世界60都市で大ヒットを収めている舞台「sutra スートラ」が、2016年10月1日(土)・2日(日) にBunkamuraオーチャードホールにて上演される。
本公演は少林寺の現役武僧19名と、ダンス・演劇界のスーパースター、シディ・ラルビ・シェルカウイによる圧倒的なダンスとアクロバットのパフォーマンスだ。
8月29日に行われた来日記者会見では、2名の現役少林寺僧侶が見事なカンフーアクションを披露した。
Astageは、そのおふたりに話を聞くことができた。
グアン・ティンドン ファン・ジャハオ
インタビューに応じてくれたのは、今回の公演での少林寺武僧チームのリーダー、ファン・ジャハオ(黄家好)さんと、初演では子役を演じ、今回は大人のキャストとして出演するグアン・ティンドン(管廷東)さん。
おふたりの武術との関わり始めから本公演にまつわる話まで、現役少林寺僧侶の素顔に迫ります。
―日本での記者会見は如何でしたか? 他の国とは違っていましたか?
ファン:良かったですよ。とてもフレンドリーでした。
―ふたりが登場されたときの表情が厳しかったので、武僧は笑ってはいけないのかなと思ったりもしたのですが…。
ファン&グアン:そんなことはないですよ!(笑)
―そうですね。後半は笑顔も見せて下さいましたね。ファンさんは来日されたことがあるとうかがいました。
ファン:はい。シディ・ラルビ・シェルカウイさんが振付された『テヅカ TeZukA』に参加して1ヶ月以上日本に滞在しました。
―その時抱いた日本の印象というのは?
ファン:とっても良かったので、日本から帰らなくなりそうでした。(笑) でも、ちょうど東京にいた時に東日本大震災に遭遇したんです。建物がひどく揺れました。
―それは怖かったですね。
ファン:生まれて初めてのことでしたからびっくりしましたが、それほど怖くはなかったですよ。
―では日本については詳しいですね。
ファン:そうですね。日本はどこでもテンポが早くて、緊張感があるように感じました。でも人情があって、親切で…いいですね。
―さて本公演についてお尋ねしたいのですが、おふたりは初演から参加されているのですか?
ファン:はい、ふたりとも初演から参加しています。初演でグアンさんは子役でした。それから8年が経ち、子供が大人になったりして(笑)、一部メンバーは代わりましたが大部分は初演のメンバーのままです。
―では、初めて西洋のダンスと自分たちが共演すると聞いた時、どう思われましたか?
ファン:それまで西洋の現代舞踊と伝統的な少林寺武術が1つになるとは、考えたこともなかったのですが、話を聞いてみると、いったいどういうものになるのか、とっても興味がわきました。そして実際に稽古に参加してみて、興味をもったのでやってみようと決めました。
―初めての稽古はどこで行ったのですか?
ファン:中国で2ヵ月ほどやりました。
―みなさんのキャスティングはどのように?
ファン:最初はどんなことをやるのかも、まったく分からなかったので、とにかくワークショップのような稽古に参加しました。稽古に参加したけれど公演には参加しなかった武僧もいますし、稽古をしていく中でメンバーが決まっていきました。
―それから初演の地、イギリスに渡ったのですね?
ファン:はい。イギリスでも2週間くらい稽古しました。
―その頃、グアンさんはまだ幼かったのですね?
グアン:はい。私はまだ子供だったので、みんなについて遊びに行ったようなものでした。(笑)
ファン:メンバーで最年少…10才くらいだったかな。
グアン:稽古が始まった時、僕は「みんなは何をやっているのだろう」と見に行って、みんながやることをまねたりして遊んでいました。でもみんなが箱を持ち上げた時には、僕には全然持ち上がらなかったんです。「いったい何をしてるんだ?」なんて思いながら、箱を持ち上げるのはあきらめて、箱に隠れたりして遊んでいました。何をやっていたのかは、その後、ゆっくりと学んでいきました。(笑)
―それ以前にも少林武僧のみなさんは公演などに出演されたことがあったのですか?
ファン:メンバーによっては少林拳を披露した経験はありましたけれど、こうした大掛かりな芸術公演には出演したことはありませんでした。
―イギリスでの初上演での観客の反応は?
ファン:初日にスタンディングオベーションで2度か3度、カーテンコールで登場しました。その後の公演では、もっと熱烈な歓声や拍手ももらいましたけれど、私たちにとっては初めての経験でしたから公演を気に入ってもらえたのだと嬉しかったです。
―記者会見でも素晴らしい少林拳を披露して下さいましたが、一体どのくらい稽古すればおふたりのようになれるものでしょうか?
ファン:武術も勉強と同じです。勉強に近道はないでしょう?武術にも早道はありません。一歩一歩の積み重ねです。でも5年くらい学べば基本的なことは習得できますよ。
―少林寺の学校というのは、どういうものなのですか?
ファン:少林寺自体は学校を持っていません。けれども少林寺の周辺にはたくさんの武術学校があって、毎年選抜試験が行われます。武術はもちろん、信仰や人としても少林寺に相応しいか、資質を問われ、合格した人だけが少林寺に入ることができます。試験に年齢の制限はありませんし、少林寺に入ったからと言って出家するとはかぎりません。でも少林寺に入れば修行が始まります。そしてだいたい18~19才で出家します。その年齢にならないと出家はできません。
―たとえば、おふたりはどのように武術を学ばれて少林寺に来られたのですか?
グアン:私は少林寺からは車で5時間あまりの距離にある農村の出身です。小さい頃に父が買ってきたジェット・リー主演の映画『少林寺』を見た後、父が「武術を習いたいか?」と聞いたので喜んで習いに行きました。ちょうど村の近くに武術を教える学校があったんです。習い始めたのは5歳半。それから厳しいトレーニングを受けました。そして数年で少林寺に選ばれました。
―何歳で選ばれたのですか?
グアン:7才です。そして2年あまりでこの公演に参加しました。
―それはすごい才能があったのですね。
グアン:いいえ、私が一番小さかったからです。それに本当に武術が大好きだったので、少林寺に選んでもらえたと思います。
―ファンさんの物語も聞かせてもらえますか?
ファン:私も農村出身ですが、勉強が苦手な上にわんぱくで、親の言うことを聞かない子どもでした。両親は私の将来をいろいろと心配したようです。いじめられることもあったので、武術でも習えばいじめられることもなくなるだろうと10才で武術を習い始めました。習い始めはそうでもなかったのですが、15才で少林寺に来てからは武術だけでなく、日常生活での行いや考え方、人格や尊厳についても学び実践することが必要になり、それまでのようにけんかをしたり、わがままを通したりすることもなくなりました。そんなことをすれば少林寺から追い出されてしまいますから。少林寺に来て、本当によかったです。私はホントにやんちゃだったんですよ。(笑)
―今回の公演で見せる演技と、少林寺の武術とは違いがありますか?
ファン:今回の公演で見せるものは、少林寺で修業する武術とは違います。私たちの武術トレーニングは非常に厳しくつらいものです。公演でお見せするのは、ほんの一部分です。
―みなさんの身体能力のどのくらいをこの公演で見せているのでしょうか?
ファン:公演では全く疲れませんよ。ただ箱を持ち上げる場面がありますが、あの箱は30㎏あるのです。だから稽古を始めた時はちょっと大変だと感じましたが、今ではもう相棒と言えるほどですから、苦にはなりません。公演を観て下さる方が、少林寺と中国の文化の一端に触れて楽しんで興味を持って頂ければ光栄です。
―おふたりの将来の夢は?どのような人生を望まれるのですか?
ファン:「活在当下」今を生きることが大切だと思っています。今をしっかり生きなければ、その後が良いはずがありませんからね。
グアン:私はまだ若いので、少林寺でしっかり修行を続けていきたいと思います。将来のことは、しっかり修行をしてからのことだと思います。
―どうか日本での公演と滞在を楽しんで下さいね。今回は東京だけでなく愛知や北九州での公演もありますね。地方の美味しい物も食べて頂きたいのですが…
ファン:食べ物は(宗教的な理由から)何でも食べるわけにはいきませんが、美しい日本の景色を楽しみにしています。
グアン:はい、私たちも楽しみにしていますし、是非多くのみなさんに公演を通して私たちの文化を感じて頂きたいです。
【東京公演】
◆公演日程: 10月1日(土) 開演14:00&19:00、2日(日)13:00開演
◆会場: Bunkamura オーチャードホール
◆入場料金(全席指定・税込):
●S席 9,800円
●アクロバットシート(特典付き) 12,000円
1階席19列目までのステージに近い前方のお席です。都内に5店舗を展開するビア・バー「ブラッセルズ」が直輸入するこだわりのベルギー瓶ビール1本
&お店で使えるビールチケット付き。特典の引き換えは当日会場内にて終演後に行います。(※未成年の方の特典はドリンク・グラスとなります)。
●U-25チケット 5,000円
観劇時25歳以下対象・当日指定席券引換・要身分証明書・チケットぴあにて前売販売のみの取扱いとなります。
◆「スートラ」東京公演に関するお問合せ: パルコ・ステージ・インフォメーション TEL 03-3477-5858 www.parco-play.com
【地方公演】
■10 月 5日(水) 名古屋・愛知県芸術劇場大ホール
■10 月 8日(土) 北九州・芸術劇場 大ホール