれているのは分かった」と言ってくださって嬉しかったので、今回も「声も大切にしたい」と思ってやっています。
―山田さんが観てほしいところや役での工夫は?
山田:お客様を揺さぶることができたら、作品として一番嬉しいことだと思うので、本作は″THE STAGE ROUTE斎藤一″ではありますが、「誰に恋するのかな?」というヒヤヒヤ感や「そっちの人にいっちゃうの?」と思ってもらえるような魅力をキャスト1人1人が出して千鶴を惹きつけて、その千鶴の心の動きを全員で伝えてけたら、とても見ごたえのある作品になるんじゃないかと思っています。胸がキュンキュンするような作品を、みんなで作り上げたいと思います。
土方の役作りでは、もともとある土方像も大切ですが、そこから派生して生まれる気持ちや生き方、喜怒哀楽をもっとはっきり見せたい、原作では見えない部分の土方も作っていきたいと思います。僕たちが舞台の上で動けるというのは、ゲームなどとはまた違う部分が有ると思うので、お客様に「土方ってこんな表情をするんだ」と見て頂きたいし、新しい部分を見せることができたら…と思っています。声優さんの意志を引き継いだ上で、僕らが生きている土方、生きているキャラクターをお見せできるように、そのあたりも意識しながら良い作品にしていきたいです。
―では、最後にメッセージをお願いします。
宮城:1つの舞台作品の中で1年が経ち、キャラクターが成長するというのは、僕たちの課題でもありますが、とても面白いことだと思っています。ちゃんと作りあげて、お客様に面白いものをお見せしたいと思いますので、そこも注目して頂きたいです。頑張ります!!
中尾:稽古場ではみんなが集まって話し合いを重ねて、日々、厚みのある芝居が出来てきています。僕も沖田が大好きで、毎日楽しく稽古しています。まず一度、観に来て下さい。僕たちが最高の作品をつくります!ワクワクしながら待っていて下さい。
山田:1人1人が恋して、奪い合った上で実る恋愛物語を作って、お客様全員を揺さぶりながら1年間を過ごしていくので、それを実感して頂けたらと思っています。完成度の高い良い作品を観て頂いて、いろいろと感じて頂けるように、残りの稽古を全力で頑張ります。楽しみに待っていて下さい!
舞台「薄桜鬼SSL ~sweet school life~ THE STAGE ROUTE 斎藤一」
原作 オトメイト「薄桜鬼SSL ~sweet school life~」
脚本・演出 菅野臣太朗
公演期間 2017年 4月21日(金)~ 30日(日)全14公演
チケット ●チケットぴあhttp://w.pia.jp/t/hakuoki-ssl-stage2017/(パソコン・携帯共通)ほか、各プレイガイドにて発売中。
プレミア席[前売]8,800円(指定・税込・特典付き)
一 般 席[前売]6,900円(指定・税込)
公式HP http://www.hakuoki-ssl-stage.com
取材協力:KAKULULU (HP: http://kakululu.com/)
衣装協力:VOGUISH (HP:http://www.adonisgreen.jp/) (宮城紘大さん 中尾拳也さん)